前編では、Blue Prism World London 2019(以下、BPWL)で明らかになったConnected-RPA戦略のうち、「1. Partners & Ecosystem」について説明した。
後編では、残りの「2. Data & People」、「3. Embedded Intelligence」について説明する。
トピックとしてはこの後編がメインと言ってよいだろう。
#2. Data & People
Blue Prism社は「データは戦略的資産におけるキーファクターであり、RPAはデータ活用を最大化するツールである」と語っている。Data & Peopleセッションでは、Blue Prismでデータ活用を最大化するために以下の3つの新機能を提供すると説明している。
- 2-1. Blue Prism Decipher
- 2-2. Work Queue Analysis
- 2-3. Data Gateways
2日目のセッション「Discover: Data is Gold, RPA the Gold Mine!」では、Integration ArchitectのJack Targetr氏、および、Product OwnerのMatt Verrill氏より説明があった。
【写真】Data is Gold, RPA the Gold Mine!セッション
###2-1. Blue Prism Decipher
Blue Prism Decipherは、AIを搭載したAI-OCR(光学文字認識)のことである。Blue Prism AI Labs(後述)で開発されており、Blue Prismのプロセス内で使用する事ができる。非構造化データ/半構造化データ/機械読み取り出来ないデータなど多くのデータタイプを読み取ることができ、読み取ったデータは設定したフォーマットへ変換が可能である。
高度な知識やスキルが必要とされないため、特別にデータサイエンスチームの設立や、ユーザーのトレーニングが必要なく、ビジネスユーザーが非技術者である場合も簡単に使用可能であり、自動化プロセスのスコープを拡げることが可能となる。例えば、受け取った支払請求書の処理にBlue Prism Decipherを事前にトレーニングして最適化すれば、請求書を買掛金(AP)システムに入力し、未処理の発注書との消し込みをBlue Prismのデジタルワーカーがシームレスに行うことが可能になる。
【写真】Blue Prism DecipherをBlue Prism内から利用するワークフロー
Blue Prism Decipherは、2019年夏リリース予定で、Blue Prismユーザーであれば無料で利用可能。現在は英語の請求書読み取りを最初のターゲットとしたベータテストを実施中。将来的にはインバウンド注文書、契約書、履歴書などの文書をサポートし、サードパーティの文書処理機能との統合も図る。尚、日本語や中国語など、ラテン文字以外の言語への対応も今後予定している。
###2-2. Work Queue Analysis
Blue Prismには、プロセスの作業を保存、管理、共有、レポートする機能を備えたWork Queueという標準機能が存在する。
これまでは、Work Queueのある瞬間瞬間の一断面のみを表示・確認することができたが、Work Queue Analysisの導入により、設定した時間間隔にて、実行Item数、平均実行時間の情報等のWork Queueのスナップショットを取得し、現在のWork Queueと比較・分析することが可能となる。スナップショットの情報はダッシュボードで表示される。実行Item数、Pending中のItem数、例外の数、平均実行時間等が比較できる。例えば、金曜日のWork Queueの情報と月曜日の情報や過去7日間の平均のWork Queueの情報を比較し分析することが可能となる。また、スナップショットのデータは、28日間隔でデータベースから自動的に消去される。
【写真】Work Queue Analysisのダッシュボード
尚、Work Queue Analysisはバージョン6.5で標準提供される。将来的には、ダッシュボードのチャート機能拡張、Data Gateways(後述)経由でのWork Queue Analysisデータのエクスポート機能を予定している。
###2-3. Data Gateways
これまで、Blue Prismのセッションログ、ダッシュボードのデータはアプリケーションサーバからSQLServerデータベースに転送・格納されていたが、Data Gatewaysの導入により、これらのデータをサードパーティのデータベース、Splunk/ElasticSearchなどの他アプリケーションやExcel/CSV等のFlatファイルに出力することが可能になる。テクニカルな設定は必要なくBlue PrismのGUIで容易に設定できるため、非技術者でも活用が可能になる。
データ出力先アプリケーションが持つデータと合わせることで、より広範囲なデータを分析・活用できるようになるため、まさにConnected-RPAのコンセプトを実現する機能だといえるだろう。
####データ出力先のアプリケーション
出力先のデータと合わせて包括的なデータ分析・活用が可能となる。以下の画像が、設定できるデータ出力先アプリケーションの一覧である。
【写真】Data Gatewaysのデータ出力先アプリケーション一覧
####データ活用を最大化する技術+人間の介在
データ活用を最大化する技術に加えて、低信頼度のデータを人間が介在して修正・トレーニングすることでより精度の高い自動化が実現できるようになる。
尚、Data Gatewaysはバージョン6.5で標準提供される。
#3. Embedded Intelligence
Embedded Intelligenceのセッションでは、Blue PrismはAIを駆使した自動化のさらなる強化を実現する手段として、以下の2つについて説明した。
- Blue Prism AI Lab
- Blue Prism Decipher(前述)
Blue Prism Decipherについては既に説明しているので、ここではBlue Prism AI Labについて説明する。
###Blue Prism AI Lab
Blue Prism AI Labは、Blue Prismが設立したロンドン拠点の研究室で、機械学習分野の博士号を取得している研究者、リサーチエンジニアを集めている。これまで自社でAIを持たず、ベスト・オブブリードの方針を取ってきたが、方針を転換しRPAに最適化した自社開発のAIで他RPA製品と比較して優位性を出していく狙いが有ると考えられる。
Blue Prism AI Labは以下のミッションを持つ:
- 人間から学習し続けるインテリジェントで応用可能なシステムを創ること
最後に、以下のようなキーメッセージを説明した。
- パートナーAI戦略に対しては、分離・独立していると同時に、補完的であること
- 純粋なる探索的な研究と現実世界の問題を解決する応用的な研究のバランスを取ること
- Blue Prismは、AIベンダーたること
【写真】Embedded Intelligenceのキーメッセージ
#最後に
以上、2回に渡ってBPWLについて説明してきた。
Blue PrismはRPAベンダーとしてだけでなく、Connected-RPAのプラットフォーマーとして、起業家マインドを持った**Connected Entrepreneur Enterprise(最新ITにつながる起業家企業)**の道の第一歩を歩み始めたことを印象づける2日間であった。
尚、2019年9月19日には、Blue Prism社初のアジア市場向け大規模ユーザーカンファレンスとして、**Blue Prism World Tokyo 2019**が東京で開催される。