- 責任分界点(Shared Responsibility Model)の再定義
Azureに移行すると、運用チームの役割は大きく変わります。
まず最初に「どこまでAzureが面倒を見てくれるのか」を正確に整理しないと、運用設計が破綻します。
■ 代表的な責任分界の例
項目 IaaS(VM) PaaS(App Service/SQL DB) SaaS
OSパッチ ユーザ Azure Azure
ミドルウェア ユーザ Azure Azure
バックアップ ユーザ or Azure Azure Azure
監視 ユーザ ユーザ Azure(限定的)
■ よくある落とし穴
- 「AzureだからOSパッチは勝手に当たる」と誤解
- 「バックアップは Azure が全部やってくれる」と誤解
- PaaS にしたのにアプリログの取り方をオンプレと同じにしようとする
→ 最初に責任分界を明文化し、運用プロセスを再設計することが必須。
- 運用プロセスのクラウド最適化(Lift & Shift ではなく “運用のモダナイズ”)
Azureに移行しても、オンプレの運用プロセスをそのまま持ち込むとコストも手間も増えます。
■ 見直すべき主要プロセス
● ① 監視
- Azure Monitor / Log Analytics / Application Insights を前提に再設計
- 「死活監視+リソース監視」から「アプリの正常性監視」へシフト
- アラートはメールではなく Action Group → Teams / Webhook / ITSMへ
● ② ジョブ管理
- JP1 / AJSのLift & Shiftはコスト高
- Azure Automation / Logic Apps / Functions / Data Factory で代替可能
- 依存関係の可視化と再設計が必要
● ③ バックアップ
- Azure Backup / VM Snapshot / SQL自動バックアップ
- RPO/RTO をクラウド前提で再定義
- オンプレの週次フル+日次差分のような設計は不要
● ④ 構成管理
- Azure Policy / Azure Update Manager / Desired State Configuration
- 「手順書ベースの構築」から「コード化された構成管理」へ
- セキュリティ・ガバナンスの再構築
クラウドでは「設定ミス」が最大のリスク。
Azureのセキュリティ機能を前提にガバナンスを作り直す必要があります。
■ 必須のセキュリティ要素
● ① ID管理
- Azure AD(Entra ID)を中心にゼロトラスト化
- 特権IDはPIM(Privileged Identity Management)で管理
- サービスアカウントは Managed Identity を使う
● ② ネットワーク
- NSG / Firewall / Private Endpoint / VNet Integration
- 「インターネット非公開」を実現するための設計が重要
- オンプレのDMZ概念をクラウド向けに再定義
● ③ ポリシーとコンプライアンス
- Azure Policyで構成の逸脱を自動検知・自動修復
- セキュリティセンター(Defender for Cloud)で脆弱性管理
- ログはLog Analyticsに集約し、保管期間を要件に合わせる
- コスト管理とFinOpsの導入
クラウド運用で最も失敗しやすいのがコスト。
「使った分だけ課金」は便利だが、放置すると爆発します。
■ コスト最適化のポイント
● ① リソースの自動停止・スケール
- VMの自動停止
- App Service / AKSのオートスケール
- 夜間停止や検証環境の自動削除
● ② 料金モデルの最適化
- Reserved Instance / Savings Plan
- ストレージ階層(Hot / Cool / Archive)の使い分け
- Log Analyticsのデータ保持期間の最適化
● ③ 可視化
- Cost Management + Power BI
- 部署別・システム別のタグ付け
- 「誰が何に使っているか」を明確にする
- 運用組織・スキルセットの再定義
Azure化は技術だけでなく、運用組織の役割そのものを変えるプロジェクトです。
■ 必要なスキルの変化
従来 Azure運用
OSパッチ適用 自動化設定・ポリシー管理
ミドルウェア構築 PaaSの設定・監視設計
手順書ベースの運用 IaC(Bicep/Terraform)
監視ツールの運用 Azure Monitor/KQL
■ 組織として必要なこと
- 運用チームにIaC / Azure Monitor / Automationのスキルを付与
- 「構築担当」「運用担当」の境界を曖昧にし、DevOps的な体制へ
- 運用標準(命名規則、タグ、RBAC、ログ設計)を全体で統一
まとめ:Azure マネージドサービス化で必ず考えるべき5つ
- 責任分界点の明確化
- 運用プロセスのクラウド最適化
- セキュリティ・ガバナンスの再構築
- コスト管理(FinOps)の導入
- 運用組織・スキルセットの再定義
以上です。
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伊藤 俊広
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