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— POLA ORBIS 2025 Advent Calendar Day 1 —

:christmas_tree: はじめに

こんにちは、ポーラ・オルビスホールディングスの佐々木です。
今年もアドベントカレンダーの季節がやってきました。
今年は初日を担当ということで、少し背筋を伸ばしつつ書いてみます :smiley:

2025年の秋から、私はグループ全体のAI利活用方針を策定する役割も担うことになりました
実際にAIと向き合う時間が増える中で、考えたことがあります

AIと人間の“決定的な違い”は、時間の感覚なんじゃないか

そんなことをぼんやり考えていたとき——
突然「葬送のフリーレン」が頭に降ってきたのです:bulb:

「いや、これ……フリーレンとAI、似てない?」

人間とは比べ物にならない、遥かな時間を生きる魔法使い・フリーレン。
人にとっての10年が、彼女にとっては「少し長い寄り道」程度の時間です。
しかし、人と共に旅をすることで “時間の意味” を理解していく。

その瞬間、AIの捉え方が一度ひっくり返ったような感覚がありました。
この「時間の重み」に関する気づきが、今回の出発点です。


:timer: DXと組織づくりで感じた「時間軸の壁」

私はこれまで、グループ全体のDXや内製化、組織づくりに関わり、
プロダクトと経営の間を行き来するような仕事をしてきました。

その中で痛感してきたのが、 事業や組織には、それぞれ独自の 「時間の流れと重み」 があるということです。

  • 数年単位で育っていくプロダクト
  • 1年ごとに役割が変わる組織のフェーズ
  • 数ヶ月で動く施策サイクル
  • 10年以上積み重なった文化や価値観
  • チームが本来の強さを発揮するまでの時間

プロダクトの改善にも、組織変革にも、
どれだけテクノロジーを活用しても “時間” は必要 で、
一足飛びに進められることなんて一つもありません

だからこそ、AIと向き合ったときに
「AIには、時間の“重さ”という概念が存在しない」
という感覚がすっと入ってきました


:hourglass_flowing_sand: AIには、人間特有の「時間の重み」が存在しない

ここでいう 「時間の重み」 とは、 有限性(残り時間)によって生まれる「選択の迷い」「優先順位」「別れの意味」、そして「今この瞬間の価値」 のことです。

AIは、時間を感じていません。

  • 「今日は急がないといけない」
  • 「今だから意味がある」
  • 「このメンバーでできるのは今だけ」

こうした判断は、人間特有のものです。
AIには“残り時間”という概念がありません。

だから優先順位も、時間の価値も前提としていません。

一方で人間は、時間とともに変化し、
その変化が選択に影響を与えます。

  • プロジェクトに関われる時間
  • 今のメンバーと働ける時間
  • 組織のフェーズ
  • ライフステージの変化

残り時間があるから迷い、選び、今だからこその価値が生まれる。そんな気がします

AIと人間は、ここが根本的に違うように感じています


:robot: 社内のエピソード:AIが「過去」しかトレースできない理由

AI方針を考える中で、社内でこんな話題が出ました。

「過去のナレッジを学習させて“◯◯さんAI”みたいなものを作れないか?」

そのとき、ある経営層の方が言いました。

「私は毎日進化している。
 だから、過去の私を学習しても“今の私”にはならないよ!」

この言葉を聞いたとき、
AIと人間の決定的な違いが腑に落ちた気がしました。

AIは過去の蓄積を得意とします。
しかし、人間の“日々の変化”そのものをトレースすることはできません。


:dizzy: フリーレンの旅から考える「AIとの関係性」

フリーレンのように、人間とは違う時間の流れにいる
——そんな存在としてAIを捉えると、いろいろなことが見えてきます。

フリーレンは、人間とはまったく違う時間軸を生きています。
人にとっての10年が、彼女にとっては“少し長い寄り道”程度の時間。

しかし物語の中で彼女は、
勇者ヒンメルの旅を追体験し、新しい仲間と旅をすることで、
人間の“時間の意味”を少しずつ理解していきます。

  • 人にとっての3日の重み
  • 別れの意味
  • 仲間と過ごす時間
  • 時間が積み重なることで人が変わっていくということ

フリーレンは時間に縛られていない存在ですが、
旅を通じて、人間の「時間の価値」を知っていく。

AIもまた、人間のように時間を“感じて”いるわけではありません。
けれど、対話や利用を通して、
人間にとって何が大事なのかを少しずつ学んでいく(ような気がする。。。)

