子育てはやっぱり大変
子育てをしていると幸せなこともたくさんありますが、とにかく時間がかかります。子育て中の誰に聞いても「思ったより大変」と言います。
現代は核家族化がかなり進んでいて、夫婦以外のヘルプを得られる環境はかなり減ってきていますし、「子育て中に勉強なんてできない」と嘆いておられる方も多く見受けられます。現在子育て中でなくても、子育てをすればそうなると思っておられる方も多いと思います。
本記事で伝えたいこと
私はアラサーの男で、現在2歳と0歳の子育て中です。Web系の企業でソフトウェアエンジニアをやっています。BEメインでやってきましたが、Web FEもそれなりにやってきました。スマートフォンアプリケーション開発は仕事ではやったことがありませんでしたが、子育てと仕事の合間を縫って、まずはFlutterを触り、その後 Swift UI を触ってみてハマり、今はiOSアプリ開発に専念しています。
本記事では、私がどのように子育てをしながら仕事とプライベートでの勉強と開発を続けているかを紹介することで、「やればできるんだ」と思える人が一人でも増えてくれれば良いなと思っています。技術的な話ではなく、ソフト面の話になります。
以下の記事では、アプリ開発には日本円にすると1200万円から5600万円程度の費用がかかると報告されていますが、エンジニアが自分自身で開発すれば、ライセンス料やサーバー費用など数万円程度の運用費のみで済みます。それだけの価値のあるスキルを持っているのであれば、活かすに越したことはないなと改めて思わされます。
Let’s cut to the chase: app development costs between $75,000 and $350,000 or more to develop from ideation to launch
How Much Does App Development Cost?
私が「子育て中でも勉強も開発もやっている」一つの証明として、またお忙しい方向けの有用なツールの紹介として、今私が開発している 時もち というiOSアプリのPRもさせていただきます。
スマホの利用を自主的に制限して自分の時間を大切にするためのデジタルデトックスiOSアプリ - 時もち
時もち というiOSアプリを開発して2024年4月にリリースし、2ヶ月半ほど経って、現在800近くダウンロード頂けています。ペースは右肩上がりで、過去一週間を見ると130ダウンロードくらい頂いていました。
以下の記事にもあるように、アプリ全体で67.8%は1000ダウンロードされないそうですが、時もちはもう1000目前まで迫ってきているので、それなりに市場に受け入れられてきている方だと言っても良いと思います。
【翻訳】なぜ99.5%の消費者向けアプリは失敗するのか?(Reed Steiner, Fyresite, 2021)
スマホ脳 という本に書いてあったように、私たちは平均で一日4時間スマホを使っているそうで、それが睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下など、様々な社会問題の原因となっています。
育児中だと特に可処分時間(睡眠や食事、トイレ、家事、仕事といった生きていくうえで最低限必要な時間を差し引いた残りの時間)の有効活用が大事になってくるので、忙しい方ほど使ってみていただきたいと思っています。
本アプリで実現したいことについて、詳細はこちらの記事をご確認ください。
少し技術的な話ですが、iOSにはスクリーンタイムAPIというAPIが用意されており、それを利用して実装しています。スクリーンタイムAPIについての詳細はこちらの動画で確認できます。
ただちょっとスクリーンタイムAPI自体がまだ全体的にバギーな感じになっているようで、一部のクライアント環境で想定外の動きをすることがあるようで、スクリーンタイムの設定をリセットすると解消されるようです。手順もアプリ内でご確認頂けます。
ここら辺は技術畑の方は特にお詳しいと思うので、もし何かおかしい動きに気づかれた場合はリセットをお試しいただき、改善されない場合はご連絡いただけますと幸いです。
大事なこと
話を戻して、私が思う子育て中でも勉強と開発を続けるコツは、以下二点に集約されます。
- 良い環境を作る
- 良い習慣を作る
良い環境を作る
なるべく以下の条件を全て揃えられるようにします。かなり難しいことだと思いますが、ここを整えられるかどうかが肝になってきます。
