「このプロジェクトの資料、どこにありますか?」
「……全部だよ」
エンジニアなら、一度は聞いたことがあるセリフだと思います。
エンジニアあるある:資料が多すぎ問題
新しいプロジェクトに参加した初日。
渡されたもの:
- PDF設計書 12本(1本50ページ超え)
- Google Docs 8個(最終更新日:2年前)
- 議事録は Slack / Notion / Confluence に散乱
- そして魔法の一言
「全部読めば分かるよ」
ChatGPTに聞いてみると:
「このシステムの全体構成は?」
返事はとても流暢。
それっぽい。
でも……
👉 どの資料を根拠にしてるのか分からない。
AIが悪いわけではありません。
「喋りすぎるAI」を信用できないだけです。
NotebookLMとは?(超ざっくり)
NotebookLMを一言で言うと:
渡した資料だけを根拠に答えるAI。
知らないことは「知らない」と言うAI。
最近のAI界隈では、これはもはや 美徳 です。
王道ユースケース:「プロジェクトの脳」
NotebookLMの一番強い使い方はこれです:
プロジェクト資料を全部突っ込んで、
「全部読んだ人」に質問する。
アップロードするもの:
- Design Doc
- API仕様書
- Architecture資料(PDF)
- 議事録
- ADR(設計判断メモ)
そして聞く:
- 「なぜRESTじゃなくてEvent-driven?」
- 「ユーザー登録の処理フローは?」
- 「今のtechnical debtはどこ?」
- 「この決定、いつ誰が決めた?」
重要ポイント
NotebookLMは資料外の知識を使いません。
つまり:
- 答え=資料に書いてあること
- なければ「見つかりません」
なぜNotebookLMはエンジニア向き?
1. 嘘をつかない(最重要)
- 書いてないことは言わない
- 「一般的には〜」を始めない
- 経験談で補完しない
👉 エンジニアにとって
嘘をつかないAI=信頼できるAI
2. ドキュメント間の関係を理解する
NotebookLMは単なる検索ではありません。
- 設計書 × 議事録を横断
- 判断の背景を説明
- 「なぜそうなったか」を語れる
Ctrl + F では一生無理です。
3️. オンボーディングが爆速
新人:
- 同じ質問を何度もしなくていい
- 「読んだけど分からない」が減る
先輩:
- 夜中にSlackが鳴らない
キャッチアップ期間
数週間 → 数日
NotebookLMの中身
RAG(Retrieval-Augmented Generation)をご存じの方にはお馴染みの内容になりますが、 RAGについてあまり馴染みがない方は、以前こちらの記事で基本から解説しています。先に目を通していただくと、以降の内容がより理解しやすくなると思います。
AIの「ハルシネーション」?あなた専用データをAIに“参照”させるRAG (Retrieval-Augmented Generation)の仕組みとは
結論から言います。
NotebookLMは、めちゃくちゃ出来の良いRAGシステムです。
全体の流れ(やさしめ)
ドキュメント
→ 意味単位で分割
→ Embedding
→ Vector DB
→ 関連部分を検索
→ contextを整理
→ LLMが回答(制御あり)
はい、RAGそのものです。
NotebookLMがうまいところ
Chunkingが賢い
- token数で雑に切らない
- セクション・文脈単位
- metadata付き(どの資料のどこか)
Contextの掃除が丁寧
- top-kをそのまま投げない
- 重複を消す
- 定義・決定事項を優先
👉 LLMが考えやすい状態になる
→ hallucinationが激減
NotebookLMの鉄の掟
資料に書いてないことは使わない。
その結果:
- 創作は苦手
- 文章生成は地味
- でも 業務利用では最強
NotebookLM vs 自作RAG
| 観点 | NotebookLM | 自作RAG |
|---|---|---|
| 手軽さ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐ |
| カスタマイズ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 安定性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | 実装次第 |
| ドキュメント理解 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
👉 NotebookLMは
「RAGベストプラクティスの完成形」
どんな時に使う?
おすすめ:
- 資料が多いプロジェクト
- 正確さ最優先
- 新人オンボーディング
- 設計レビュー・監査
向かない:
- ブログ創作
- 物語生成
- AIに夢を見たい時
🏁 まとめ
NotebookLMは、
- 何でも知ってるAIではない
- ちゃんと読むAI
AIがどんどん饒舌になる時代に、
黙って資料を読んでくれるAIは貴重です。
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