はじめに
みなさんパリには行ったことがありますか? 私は2019年に一度だけ行ったことがあります。当時は街中のそこらじゅうで電動キックボードが暴走&乗り捨てられていました笑 あまりに酷いのでその後禁止されたようです…
そんなパリの街中を美術館巡りで歩き回っても「坂道」があった記憶はありません。札幌を流れる豊平川は激流ですが、パリを流れるセーヌ川は緩やかに流れています。オリンピックのスイム会場になった時は水質が問題になっていたので豊平川より汚なそうですが…
そんなパリについて書いた本をうっかり本屋で見つけました。
「凸凹で読みとくパリ」、佐川美加、学芸出版社、 ISBN978-4-7615-2950-5
パリという都市の成り立ちをセーヌ(Seine)川の旧河道やビエーヴル(Bièvre)川の水の流れという観点から紐解いた本です(おもしろい)。
さて気になるでしょう「じゃあパリの地形ってどうなってるの?」
データの入手
フランスには、日本の国土地理院に相当する組織として IGN があるそうです。正式には「Institut national de l'information géographique et forestière」、日本語にすると「国立地理情報・森林情報研究所」といった感じ。ホームページのURLはhttps://www.ign.fr/です。
まずはトップページから Portail carto→Géoservicesとリンクを辿ってください。
書かれているのは当然いきなりフランス🇫🇷語です…読めねぇよ。てことでブラウザの翻訳機能を使って英語🇬🇧にしながら進みます。
「Find all the public data of the IGN in free access」と書いてあるようです。ありがたや🙏
ダウンロードページ
真ん中の TÉLÉCHARGEMENT と書いてあるのが ダウンロードページのリンクです。DONNÉES がデータか。なるほど。
ポップアップメニューに色々データが出てきます。もちろん何が何やらわかりません。
とりあえず色々難しい話はすっ飛ばして、DEMデータは「RGE ALTI」らしいです。さっさとタイプして選択します。Rechercher というのが Search らしいぞ。
検索結果は 218 jeu(x) de données téléchargeable(s) と出ました。うむ、たくさんあるね。
さてここで壁にぶつかります。Paris のデータはどれに入っているの??
フランスの座標系やらメッシュコードやら
日本の地域メッシュやら平面直角座標系ならわかるけども、フランスの座標系やメッシュコードはどうなってるのさ?とりあえず Gemini君に聞いてみよう。嘘つかれてもわからんけどな。
🇫🇷 フランスで主に用いられている地理空間座標系は、現在、RGF93(Réseau Géodésique Français 1993)です。
- 測地系(Datum):
- RGF93は、ヨーロッパ全域の標準的な基準系である ETRS89(European Terrestrial Reference System 1989)と互換性があります。
- 投影法(Projection):
- RGF93に基づく公式な地図投影法は、Lambert-93(ランベルト93)投影です。
だそうです。信じるかどうかはあなた次第…いや信じろ。
QGISで座標参照系を指定するダイアログを出すと「RGF93 / Lambert-93 (EPSG:2154)」が出てきました。なるほどこれか〜
さらにフランスではグリッド(メッシュ)システムは使われていないらしい。まじか! で、代わりに使われているのが INSEEの行政区画コード らしい。なんだそれ? Gemini君に聞いてみます。
コミューンコード (Code officiel géographique - COG): INSEEが定める公式な行政区画コードで、日本の市町村コードに相当します
てことでコミューンコードは 75056 。75はパリ県、056はパリ市のコードだそうです。へ〜へ〜。
パリのDEMデータファイル
パリの県番号「75」が入っているファイルを探してダウンロードします。
https://data.geopf.fr/telechargement/download/RGEALTI/RGEALTI_2-0_1M_ASC_LAMB93-IGN69_D075_2020-07-30/RGEALTI_2-0_1M_ASC_LAMB93-IGN69_D075_2020-07-30.7z
これだな
アーカイブを展開するとPDFファイルとフォルダが3つ現れます。PDFが取説らしいけどバリバリの🇫🇷フランス語なのでスルー。
もはや「DONNEES」が「データ」なのはスルッとマルっとお見通しなので、さらに奥地へ進みます。
フォルダ名に MNT, SRC, DST と入っています。MNTフォルダにある .ASC はテキスト形式のラスターファイルのようですね(知らんけど)ファイルを開くとどうやら標高値ぽい数字が並んでいます。なるほど。
SRCフォルダとDSTフォルダには .TIFのファイルが入っています。早速 QGISで表示してみよう。EPSG は 2154ね。背景はもちろんOpenStreetMap🗺️