- 短い通勤時間
- 少ない残業
- パートナーの理解
短い通勤時間
短ければ短いほど良いと思います。リモートなら最高です。ちなみに私は今はフルリモートです。ただ、後述するように良い習慣の継続には精神や肉体の健康は非常に重要なので、通勤がなくてもどの道毎日ある程度外に出て運動する必要があります。そこには良い習慣を作る強い意志が必要になってきてしまうので、程良い通勤時間は、むしろ健康にはプラスだったりする側面もあると思います。
私はフルリモートなので、運動不足にならないように、毎日30分~1時間程度は筋トレしたり散歩したりジョギングしたりしています。時間は早朝だったり、お昼休憩中だったりです。その時間は、Audibleで本を聴いて勉強(インプット)しています。
通勤時間中のインプットももちろん有効だと思いますが、アウトプットはかなり難しいと思います。学びを結果に変えるアウトプット大全 (サンクチュアリ出版) の受け売りですが、アウトプットしてこそインプットの質も上がったりするものなので、アウトプットの時間を確保することはかなり重要になってきます。
通勤時間を短くできればできるほど、可処分時間が増え、アウトプットに充てる時間が増えます。
少ない残業
残業時間の増加はそのまま可処分時間の減少、つまり勉強や開発に充てる時間の減少を意味します。世の中には様々な仕事がありますし、残業しないなんて許されない職場も多数あると思います。しかし、ことソフトウェアエンジニア職に関しては、きちんと成果さえ出していれば比較的残業の少ない環境を作り出すことも可能であると考えています。
「残業の少ない環境を作り出す」というのは、非常に難易度の高いことだと思います。企画や見積もりの段階で、数ヶ月先を見通して無理のない計画作りをするところから深く関わっていく必要があります。開発の過程で生じる様々な不確実性を素早く取り除き、積極的に進捗を共有し、必要があれば適宜スケジュールも修正していく必要があります。これを実現するためには、積極的に動いて経験と能力と成果を積み重ね、信用(「この人が言うならそうなんだろうな」という納得感)を積み重ねていく必要があります。
パートナーの理解
パートナーと「勉強や開発が家族のためにも必要なことである」という認識をきちんと共有できている必要があります。現代は核家族化もかなり進んでいて夫婦以外のヘルプを得られる環境はかなり減ってきていますし、子育てを一人でやるのは非常に大変なことです。単純に仕事量が多すぎます。「男は外で働いてさえいればOK」という価値観はとうの昔の話です。
そのためには、納得感のある家事育児の分担を決める必要があります。また、子供は毎日すごいスピードで成長するので、かなり柔軟に分担やルールを変えていく必要があります。したがって、毎日密接にコミュニケーションを取れる状態をキープしておく必要があります。
まずはお互いに肉体と精神の健康を維持できる状態を作る必要があります。どちらも、よく食べ、よく眠り、よく運動できる環境を整えます。そこを満たす分担は最低ラインです。その上で、気持ちよく納得してもらえる範囲内で、隙間時間や決めた時間を勉強や開発に充てます。
この納得を得るためには、有言実行を積み重ねる必要があります。やるからには定期的に成果をアピールしなければならないし、家事育児も主体的に率先して効率良くこなし続ける必要があります。
良い習慣を作る
大事なのは以下だけです。
- 毎日決まった時間に、少しでも、やる気が湧かなくても、とにかくデスクに向かう習慣を作る
良い環境が整っても、増えた可処分時間でダラダラしてしまったら元も子もありません。大事なことは、モチベで勉強や開発をやろうとしないことです。私も子育てが始まるまではずっと、モチベが大事だと思ってました。しかし、短い可処分時間で成果を出すことに注目すると、毎日少しでも、やる気が湧かなくても、とにかくデスクに向かう習慣を作ることが大事なんだと気付かされました。
できれば平日の朝にやる
できれば週末ではなく、夜ではなく、平日の朝が良いと思います。
週末にまとめてやろうと思っていても、そもそも時間が取れません。
人間、朝の方が間違いなく元気があり、脳のパフォーマンスも良い状態です。
15分でも30分でも良いからとにかく毎朝デスクに向かうことができたら、それだけでもう勝ちです!
そもそも独身の頃、そんなに勉強や開発してたか...?
