LoginSignup
36
42

More than 1 year has passed since last update.

1600円の無線(BLE)温度センサーをRaspberry Pi3 + node-redで活用する

Last updated at Posted at 2018-08-25
Raspberry Pi3とLinkingデバイス

残念ながら、ここで使用しているLinkingデバイスは販売終了し、2023年8月でサイトもクローズされる模様。

はじめに

Raspberry Piで温度センサーを使う際の選択肢はいっぱいあります。USBモジュールを使うもよし、Raspberry PiらしくGPIOにセンサーモジュールを接続するもよし。

でも、できれば無線の温度センサーをあちこちにおいて各部屋の温度を計りたい。と思ってたら、Qiitaのトレンドに出てた しいたけを自動栽培してみた結果(前編) という投稿で、スマホ用に売られている Linkingデバイス というのを知りました。これをRaspberry Pi3 + node-redで誰でも簡単に使えるようにしてみます。

どのくらい簡単かというと、このようにノード配置しただけでセンサーのデータを取れます。

スクリーンショット 2018-08-23 午後5.56.54.png

無線なので家の各部屋にセンサー置いて、温度・湿度を取得したりできます。照度センサーやワイヤレススイッチもあります。

スクリーンショット 2018-08-17 午後2.31.58.png

Linkingデバイスとは

DocomoがいわゆるIoT関連で主導してるっぽい Project Linking 用のデバイスです: Linkingデバイス一覧

  • BLE(Bluetooth Low Energy)対応で、ボタン電池で動作。100日単位の電池寿命
  • 温度・湿度だけでなく、いろんなセンサーやボタンがある。しかも、ほとんどのセンサーに点灯制御できるLEDがついてる。
  • コンシューマー製品なので、基盤むき出しとかではないちゃんとした見た目
  • 低価格。たとえば、温度センサーTukeruは1600円。これは、Zigbee対応の中国製品 Xiaomi temperature and humidity sensor とほぼ同じ値段。技適マークつくだけで下手すりゃ数倍の値段になる製品とか多い中、これはすばらしい。

と、結構いい事ずくめなんですが、Docomo主導なので当然のようにiOSとAndroidのみ対応 (SDK有り)。
Raspberry PiでもAndroid thingsのせれば使えるけど、なんとかLinuxで使えないかと思って念の為検索したらありました!

  • Linkingデバイスにアクセスできるnode.js用モジュール node-linking

ドキュメントもすごく丁寧で最高です。Bluetoothまわりに詳しくなくてもこれなら使える。

これはもうRaspberry pi + node-redでやって見るしかないと、温度・湿度センサーのTukeruと、開閉センサーのOshieruを早速注文。大体3営業日ぐらいで届きました。

ちなみに、Linkingデバイスはほとんどが 株式会社Braveridge の製品のようです。検索すると、「九州・福岡から、日本のIoT業界をけん引!ブレイブリッジ 小橋氏」とかの記事があって、個人的にもちょっと応援したい感じです。

購入前の注意事項:対応デバイスは要チェック

注文後にnode-linkingのドキュメントを全部読んだら、なんと

開閉センサー情報サービス (serviceId: 6)
今のところ、Oshieru だけがこのサービスをサポートしています。しかし、ビーコンデータが暗号化されているようです。
どうやら、我々、サードパーティの開発者には、直接的にこのビーコンデータを扱うことは許されていないようです。

と書いてあり、購入した開閉センサーOshieruは、node-linkingでは使えないことが判明。しかしこれ、node-linkingだけでなく、たぶん公開されてるスマホ用SDKでも使えませんね。もったいない...

気を取り直して、まずは温度センサーを試します。

なお、この後に対応デバイスの詳細を書いてますが、実際に動作を確認したデバイスは限られています。購入の際はお気をつけください。

node-redカスタムノード node-red-contrib-linking-device を作る

はじめてのカスタムノード作成にチャレンジし、node-red-contrib-linking-deviceを作成しました。

対応Linkingデバイス

まずはデバイスの対応状況です。

対応を確認:

  • 温度・湿度センサー: Tukeru TH
  • 温度・湿度・大気圧センサー: Sizuku THA
  • 照度センサー: Sizuku Lux (linking-sensorは非対応)
  • ボタン: Pochiru(eco)

多分対応している (動作未確認)

  • LED: Tomoru / Tomoruフルカラー
  • LED: Sizuku LED
  • ボタン: Pochiru
  • 6軸センサー: Sizuku 6X (linking-scannerは非対応)

対応していない

  • バイブレーション: Furueru
  • 開閉センサー: Oshieru
  • 振動センサー: Kizuku
  • BLEAD-TSH-LK

node-redで使えるLinkingデバイス用ノード

Linkingデバイス用ノードは以下の3つです

  • linking-scanner

Linkingデバイスをスキャンし、ビーコンデータを出力します。Linkingデバイスが定期的に発信しているビーコンデータにはセンサーの情報が含まれているので、このノードを使うだけでセンサー情報の収集が可能です(ただし、接続が必要なデバイスもあります)。

