卒論・修論で詰まないBibTeX×TikZ完全ガイド:Google ScholarからTeX64で図表まで仕上げる【2026年版】
TL;DR
- 卒論・修論で時間が溶けるのは「参考文献の番号管理」と「図のフォント整合」と「直前のコンパイルエラー」の3つ
- 解決策:
biblatex+biberで引用管理を自動化、PGFPlots / TikZ で図を本文と完全に揃える、エラーは AI 内蔵エディタ(macOS なら TeX64)でログ解析を高速化- 環境は macOS 12+ / MacTeX or TeX Live 2024+ / TeX64 構成を推奨
- 本記事では Google Scholar から
.bibを作る手順、PGFPlots での実験データ作図、TikZ での概念図、典型エラー対処までを一気通貫で解説します
卒論・修論シーズンに毎年起きる事故は、だいたい次の3つです。
- 参考文献の番号がズレる
-
- 図のフォント・スタイルが本文と揃わない
-
- 締切直前にコンパイルエラーで沼る
この記事では、Mac環境で biblatex と TikZ/PGFPlots を組み合わせ、Google Scholar からの参考文献取り込みから、図の出力までを一気通貫で整える手順をまとめます。エディタは TeX64 を前提にしますが、.tex レベルでは他のエディタでも応用できる内容です。
対象読者:これから LaTeX で卒論・修論を書く B4 / M1 / M2、Word から LaTeX に移行したい研究室メンバー、Overleaf からローカル環境に切り替えたい人。
0. 前提環境
macOS 12+ (Apple Silicon / Intel どちらも可)
MacTeX 2024 もしくは TeX Live 2024 以降
TeX64 (https://tex64.com)
MacTeX が未インストールなら、先にインストールしてください。サイズは 5GB 超ですが、biblatex、biber、pgfplots がまとめて入るので、卒論用途では一括導入が楽です。
brew install --cask mactex-no-gui
GUI 不要なら mactex-no-gui で十分です。
1. プロジェクト構成を決める
まず、これから書くプロジェクトのフォルダ構成を決めます。後で図やデータを増やしても破綻しない構成にしておくのがコツです。
thesis```├── main.tex # メイン本体
├── preamble.tex # \usepackage 群を分離
├── refs.bib # 参考文献データベース
├── chapters```│ ├── intro.tex
│ ├── method.tex
│ ├── result.tex
│ └── conclusion.tex
├── figures```│ ├── fig_overview.tex # TikZ ソース
│ └── fig_result.tex
└── data``` └── result.csv # PGFPlots で読むデータ
章を \input{chapters/intro} で読み込み、図を \input{figures/fig_overview} で挿入する形にしておくと、メンテが圧倒的に楽になります。
TeX64 では「Open Folder」でこのプロジェクトフォルダを開けば、サイドバーに全ファイルが並びます。
2. プリアンブルの最小セット(卒論で詰まないやつ)
preamble.tex に以下を入れておけば、卒論レベルでは大体足ります。
\usepackage[utf8]{inputenc}
\usepackage[T1]{fontenc}
\usepackage{lmodern}
% --- 数式 ---
\usepackage{amsmath, amssymb, amsthm}
\usepackage{mathtools}
% --- 図表 ---
\usepackage{graphicx}
\usepackage{tikz}
\usepackage{pgfplots}
\pgfplotsset{compat=1.18}
\usetikzlibrary{arrows.meta, positioning, calc}
% --- 参考文献(biblatex 推奨)---
\usepackage[backend=biber, style=ieee, sorting=none]{biblatex}
\addbibresource{refs.bib}
% --- リンク(hyperref は最後に読み込む)---
\usepackage[hidelinks]{hyperref}
\usepackage{cleveref}
ポイントは2つ。
biblatex を使う:日本の研究室で BibTeX 8 系(\bibliography{} + bst ファイル)を強要されない限り、biblatex のほうが楽です。スタイル切り替えがオプション1個で済みます。
hyperref は最後に読み込む:他のパッケージとの相互作用でエラーが出やすいので、プリアンブル末尾に置きます。これだけで初期エラーの半分が消えます。
3. Google Scholar から .bib を作る
参考文献は、Google Scholar から BibTeX 形式をコピーするのが最速です。
手順:
- Google Scholar で論文タイトルを検索
-
- 論文タイトル下の引用ボタンをクリック
-
- 開いたダイアログ下部の「BibTeX」リンクをクリック
-
- 表示されたエントリを
refs.bibに追記
- 表示されたエントリを
例:
title={A Deep Learning Approach to ...},
author={Tanaka, Hiroshi and Sato, Mei},
journal={IEEE Transactions on ...},
volume={42},
number={3},
pages={123--145},
year={2024},
publisher={IEEE}
}
```
引用キー(`tanaka2024deep`)は自分で読みやすいものに直しても OK です。私は `著者姓+年+主題キーワード` で統一しています。
本文ではこう書きます:
```latex
深層学習による先行研究では \cite{tanaka2024deep} が ...
