「生成AIの活用」の必要性があちこちで叫ばれる中、生成AI活用の代表例であるにも関わず自分がどうしてもなじめなかったのが、「生成AIによる下書き」でした。
とあるきっかけで自分の認知や思考の特性を深堀する機会があったのですが、そこで自分が「生成AIによる下書き」に向かないことを言語化することができました。
決して「生成AIによる下書き」を否定するものではありません。この恩恵を受ける人も多いと思います。
ただ、「生成AIによる下書き」が活用できず、「自分は生成AIの活用が下手なのではないか」「生成AI時代についていけていないのではないか」と悩んでいる人がいたら「無理に周りに合わせなくていいよ」と伝えたいと思い立ち、この記事を書きました。
おことわり
- 本記事には認知心理学関連の用語が出てきますが、独学のため誤りを含む可能性があります。あくまで個人的に自分の特性を整理するために使ったものとなります。
- 認知や思考の特性について「マジョリティ」「マイノリティ」という言葉を使っていますが、決して優劣を表すものではありません。あくまで「特性」であり、自分の「特性」に合わせて活用しよう、というのが本記事の趣旨となります。
認知・思考の特性
まずは生成AIの話に入る前に、認知特性や思考パターンを整理します。大きく2つの軸があります。
- 情報の捉え方(フォーマットの違い)
- 情報のつなぎ方(プロセスの違い)
それぞれ簡単に解説します。
情報の捉え方(フォーマットの違い)
まず、情報を取り込み、保持する際の「脳内での表現方法」です。大きく2種類ないしは3種類に分類できるようです。
- 言語思考:情報を言葉や音声として処理するタイプ
- 視覚思考:情報を映像やイメージで処理するタイプ
- 物体視覚思考:色や形、質感など、写真や映像などの高解像度のイメージで捉えるタイプ
- 空間視覚思考:配置や距離感、つながりなど、関係性や設計図のように捉えるタイプ
筆者はこの中では「空間視覚思考」タイプのようです。
参考:ビジュアル・シンカーの脳
情報のつなぎ方(プロセスの違い)
続いて、取り込んだ情報をどう処理するか、どうアウトプットするか、についてのタイプ分けです。
- 線形思考
- 情報をA→B→Cのように、一次元構造で直列に並べて処理するタイプ
- 上から順に作成、のような処理と相性がよく、作成しながら考えて連想で処理を進められる
- 構造化思考・システム思考
- 情報をGraph DBのように多次元的なネットワーク構造として捉えるタイプ
- 全体像の構築から入り、ノード間のリンクを俯瞰しながら処理を進める必要がある
筆者はこの中では「構造化思考・システム思考」のようです。
認知・思考の特性とマジョリティ・マイノリティ
認知・思考の特性としては、例えば下記の組み合わせが考えられます。
- 言語思考 × 線形思考
- 空間視覚思考 × 構造化思考・システム思考
筆者は「空間視覚思考 × 構造化思考・システム思考」となり、調べた限りではマイノリティ側に属するようです。
全体像やアーキテクチャの設計図がないまま『とりあえずここから書いて』と言われると手が止まってしまったり、複雑な仕様を整理するときにホワイトボードやマインドマップなどで視覚的に整理したい方は、このタイプに近いかもしれません。
一方で、世の中のツールや一般的なノウハウの多くは、「言語思考 × 線形思考」向けに最適化されていることが多いようです。
繰り返しになりますが、本記事において「マジョリティ」「マイノリティ」という言葉を使っていますが、決して優劣を表すものではありません。
ただ、生成AIの活用の文脈で世間に流れている情報を眺めていると、やはりどうしても「マジョリティ」の方の情報が多く入ってくることも多いかと思います。
もちろん、その情報が活用できる方も多いとはずです。ただ、認知・思考特性によっては合わないこともあり、マイノリティ側の特性を持っていることを自覚することで、自分なりの生成AI活用につなげていけるのでは、というのが最近の気づきです。
ここから本題に入っていくのですが、生成AIの活用例としてよく見かける「生成AIでとりあえず下書きを作らせる」というノウハウは、実はマジョリティである「言語思考 × 線形思考」のプロセスに最適化されているのではないか、と個人的には感じています。
そのため、筆者のような「空間視覚思考 × 構造化思考・システム思考」の人間がそのまま活用すると、「AIが作った一次元のテキストを、わざわざ自分の脳内で多次元のネットワーク構造に変換し直す」という「無駄な翻訳作業(認知負荷)」が発生してしまいます。
ここからは、具体的に「生成AIによる下書きの活用」に絞って、話を進めていきます。
生成AIによる下書きと認知・思考特性
文章や資料を作成する際の「生成AIによる下書き」の活用において、一般的なアプローチは以下のようになるかと思います。
- ユーザーが生成AIに概要を伝える
- 生成AIが概要を元に下書きを作成する
- ユーザーが下書きを元に修正・加筆を行い完成させる
この流れは、「言語思考 × 線形思考」の方には自然で、効果も高いようなのですが、少なくとも筆者の場合にはかえって非効率になってしまうことに気づきました。
ここから、一般的な各アプローチの中で、「空間視覚思考 × 構造化思考・システム思考」の脳内で何が起こっているかを、筆者の場合を例として解説します。
ユーザーが生成AIに概要を伝える
