開く前から、過去問はだいたい嫄な気配を持っている。
4月のはじめ、僕は研究室訪問のメールを書きかけて、また閉じた。学部4年、外部から東大情報理工を狙うと決めたのは1ヶ月前。教員の研究テーマには惹かれたが、自分が本当にここに合格できるのかは、まだどこにも書いてない。
ゴールデンウィーク、机に過去問を3年分積んだ。最初の年度の最初の大問——線形代数。10分で詰まった。固有値を求める手前で、行列が対角化できるのかどうか、自分で判断する基準を持っていなかった。
3時間で1年分。半分も解けなかった。
このとき、最初に必要だったのは、もっと教科書を読むことではなく、地図だった。
頻出分野を「年度順」ではなく「分野順」で見る
東大情報理工の院試数学を最初に開くと、誰もが同じ地点で困る。「何から解けばよいか」が見えにくい。大学入試と違って、標準問題集を1冊終えれば全体像が見える試験ではない。線形代数、解析、確率、微分方程式、複素関数、離散数学が、年度ごとに姿を変えて出る。
5月のあの日、僕に必要だったのは、過去問を年度順ではなく「大問の分野順」で見る視点だった。線形代数だけ過去5年分まとめて解く。次は積分だけ、確率だけ。すると、年度を跨いでも同じ手筋が使い回されていることに気づく。固有値問題は、ほぼすべて行列の対称性かブロック構造を見抜くところから始まる。
「方針3行」を冒頭に置く
6月、研究室の先輩(内部進学した院M1)に答案を見せる機会があった。先輩は1分で本題を言った。「方針が書けてない」。
僕は計算を全部書いていた。固有値も求めた。けれど、なぜその行列が対角化できるのか、書いていなかった。先輩はノートに3行のテンプレを書いた。「使う分野」「使う定理または変形」「最終的に示す量」。各大問の冒頭に、必ずこの3行を置けと言った。
これは技ではなく、規律だった。
外部生の3段階計画
最初の1か月は、線形代数と微積分の穴を埋める時期。固有値、対角化、内積空間、級数、重積分、微分方程式の基本操作を、手で書ける状態にする。
次の2か月は、過去問を分野別に解く時期。各分野ごとに「使った定理」「詰まった変形」「答案に書くべき一文」をノートに記録する。
最後の1か月は、年度別に時間を測って解く時期。本番形式で、選ぶべき大問と捨てるべき大問を判断する練習。
独学の難しさは「採点基準を持てないこと」
独学の難しさは知識ではなく、自分の答案を採点する基準を持てないことだと思う。教科書には正解は書いてあるが、自分の答案がどこで点を落とすのかは書いていない。年度別の解答と並んで「方針・典型ミス・試験で書くべきポイント」が同じフォーマットで読める資料があると、ここが大幅に楽になる。
院試hub の東大情報理工向けページに、年度別の独自解答と、方針・典型ミス・試験で書くべきポイントを整理している。問題本文は転載しないので、公式問題と並べて使う。
院試hub 東大情報理工向け解答パック: https://inshihub.com/grad-schools/tokyo-university