おはようございます!
GMOコネクトの名もなきエンジニアです。
よろしくお願いします!
日刊IETFは、I-D AnnounceやIETF Announceに投稿されたメールをサマリーし続けるという修行的な活動です!!
今回は、2025-10-29(UTC基準)に公開されたInternet-DraftとRFCをまとめました。
- Internet-Draft: 1件
- RFC: 8件
めちゃくちゃRFCが発行された日となりましたね!
参照先:
その日のサマリー & Hot Topics
- 2025-10-29は、Segment Routing(SR)技術の標準化が大きく前進した日となりました。RFC 9855によるTopology Independent Fast Reroute(TI-LFA)の仕様化を筆頭に、SR PolicyのPCEP拡張(RFC 9862)、BGP-LSによるSR Policy情報の配信(RFC 9857)など、SR関連の重要な標準が一斉に発行されました。これらは、ネットワークの高速障害回復とトラフィックエンジニアリングの高度化を実現する基盤技術です。
- Hot Topicsとして、Fast Reroute技術の大幅な強化が挙げられます。TI-LFAはSRフレームワーク内でノードと隣接セグメントの保護を提供し、任意の2接続ネットワークで完全なカバレッジを保証します。RFC 9860ではマルチキャストトラフィックにもFRR保護を拡張し、RFC 9884ではPath Segment Identifierを使ったLSP Pingの手順を定義することで、SRパスの接続性検証と障害分離を可能にしています。これらの標準化により、SR技術が実運用レベルで成熟してきたことが明確になりました。
投稿されたInternet-Draft
Validation of Locations Around a Planned Change
Location to Service Translation(LoST)プロトコルに対する拡張仕様で、LoSTサーバーがクライアントに位置データの計画的変更を通知できるようにします。本拡張は、LoSTの検証機能でのみ有効であり、将来の特定日時に有効だったレコードが無効になったり、新しいレコードが有効になったりする可能性がある場合に、クライアントが事前に把握できることが有益です。findServiceリクエストに指定日時時点での検証を要求する要素を追加し、レスポンスには検証の現在の有効期限を示すTime-To-Live要素を含めます。また、計画的変更をポーリングできる別のインターフェースも提供します。RFC5222のRelaxNGスキーマに対する後方互換性のある代替として、従来のXMLスキーマも提供されています。
発行されたRFC
AODV-RPL: The Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks (RPL) Based on Ad Hoc On-Demand Distance Vector (AODV) Routing
Low-Power and Lossy Networks(LLN)において、対称および非対称のPeer-to-Peer(P2P)トラフィックフローに対するルート発見機能を提供するAODV-RPLを規定しています。これは、Ad hoc On-demand Distance Vector(AODV)ルーティングに基づくRPLの仕様です。AODV-RPLは、ホップバイホップルートとソースルーティングの両方に対応するリアクティブなP2Pルート発見メカニズムであり、ソースノードとターゲットノード間に非対称リンクがある場合に、方向性のあるパスを構築するためにペアインスタンスを使用します。
Label Switched Path Ping for Segment Routing Path Segment Identifier with MPLS Data Plane
Segment Routing(SR)のPath Segment Identifier(PSID)を含むSRパスの接続性検証と障害分離をサポートするため、LSP Pingの使用手順を定義しています。6つの新しいTarget FECスタックサブTLVを規定し、双方向またはエンドツーエンドのパスをSRネットワークで識別・相関させることができます。これらのメカニズムにより、MPLSネットワークにおけるPath SIDを持つSRパスの検証とトレースが可能になり、既存のSR-MPLS OAM機能を補完します。
Path Computation Element Protocol (PCEP) Extension for Color
Traffic Engineering(TE)トンネルやポリシーを意図や目的と関連付けるために使用される、Colorと呼ばれる32ビット数値属性をPath Computation Element Protocol(PCEP)で伝送するための拡張を規定しています。例えば、低遅延サービスを提供するために構築され、遅延に最適化されたパスを持つTEトンネルは、「低遅延」を表すColorでタグ付けできます。この拡張により、PCEPでColor属性を運ぶことが可能になります。