まず、生成AIに概要を伝える前の段階で、筆者の脳内では成果物の多次元構造(構造・全体像)が存在します。ただ、この段階ではまだ言語化は出来ていません。
生成AIに下書きを依頼するためには、この多次元構造を一度言語化して伝える必要がありますが、実は「脳内の多次元構造を言語化出来た」時点で、もう下書きが不要なレベルでアウトプットが進んでいる状態となります。
生成AIが概要を元に下書きを作成する
それでも、ひとまず今回は、言語化した概要を生成AIに伝えてみましょう。
もちろん、認知・思考特性に関係なく、生成AIは概要を元に下書きを作成してくれます。
ユーザーが下書きを元に修正・加筆を行い完成させる
ここから生成AIの下書きを元に仕上げようとすると、脳内の多次元構造、自分で言語化した内容、生成AIが作った下書きを全てリンクさせて考える必要があり、かえって負荷が上がってしまいます。
下書きを介さなければ、脳内の多次元構造と自分で言語化した内容のマッピングだけで済んだものが、「生成AIの出力した構造・文章とのマッピング」という負荷が足されてしまう、ということが、筆者のような認知・思考特性のタイプが「生成AIによる下書き」に対してあまりしっくりこない原因ではないか、と考えています。
生成AIをどう活用すればいいか
では、筆者のような認知・思考タイプの方が生成AIを活用できないかというと、そういうわけではありません。
あくまで、「生成AIによる下書き」のように合わない使い方がある、というだけの話で、むしろ使いどころを見極めれば筆者のような認知・思考の特性を持った人には強力な武器となります。
先ほどと同様に、文章や資料を作成する際の生成AI活用の流れを、筆者の例として紹介します。大まかには以下のような流れとなります。
- 脳内の多次元構造を出力する
- 構造を元に文章や資料の作成を進める
- 詰まったら生成AIに相談する
- 最終的に全体を生成AIにチェックしてもらって修正する
具体的に見ていきます。
脳内の多次元構造を出力する
文章や資料の複雑さにもよりますが、脳内に構造を保持したままだと認知負荷が高いので、いったん現実世界に出力します。
この時、筆者はPCのテキストエディタやオンラインのホワイトボードでは考えがまとまらず、模造紙を使ったり、会議室のホワイトボードを使います。
キーワードやポイントをかき出し、丸で囲ったり線でつなげたりして構造を整理します。この時、視界にすべての要素が入っていることが重要なようで、画面サイズに限界のあるPCは向かないようです。
この記事を書く時にもこんな感じで手書きでまとめていました。
構造を元に文章や資料の作成を進める
先ほども書いた通り、ここまで落とし込めている時点で、一般的な「下書き」とはイメージが違うかもしれませんが、骨格は言語化出来ている状態です。
いったんここは生成AIは利用せず、出力した構造化の情報や、時には脳内の多次元構造を再参照して、文章や資料を作っていきます。
詰まったら生成AIに相談する
とはいえ、そのままスムーズに資料作成が進むとは限りません。特に筆者の場合は「ここでどういった要素を書く」ところまでは落とし込めているのですが、それを具体的にどう言葉で表現するか、で止まってしまうことがあります。
こういうときは生成AIに相談します。例えば、以下のような相談の仕方をします。
- 「Aの概要」「Aの具体例」という流れで説明したいが具体例が思いつかないので何かいい例はないか?
- 「B」から「C」への展開に飛躍はないか?
- 「D」から「E」の流れに違和感があるがうまく言語化が出来ず、何か気づくところはないか?
- 「F」についてこの説明で想定読者「Z」に伝わるか?ほかにいい言い回しはないか?
生成AIの回答に腹落ちする場合は、それを自分の言葉に置き換えて資料に組み込みます。そのまま入れることは少ないですが、質問することで突破口になることは多いです。最近は自分で悩むよりはまず壁打ち的に聞いてしまいます。
最終的に全体を生成AIにチェックしてもらって修正する
脳内の多次元構造や出力した構造に沿って作成しているはずですが、作っているうちに整合性が取れなくなってしまったり、全体の構造から逸脱してしまっている可能性があります。
ここは自分でもチェックしますが、自分だとバイアスがかかってしまうので、生成AIによるチェックが効果的です。
この時、最初に作成した、構造を出力したものも生成AIに一緒に渡すと、その構造を加味してチェックしてくれます。ホワイトボードや紙を使っている場合はスマホのカメラで撮影して画像として渡してあげればいいので、文章やデータに起こしなおす必要はありません。
まとめ
もし筆者のように「AIに文章を書かせると、直すのがかえって面倒くさい」と感じている人がいたら、それはAI活用が下手なわけでも、時代遅れなわけでもなく、「脳のアーキテクチャ(認知・思考の特性)」が合っていないだけかもしれません。
今回は「生成AIによる下書き」を例に挙げましたが、世の中に溢れる「生成AI便利術」は、特定の認知・思考パターンの方には刺さるが、そこが合わないとしっくりこない、という可能性があります。
無理に世間のノウハウに合わせず、ぜひ、「自分にとって一番しっくりくる生成AIの使い方」を見つけてください。自身の特性とマッチすれば生成AIは強力な武器となります。
本記事が、生成AIの活用について同じように悩まれている方のヒントになれば幸いです。