```
複数引用は `\cite{tanaka2024deep, sato2023}`、ページ指定は `\cite[p.~120]{tanaka2024deep}`。
スタイルを変えたいときは、プリアンブルの `style=ieee` を `style=apa` や `style=numeric-comp` に変えるだけ。論文投稿先が変わっても1行で対応できます。
---
## 4. コンパイル順序
`biblatex` + `biber` の場合、コンパイル順は次の通りです。
```bash
pdflatex main
biber main
pdflatex main
pdflatex main
```
`pdflatex` を2回回すのは、相互参照(`\ref` や `\cite`)の番号を確定させるためです。
TeX64 では「Build」ボタンを押すと、この一連を内部で適切に回してくれます。エラーが出たら、Axiom(内蔵 AI アシスタント)に `.log` ごと投げると、`! Package biblatex Error: ...` のような典型エラーは原因と対処を返してくれます。
---
## 5. TikZ で論文っぽい図を描く
実験データの作図は PGFPlots、概念図は素の TikZ、を使い分けます。
### 5-1. PGFPlots で実験データをプロット
`data/result.csv` がこういう形だとします:
```
x,y
0.0, 1.02
0.5, 1.45
1.0, 2.01
1.5, 2.78
2.0, 3.10
```
これを散布図 + 線でプロット:
```latex
\begin{tikzpicture}
\begin{axis}[
xlabel={Time [s]},
ylabel={Response [V]},
width=0.8\linewidth,
grid=both,
legend pos=north west,
]
\addplot+[mark=o, thick] table[col sep=comma, x=x, y=y]
{data/result.csv};
\addlegendentry{Measured}
\end{axis}
\end{tikzpicture}
```
軸の書体・線の太さ・凡例の位置まで、すべて LaTeX 側で制御できるので、本文と完全に揃います。Excel グラフの貼り付けでは絶対に揃わない部分です。
### 5-2. 概念図は TikZ で
ブロック図はこう書きます:
```latex
\begin{tikzpicture}[
node distance=1.5cm,
block/.style={draw, rectangle, minimum width=2cm, minimum height=1cm},
arrow/.style={-Stealth, thick}
]
\node[block] (input) {Input};
\node[block, right=of input] (proc) {Processor};
\node[block, right=of proc] (out) {Output};
\draw[arrow] (input) -- (proc);
\draw[arrow] (proc) -- (out);
\end{tikzpicture}
```
`positioning` ライブラリの `right=of` を使えば、座標を手で計算せずに済みます。
TikZ をゼロから覚えるのはきついので、TeX64 では Axiom に「ブロック図、入力→処理→出力の3段、矢印で繋いで」のように自然言語で骨組みを生成させて、そこから微調整する流れがおすすめです。
---
## 6. 相互参照は `cleveref` で
`\ref{fig:result}` ではなく、`\cref{fig:result}` を使います。
```latex
\cref{fig:result} に時間応答を示す。
% → 図1 に時間応答を示す。
```
「図」「式」「節」を毎回書き分ける必要がなくなり、章番号が変わっても自動追従します。
---
## 7. よくあるエラーと対処
| エラー | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| `! Undefined control sequence \cref` | `cleveref` 未読み込み | `\usepackage{cleveref}` を追加 |
| `Package biblatex Warning: 'babel/polyglossia' detected but 'csquotes' missing` | `csquotes` 未読み込み | `\usepackage{csquotes}` を `biblatex` 前に追加 |
| `! Package pgfplots Error: Sorry, the requested feature does require ...` | `pgfplots` の compat 設定 | `\pgfplotsset{compat=1.18}` を追加 |
| `! LaTeX Error: File 'XXX.sty' not found.` | パッケージ未インストール | `tlmgr install XXX`(管理者権限)|
| 引用が `[?]` になる | `biber` を回し忘れ | `biber main` → `pdflatex` を2回 |
TeX64 を使っている場合、これらは Axiom にログを投げると、ほぼ即座に切り分けてくれます。深夜の沼回避用です。
---
## 8. 卒論前にやっておくべき事前準備
最後に、夏のうちにやっておくと冬に死なないチェックリストを置いておきます。