いや、少なくとも私はしてませんでした。時間がないからこそ、良い習慣が作れ、継続的にアウトプットが出せていると思います。
その他、個人でアプリ開発する上で大事なこと
良い環境作り、良い習慣作りさえできれば、もう勝ったも同然です。追加でやって良かったことがあるとすれば、以下二点です。
- 短期間で開発してとにかく出し切ること。つまり、必要最小限の開発と運用でも成り立つアイデアを想起すること。
- 全部一人でやろうとしないこと。同僚でも元同僚でも友達でも、専門性を持った人に声を掛けてみることから始めると面白いかも。
短期間で開発してとにかく出し切ること
有名な開発者の方が、リリース0個と1個の間がめちゃめちゃデカいという話をされていました。
私も最初は ぴよぴよサウンドパーク という幼児向けのアプリを開発してとりあえずリリースしたことで弾みがついた気がしています。
ちなみに、こんな簡単なアプリでも地味に70ダウンロードくらいはされています。Androidは全然ですが、AppStoreはそんなに頑張らなくても自然流入が結構多い印象です。
全部一人でやろうとしないこと
そもそも 時もち の開発に至った発端は、私が ぴよぴよサウンドパーク のリリース後に、今度は何か本格的にメンタルヘルスに関わるアプリ開発をしたいなーと思って、マーケティングに不安があったので医療系のスタートアップでマーケティングをやっている新卒の同期の元同僚に声をかけて飲みに行ったことでした。
そこでスマホ脳の話になりました。後日その元同僚から連絡が来て、「iPhoneの標準で入っているスクリーンタイム機能だけでもそれなりに使えるが、簡単にブロック解除できてしまうからあまり意味がない」「ブロック解除に寄付が必要な形にしてはどうか」という意見をもらって、その仮説をベースに技術調査を始めました。
プログラムこそ完全に私一人で書いていますが、前述の元同僚伝いでベースとなるデザインはデザイナーさんに作成頂きました。
最初に私一人で開発したアプリは非常に殺風景な印象のある出来でしたが、もちくんというキャラクターや、グラデーションのある背景など、ちょっとした遊び心やオシャレ心が加わるだけでガラリと印象が変わったので、やっぱり協力を仰いで良かったなと思いました。
プライベートでアプリ開発する面白さ
とにかく粗くても良いから世に出してみると、ユーザーからの反応があったらそれがモチベになったりして、コツコツ続けられています。逆にユーザーから低く評価されるとめちゃめちゃ凹みます。でも、大きい会社でエンジニアをやっているとユーザーからのフィードバックを直接受ける機会なんてほぼないので、そういった点も含めてサラリーマンでは中々感じられない面白さだなと思います。
マネタイズと今後の予定
私はわりと勉強や開発自体が趣味になっているような側面もあるのですが、無償ボランティアでやっているつもりはありません。
ただ、広告は貼りたくありません。
スマホ脳 にもあったように、ユーザーが完全無料で使えるスマホアプリの場合、商品はむしろユーザーの注目、引いてはユーザー自身ということになります。広告を貼ってしまうと、時もち のコンセプトと矛盾してしまいます。
ブロック解除の100円のうち一部はNPO法人に寄付しているので、今のところ大した収益はありません。私たちが「ブロック解除してほしい」と思って開発し始めると、ユーザーの利益と矛盾してしまうので、ここで稼ぎたいとも思っていません。
したがって、伝説のアプリ開発者である bondavi さんを見習って、ちょっとした機能をサブスクとして提供してみることにしました。必要な機能は無料で提供し、応援したいと思って頂ける方向けに有料機能を提供する、というスタイルです。これでどこまで現実的にマネタイズできるのか分かりませんが、将来的にはきちんと会社として事業化し、その事業を継続できる程度まで育てていけたら最高だなと思っています。
最近英語版に対応して国際的にリリースしたばかりなので、さらなる飛躍を期待しています。本記事を読んでいただいている皆様にも、もし共感できるポイントが少しでもあれば、ぜひ応援いただけると嬉しいです。私も皆様を応援しています。
個人の時代到来?
最近は会社への帰属意識が益々弱くなってきているようです。私はミレニアル世代と呼ばれる世代ですが、その傾向がZ世代はより顕著だと言われているようです。Chat GPTを始めとした生成AIの力でかなり個の力がエンパワーメントされてきている印象もあり、大企業が作ったプロダクトやサービスを、個人または少人数のチームが短い時間で開発したものが圧倒していくような未来もかなり現実味を帯びてきている気がしています。そう考えてみるとワクワクしますね。
子育ては大変です。時間も限られます。でも、良い環境と良い習慣を作れば、なんとか勉強も開発もできます。最後に私が大好きなイチローさんの名言を書いておきます。
「やっぱり、小さなことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道なんだなというふうに感じています。」
コツコツやっていきましょう...!!