Path Computation Element Communication Protocol (PCEP) Extensions for Segment Routing (SR) Policy Candidate Paths
Segment Routing(SR)PolicyのCandidate Pathをシグナリングするための、Path Computation Element Communication Protocol(PCEP)拡張を規定しています。SR Policyは「セグメント」と呼ばれる命令の順序付きリストで構成されるソースルーティングポリシーであり、1つ以上のCandidate Pathから成ります。また、本文書はRFC 8231を更新し、パス計算要求および応答メッセージを使用せずにSR Label Switched Path(LSP)の委任と設定を可能にします。この仕様はSR-MPLSとSRv6の両方に適用されます。
Advertisement of Segment Routing Policies Using BGP - Link State
ノードにローカルに存在するSegment Routing(SR)Policy情報を収集し、BGP - Link State(BGP-LS)アップデートでアドバタイズするために使用されるメカニズムを記述しています。このような情報は、パス計算、再最適化、サービス配置、ネットワーク可視化などのために外部コンポーネントで使用できます。BGP-LSを通じてSR Policyの状態を配信することで、ネットワーク全体の制御とモニタリングが向上します。
An Update to YANG Module Names Registration
YANGモジュールおよびサブモジュール名の一意性に関するIANAガイダンスを修正するものです。RFC 6020を更新し、モジュールとそのリビジョンがIANAによってどのように扱われるかを明確化します。これにより、YANGモジュールの命名規則とレジストリ管理の一貫性が向上します。
Multicast-Only Fast Reroute (MoFRR) Based on Topology Independent Loop-Free Alternate (TI-LFA) Fast Reroute
Topology Independent Loop-Free Alternate(TI-LFA)メカニズムをProtocol Independent Multicast(PIM)のMulticast-only Fast Reroute(MoFRR)と組み合わせて使用する仕様を規定しています。TI-LFAは、潜在的な障害を回避するバックアップパスを事前計算することで、IPネットワークのユニキャストトラフィックにFast Reroute(FRR)保護を提供します。TI-LFAとMoFRRを統合することで、FRRメカニズムの利点をマルチキャストトラフィックに拡張し、マルチキャストネットワークにおける回復力の強化とパケット損失の最小化を実現します。
Topology Independent Fast Reroute Using Segment Routing
Segment Routing(SR)フレームワーク内でノードおよび隣接セグメントの保護を提供することを目的とした、Topology Independent Loop-Free Alternate(TI-LFA)Fast Reroute(FRR)を提示しています。このFRR動作は、LFA、Remote LFA(RLFA)、Directed Loop-Free Alternate(DLFA)という実証済みのIP FRR概念に基づいて構築されています。これらの概念を拡張し、リンクステートIGPを使用する任意の2接続ネットワークで保証されたカバレッジを提供します。TI-LFAの重要な側面は、Point of Local Repair(PLR)からの予想される収束後のパスに対する保護を確立するFRRパス選択アプローチであり、さまざまなFRRオプション間のタイブレークを制御する運用上のニーズを削減します。
編集後記
- 2025-10-29は、Segment Routing技術にとって歴史的な一日となりました。TI-LFAという画期的なFast Reroute技術が標準化され、SR環境での高速障害回復が現実のものとなりました。興味深いのは、単にユニキャストだけでなくマルチキャストトラフィックにもFRR保護を拡張している点です。これにより、動画配信やライブストリーミングなどのマルチキャストアプリケーションでも、ネットワーク障害時の瞬時の切り替えが可能になります。
- SR PolicyのPCEP拡張とBGP-LS配信の標準化により、ネットワークの中央制御とモニタリングの枠組みが整いました。Color属性を使ったトラフィックエンジニアリングは、ネットワークサービスの意図ベースの制御を実現する重要な一歩です。これらの標準が揃ったことで、SR技術の本格的な商用展開が加速するでしょう。IETF 121プラハ会議での議論の成果が、こうして形になっているのを見ると、標準化プロセスのダイナミズムを感じます。
最後に、GMOコネクトでは研究開発や国際標準化に関する支援や技術検証をはじめ、幅広い支援を行っておりますので、何かありましたらお気軽にお問合せください。