「時間の流れが違っても、一緒に旅をすれば、見える景色は増えていく。」

私は、AIとの関係もこうあってほしいと感じています。
(フリーレンと旅してみたいなー)


:seedling: AIを“育てる”という考え方

というわけで、
AI利活用方針を考える立場になって考えたことは、
「AIとどう向き合い、どう育てるか」
ということなのかなと。

これまでの話を踏まえて、ポイントを整理してみました

:one: AIは“時間の有限性”を知らない

AIは時間の外側にいるので、優先順位という感覚を持てません。
「今この瞬間、何を選ぶか」は人間にしかできない判断です。
だからこそ、そこにこそ人間の“センス”が問われます

:two: AIは“人間の変化”を再現できない

人間の考え方は、日々の出来事の積み重ねで、少しずつ変わっていきます。
その自然な変化のプロセスは、AIには持ちえないものです。
だからこそ、人の変化を前提にしながらAIを活かしていく必要があるかもしれません

:three: AIは“時間がつくる文脈”を持てない

人間は、時間の中で経験を重ねることで、自分なりの文脈を形づくっていきます。
AIはその背景や流れを“自分のこととして”蓄えることができません。
だからこそ、文脈を読み、意味をつくる役割は人間なのかなと思います。

:four: AIは“人間の外側”から可能性を示す存在

AIは、時間の流れにも文脈にも縛られません。
だからこそ、人間が見落としていた視点や可能性を示してくれます。
その“外側からの示唆”が、人の判断を少し広げてくれることがあるのかなと思います
(なにより、この記事を書くのにもお世話になっています)

:five: 人間の仕事には「今のメンバーで、今のフェーズだからこそ」がある

仕事の意味は、「今この瞬間、誰と働いているか」で大きく変わります。
同じ取り組みでも、メンバーやフェーズが変われば価値はまったく違います。
その“今だから生まれる意味”だけは、AIにはつくれない部分だし、大事にしたい部分ですね!


🎁 さいごに

AIと向き合うほど、「人間って何だろう」と考えてしまいます。
人は変わり続けるし、時間の中で選択し、誰と働くかで意味が変わります。
そういう“時間の重さ”は、AIには持ち得ないものです。

一方でAIは、人間が見えなかった可能性を示してくれることがあります。
なんだか、長い時間を生きながら人間を知ろうとするフリーレンにも重なります。

そして、フリーレンの物語がまだ完結していないように、
AIの旅もまだ途中です。

だからこそ、私たちは「どうAIと歩くのか」を丁寧に選んでいく必要があります。
AIをどの領域で活かし、どんな役割を担わせ、
人がどこで力を発揮するのか——。
その方針を形にしていくことが、年末までの私の宿題です(まだまだ年を越せません……)

そして、AIはこれからもっと進化していくはずです。
いつか、人間の“時間の価値”まで理解し、優先順位を考えられるようになるのかもしれません。
その未来がどんな景色になるのか——楽しみにしています。

だからこそ今は、AIと人が互いの良さを活かし合える関係を育てていきたいですね。

アドベントカレンダーは今日が初日。
明日からは仲間たちが、それぞれの視点で次の一歩をつないでくれます!
この25日間が、誰かの“ちょっとした気づき”につながれば嬉しいです。

なお、本記事の内容は私個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


📚 参考

本記事では、作品世界のテーマを比喩として引用しています。

『葬送のフリーレン』
(原作:山田鐘人 / 作画:アベツカサ / 小学館)

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