1.初動対応:まず切り分けの軸を立てる
最初の5分でやるべきことは「どこが悪いかの当たりをつける」こと。
以下の4軸で状況を分類すると、後の調査が一気に早くなる。
- 範囲 — 全社 / 拠点単位 / VLAN単位 / 特定端末のみ
- 症状 — 通信不可 / 遅延 / 断続的 / 特定サービスのみ
- 影響レイヤ — L1(物理)/ L2(VLAN)/ L3(ルーティング)/ L4-7(アプリ)
- 発生タイミング — 定時作業直後 / 機器更新直後 / 無操作時に突然
この4つを最初に押さえると、後続の調査が迷わない。
2.物理層(L1)チェック:最速で切り分けできる部分
ネットワーク障害の3〜4割は物理層が原因。
- ケーブル抜け・断線・曲げ破損
→ スイッチのポートLED(Link/Act)を確認 - PoE機器の電力不足
→ AP・IP電話が落ちていないか - スイッチの電源・ファン異常
→ 再起動や温度異常ログ - 光モジュールの不良
→ Tx/Rxパワー値を確認(閾値以下なら交換)
物理層は「見ればわかる」ので、最初に確認すると時間短縮になる。
3.L2(VLAN・STP)チェック:範囲が広い障害の定番
拠点全体やフロア単位で落ちている場合はL2を疑う。
- VLAN設定の不整合
→ Trunkポートの許可VLANが一致しているか - STPループ
→ CPU高負荷、MACアドレステーブルが揺れる、pingが断続的 - MACフラッピング
→ ループ検知ログが出ていないか - BPDUガード発動
→ 誤接続でポートがerr-disableになっていないか
L2障害は「広範囲・断続的・CPU高負荷」が特徴。
4.L3(ルーティング)チェック:特定セグメント間だけ通信不可のとき
L3は「どこまで届くか」で切り分けるのが鉄則。
- デフォルトゲートウェイへping
→ NGならそのセグメントのGW(L3SW/Router)が怪しい - 他セグメントへのtraceroute
→ どこで止まるかでルート不整合を特定 - ルーティングテーブルの不整合
→ OSPF/BGPの経路が落ちていないか - VRRP/HSRPのフェイルオーバー異常
→ Active/Standbyの切替が正常か
特に「経路が揺れる」「特定宛先だけ遅い」はL3の典型。
5.DNS・DHCP・FW(L4-7)チェック:アプリだけ落ちているとき
ネットワークは生きているのにサービスだけ落ちるケース。
- DNS障害
→ 名前解決だけ失敗する(IP直打ちは通る) - DHCP障害
→ 新規端末だけ通信不可(IP取得できない) - FW/UTMの誤検知・ポリシー変更
→ 特定ポートだけ塞がる - プロキシ障害
→ Webだけ遅い・繋がらない
アプリ層は「特定サービスだけ死ぬ」ことが多い。
6.ログ・監視からの深掘り:原因特定の決め手
以下のログを優先的に確認すると、原因に直結しやすい。
- スイッチ/ルータのsyslog(リンクダウン、STP、ルート変動)
- FW/UTM のログ(Deny、IPS、帯域制御)
- APコントローラのログ(大量接続、チャネル干渉)
- 監視ツール(Hinemos/Zabbix等)
→ CPU/メモリ/インターフェース利用率の急上昇 - トラフィック統計
→ 特定端末の異常通信(ウイルス・暴走アプリ)
ログは「時刻一致」が最重要。障害発生時刻と照らし合わせる。
7.応急処置:復旧を優先する場合の判断
原因特定より復旧が優先されるケースでは、以下の順で対応。
- 影響範囲の切り離し(ループ発生セグメントの遮断)
- 冗長構成の切替(VRRP/HSRP、LAG、冗長FW)
- 問題機器の再起動(CPU高負荷時は有効)
- 該当ポートのshutdown/no shutdown
- 問題端末の隔離(暴走通信の疑い)
応急処置後は必ず「恒久対策」をセットで考える。
8.復旧後の対応:再発防止と情報整理
障害対応は復旧して終わりではなく、ここからが本番。
- 原因の一次・二次切り分け
- 恒久対策の検討(設定見直し、冗長化、監視強化)
- 作業記録の整理(時系列・ログ・対応内容)
- 関係者への報告(影響範囲・原因・再発防止策)
- 変更管理への登録(設定変更があった場合)
特に「時系列の整理」は後で必ず役に立つ。
9.実務で使える“NW障害チェックリスト”
- 物理層(ケーブル・電源・PoE・光)
- L2(VLAN、STP、MACフラップ)
- L3(GW、ルーティング、VRRP/HSRP)
- DNS/DHCP
- FW/UTM
- プロキシ
- 監視アラート
- 直前の作業有無
- 特定端末の暴走通信
- 冗長構成の切替状況
この順で見れば、ほぼ確実に原因に辿り着ける。
以上です。
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伊藤 俊広
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