また、接続できないぐらいデバイスが離れている場合は、このノードを使うしかないです。

  • linking-sensor

Linkingデバイスに接続して、センサー情報を取得します。比較的近くにデバスがある場合には、これを使って接続状態でセンサデータを取得すると、電池が長持ちする模様です。

  • linking-led

Linkingデバイスに接続して、LEDの点灯リクエストを出します。接続が必須のため、比較的近くにデバイスがある場合に利用できます。

node-redでのLinkingデバイス用ノードの使い方

例として、温度センサ Tukeru THを使用して温度と湿度のデータを取得し、それをnode-redのデバッグタブに表示してみます。

インストール

Raspberry Pi3でのインストールを前提として解説します。

なお、Raspberry Pi3自体の新規セットアップから行う場合はこちらをご参考: Raspberry Pi 3 (Stretch) 設定覚え書き: node-redでスマートホーム用

Bluooth関連ライブラリのインストール

ターミナルで以下を実行

sudo apt-get -y install bluetooth libbluetooth-dev libudev-dev

node-red-contrib-linking-deviceのインストール

ターミナルで以下を実行。node-redのWeb画面からインストールもできます。

cd ~/.node-red
npm install node-red-contrib-linking-device

node-redを再起動

node-red-stop && node-red-start

linking-scannerでセンサーデータを収集する

1.インストールすると、Node-REDのパレットの linking device カテゴリーにノードが追加されます。

スクリーンショット 2018-08-23 午後5.55.51.png

2.まず、linking-scannerノードをワークスペースにドラッグ&ドロップし、ダブルクリックして設定を開きます。

  • Start automatically at startup をチェック
  • Intervalを60(秒)に設定
スクリーンショット 2018-08-23 午後5.58.43.png

3.次に、debugノードをワークスペースにドラッグ&ドロップして、linking-scannerと接続します。

スクリーンショット 2018-08-23 午後5.56.54.png

4.デプロイします。デバッグタブにLinkingデバイスからのビーコンデータが表示されれば正常動作してます。

上記設定だと、だいたい1分間隔で各センサからの以下のようなデータが表示されます。

msg: {
  advertisement: object,
  payload: {
    device: "Sizuku_tha0141790",
    service: "temperature",
    data: 25.625
  },
  topic: "Sizuku_tha0141790_temperature"
}

advertisementはnode-linkingの LinkingAdvertisementオブジェクトそのままです。rssiやdistanceなどの詳細情報を取りたいときに参照します。

linking-sensorでセンサーデータを収集する

このノードを使う場合、安定して接続できるぐらいデバイスが近くにある必要があります。取れる情報は原則linking-scannerとほぼ同じですが、電池の持ちが良くなるのが利点です。

1.まず、linking-sensorノードをワークスペースにドラッグ&ドロップし、ダブルクリックして設定を開きます。

  • デバイスを選択
  • しばらく時間がかかりますが、センサーの対応状況が読み込まれ、battery以外はデフォルトでチェックされます
  • Start automatically at startup をチェック
  • Intervalを60(秒)に設定
スクリーンショット 2018-08-23 午後5.59.56.png

2.次に、debugノードをワークスペースにドラッグ&ドロップして、linking-scannerと接続します。

スクリーンショット 2018-08-23 午後5.59.32.png

3.デプロイします。デバッグタブにLinkingデバイスからのセンサーデータが表示されれば正常動作してます。

上記設定だと、だいたい1分間隔で各センサからの以下のようなデータが表示されます。advertisementがない意外は、linking-scannerと同じ内容です。

msg: {
  payload: {
    device: "Sizuku_tha0141790",
    service: "temperature",
    data: 25.625
  },
  topic: "Sizuku_tha0141790_temperature"
}

なお、linking-sensorでデータ収集を行う場合でも、接続がうまくいかない場合を考慮して、linking-scannerをバックアップとして併用するのをおすすめします。デバイスが接続中の場合はlinking-sensorが、接続できない場合はlinking-scannerがデータを収集します。

linking-ledでLEDを点灯する

このノードを使う場合、安定して接続できるぐらいデバイスが近くにある必要があります。

1.まず、linking-ledノードをワークスペースにドラッグ&ドロップし、ダブルクリックして設定を開きます。

  • デバイスを選択
  • しばらく時間がかかりますが、対応しているLEDの色・点灯パターンが読み込まれ、リストに表示されます。表示されない場合はリフレッシュボタンを押してください。
  • ここでTestボタンを押してLEDを点灯させてみることもできます。
スクリーンショット 2018-08-23 午後6.01.13.png