パレット形式(インデックスカラー)のGeoTIFFデータのようです。それぞれ gdalinfoコマンドで見てみるとこんな感じでした。
% gdalinfo -mm RGEALTI_FXX_0652_6862_SRC_LAMB93_IGN69.tif
Driver: GTiff/GeoTIFF
Files: RGEALTI_FXX_0652_6862_SRC_LAMB93_IGN69.tif
Size is 1000, 1000
Origin = (651999.500000000000000,6862000.500000000000000)
Pixel Size = (1.000000000000000,-1.000000000000000)
Image Structure Metadata:
INTERLEAVE=BAND
Corner Coordinates:
Upper Left ( 651999.500, 6862000.500)
Lower Left ( 651999.500, 6861000.500)
Upper Right ( 652999.500, 6862000.500)
Lower Right ( 652999.500, 6861000.500)
Center ( 652499.500, 6861500.500)
Band 1 Block=1000x8 Type=Byte, ColorInterp=Palette
Computed Min/Max=52.000,69.000
Color Table (RGB with 256 entries)
0: 0,0,0,255
1: 255,255,0,255
2: 250,250,5,255
3: 245,245,10,255
4: 240,240,15,255
5: 0,0,0,255
(中略)
253: 255,0,0,255
254: 255,0,255,255
255: 0,0,0,255
% gdalinfo -mm RGEALTI_FXX_0652_6862_DST_LAMB93_IGN69.tif
Driver: GTiff/GeoTIFF
Files: RGEALTI_FXX_0652_6862_DST_LAMB93_IGN69.tif
Size is 1000, 1000
Origin = (651999.500000000000000,6862000.500000000000000)
Pixel Size = (1.000000000000000,-1.000000000000000)
Image Structure Metadata:
INTERLEAVE=BAND
Corner Coordinates:
Upper Left ( 651999.500, 6862000.500)
Lower Left ( 651999.500, 6861000.500)
Upper Right ( 652999.500, 6862000.500)
Lower Right ( 652999.500, 6861000.500)
Center ( 652499.500, 6861500.500)
Band 1 Block=1000x8 Type=Byte, ColorInterp=Palette
Computed Min/Max=0.000,67.000
Color Table (RGB with 256 entries)
0: 210,250,100,255
1: 181,234,93,255
2: 153,218,86,255
3: 125,202,80,255
4: 96,186,73,255
5: 68,170,66,255
(中略)
253: 65,0,0,255
254: 64,0,0,255
255: 0,0,0,255
DEMから等高線へ変換
DEMのラスターデータから、等高線のベクトルデータを生成します。GDALに含まれている gdal_contourコマンドが使えます。
gdal_contour -b <band> -a <attribute_name> -i <interval> -f <format_name> <src_filename> <dst_filename>
実際に変換したコマンドでは、バンドに「1」を指定し、インターバルを2.0mとしました。
gdal_contour -b 1 -a 'ELEV' -i 2.0 -f 'GPKG' <dem.asc> <contour.gpkg>
ついでに変換したファイルを ogrmergeコマンドで一つのファイルに結合します。
ogrmerge -f "GPKG" -o paris-contour.gpkg *.gpkg -single
出来ました!
おわりに
Webページが🇫🇷フランス語で書かれていても翻訳機能で簡単に読むことは出来ました。空間参照系やデータフォーマットなども普段扱っているものと当然ながら変わりはありません。
しかし行政区のコードやグリッドシステム(地域メッシュ)などは国・地域毎に独自のものがあるので、知っていないとどうしようもない場面もありそうです。
逆に、日本以外の国の人達が日本国内のデータを扱うときに、どんな苦労があるのか聞いてみたいですね。