- [ ] MacTeX か TeX Live をインストール、`pdflatex` がコマンドラインから動くことを確認
- [ ] - [ ] LaTeX エディタを1つ決める(TeX64 / TeXShop / VS Code+LaTeX Workshop など)
- [ ] - [ ] 上記の `preamble.tex` を1回コンパイルして PDF が出ることを確認
- [ ] - [ ] `refs.bib` を作って、すでに読んだ論文を10本入れて `\cite{}` で並べてみる
- [ ] - [ ] PGFPlots でダミーデータの散布図を1枚出してみる
- [ ] - [ ] `cleveref` の `\cref{}` で相互参照が動くことを確認
- [ ] - [ ] バージョン管理(git)でリポジトリ化、`.aux` などは `.gitignore`
これだけ済ませておけば、**冬の卒論執筆では本文だけ考えていれば良い状態**になります。
---
## 参考リンク
- TeX64(macOS 用 LaTeX エディタ、Axiom 内蔵): https://tex64.com
- - biblatex マニュアル: CTAN で `biblatex` を検索
- - PGFPlots マニュアル: CTAN で `pgfplots` を検索
- - Google Scholar: https://scholar.google.com
---
## まとめ
卒論・修論で時間が溶けるポイントは、本文ではなく**周辺作業**です。
- 参考文献 → `biblatex` + `refs.bib` で番号管理を全自動化
- - 作図 → TikZ / PGFPlots で本文と書体を揃える
- - エラー → Axiom(TeX64 内蔵 AI)でログ解析を自動化
これだけ整えれば、本文を書くことだけに集中できます。
---
## FAQ
**Q. `! Package biblatex Error: Incompatible package 'babel/polyglossia' detected.` が出ます**
`csquotes` を読み込んでいないことが原因です。`\usepackage{csquotes}` を `\usepackage{biblatex}` の**前**に追加してください。
**Q. `! LaTeX Error: File 'biblatex.sty' not found.` が出ます**
TeX Live のインストールが不完全か、`biblatex` パッケージ単体が入っていません。`sudo tlmgr install biblatex biber` で導入できます。MacTeX フルインストールなら最初から入っているはずです。
**Q. 引用が `[?]` になります**
`biber` を回し忘れています。コンパイル順は `pdflatex → biber → pdflatex → pdflatex` です。TeX64 の Build ボタンならこの順序を自動で回します。
**Q. `! Package pgfplots Error: Sorry, the requested feature does require ... which is not loaded.` が出ます**
プリアンブルに `\pgfplotsset{compat=1.18}` を追加してください。`compat` バージョンは導入している pgfplots に合わせて 1.16〜1.18 のいずれかです。
**Q. BibTeX と biblatex のどちらを使うべき?**
新規プロジェクトなら `biblatex` + `biber` 一択です。スタイル切り替えが `style=ieee` のようなオプション1個で済み、UTF-8 を含む著者名の扱いも安定しています。
**Q. TikZ と PGFPlots の使い分けは?**
データのプロット(散布図・折れ線・ヒストグラム)は PGFPlots、概念図・ブロック図・フローチャートは素の TikZ。両方とも TikZ ベースなので同居できます。
**Q. macOS 以外で同じ環境を作りたい**
biblatex / TikZ / PGFPlots 自体は OS 非依存です。Windows なら TeXstudio + TeX Live、Linux なら VS Code + LaTeX Workshop が定番。AI によるエラー解析を使いたい場合は、現状 macOS の TeX64 が組み込みで一番早いです。
**Q. `! Undefined control sequence \cref` が出ます**
`cleveref` パッケージを読み込んでいません。`\usepackage{cleveref}` を `hyperref` の**後**に追加してください。
**Q. 数万点のデータを PGFPlots で描こうとすると `! TeX capacity exceeded` で落ちます**
PGFPlots のメモリ制限です。`\addplot+[each nth point=10]` でダウンサンプルするか、`\usepgfplotslibrary{external}` を使って図を個別に PDF へプリコンパイルしてください。データ量が大きいなら、matplotlib で PDF 出力 → `\includegraphics{}` のほうが現実的です。
**Q. TeX64 は無料で使える?**
コア機能(編集・コンパイル・PDF プレビュー・SyncTeX)は無料です。AI(Axiom)と OCR を使うなら Basic / Pro プランが必要です。詳細は [https://tex64.com](https://tex64.com) を参照してください。