2.Injectノードをワークスペースにドラッグ&ドロップし、trueを出力するように設定して、linking-ledとつなげます。

スクリーンショット 2018-08-23 午後6.00.45.png

3.Injectノードの左側をクリックすると、LEDが点灯します。

注意点:デバイスが接続されていない状態だと、点灯リクエストを出して実際にLEDが点灯するまで10〜20秒程度かかります。すぐに点灯させたい場合は、"Keep connection"オプションをチェックしておく必要があります。ただし、接続中はlinking-scannerでのセンサーデータの収集はできません。代わりにlinking-sensorを使う必要があります。

Beebotteで温度や湿度をグラフ表示

node-red-dashboard でセンサーデータを表示するのもありですが、ここではMQTTブローカーのBeebotteにデータを送ってクラウドで管理する方法を試してみました。このやり方だと、複数台のRaspberry Piで収集したデータを一括管理できるので、スケールしやすいというメリットがあります。

詳細は別記事にて:Raspberry Pi3で集めた無線温度センサーのデータを、MQTT brokerのBeebotteに送信して表示する

使ってみての感想・Tips

linking-scannerでスキャン結果を受け取れる範囲は最大で5m程度

距離が離れると、scannerでbeaconを取得する頻度ががっくり下がります。間にさえぎるものが何も無くてもだいたい5m以上になるときつくなってくるので、それ以上はなれた場所を計測する際は複数のRaspberry Pi3が必要になりそうです。その場合も考慮して、Beebotteなどを使ってクラウドでデータを集中管理するのがよさそうです。

linking-scannerの編集ダイアログで、各デバイスの信号強度(RSSI)を表示しているので参考にしてください。自分の環境だと-80dBm台だと接続も安定。-95dBm以下はスキャンも含めてかなり厳しくなってくる感じです。

linking-sensor, linking-ledで接続できる距離は、Raspberry Pi3の場合数mまでが無難

距離が離れるととたんに接続が不安定になります。その場合はlinking-sensorは諦めてlinking-scannerでのセンサー値の読み込みに徹したほうがいいですね。

Raspberry Pi3本体の向きも気をつけたほうがいい

5m程度のシビアな距離になると、Raspberry Piの向きも影響するようです。アンテナは基板上面についるので、そちらがデバイスに向くようにしたほうがいいです。

また、Tukeruなどはボタン電池と金属クリップが本体下面にあるので、こちら側への電波の飛びは多分悪くなると思います。デバイスの向きも要注意です。

linking-sensor, linking-ledでの接続には時間がかかる

距離が近い場合でも接続時は10〜20秒程度時間がかかります。

バッテリー残量通知は動いてるのかどうか不明

node-linkingのドキュメントに以下のように書いてあります:

今のところ、このリクエストに対して通知を返してくれるのは Sizuku 6X だけのようです。しかし、chargeRequired は常に true、chargeLevel は常に 0 になります。このサービスがうまく機能しているか良く分かりません。

確かにバッテリー残量通知はビーコンデータにも入ってないようで、果たして動作してるのかどうかよくわかりません(バッテリーが減ってきたら通知されるのかも)。linking-sensorを使う場合は、batteryのチェックは除外しておくのがおすすめです(そのほうが接続が早くすみます)。

温度センサーは、Tukeru THとShizuku THAのどっちがいいか

Shizukuは大気圧センサーもついているかわりに、値段は700円高い2300円。両方使ってみての感想です。

  • Sizukuの大気圧センサーは正確ではない?

自分が購入したものは一日中値が1000のままで機能してるように見えません。また値はlinking-scanner経由でしか取れず、linking-sensoで接続して取得することがなぜか出来ません。そもそも気圧は部屋ごとに変わるものでもないので、気圧が知りたければ適当なWebサービスで値を取れば十分な気がしてきました。

  • もしかするとSizukuのほうが電波が遠くまで届くかも

はっきり確かめたわけではないですが、自分の利用状況だと一番離れた部屋からはTukeruの電波が届きませんでした。ためしにSizukuに置き換えてみると大丈夫でした。

  • Tukeruは設置向きで湿度の値が変わる

Tukeru × 3個、Sizuku × 1個を同じ場所において、値がどの程度そろうかを見てみました。

下のグラフで、オレンジの線がShizukuで、それ以外がTukeru。12時数分すぎに同じ位置においてます。

スクリーンショット 2018-08-18 午後1.03.15.png

温度は4つともなかなかにそろった値をだしてるので問題ないのですが、湿度が若干ばらついてます。なお、使用してるセンサSHT20のスペックを見たら±3%。
最初、Tukeruが3つともSizukuより5%ほど高い湿度の値となってますが、ふと思いついて、Tukeruを穴が開いてる正面を上向きにして置いたら、グラフ右側のように1つを除いて湿度の値が近づきました。どうやらTukeruは上向きに置いたほうがいいようです。筐体の密閉性が高すぎて湿気がこもってる感じです。

36
42
3

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
36
42