はじめに
こんにちは、AppReviewチーム所属の@tegochanです。
関西から関東にきて、早いもので8年になりました!
郷に入っては郷に従えを踏襲し、入社後早々に関西弁は封印。
やわいたこ焼きも揚げたこ焼きも大好き!
お好み焼きは格子切りでもピザ切りでもおいしい!
御座候でも回転焼きでもわかればOK! などなどなど
メディアで関西人の代名詞として話題になるものはそこまでこだわりを主張せずどうにかなってきましたが、ついにどうにもならないワードが出てきました。
「めばちこ」です。
「めばちこ」は「めばちこ」なんですよ。
「ものもらい」ってそんなこうなんかシュッとした感じの名称じゃなくて、もっとこう目の上になんかいかんやつができた感じの、いかにも歓迎されてないかんじの、そんなアレなんです。
私のこだわりの「めばちこ」ですが、『「ものもらい」を「めばちこ」として教わった(この書き方自体も「ものもらい」が正式名称のようで私は非常にしっくりこないのですが・・・)』これも私の「アイデンティティ」の一つです。
さて、ここから本題に入りますが、タイトル名に記載しているように、弊社では今年「倫理表現ガイドライン」を制定いたしました。
倫理コンテンツを考える上で「アイデンティティ」は、特に重要なワードです。
一般名称としては「自己同一性・帰属意識」とよばれるものですが、個人の生育環境に依存し、発達の中で教育や経験に影響を受けながら、形成されるものであるとされています。
誰もがカテゴライズされて分類された何かに属しながらアイデンティティを形成していくと考えると、”勝手に決められた枠組みに押し込めないでくれよ…”、と思うときもありますが、同時に自身や他者を理解する上でそういったカテゴライズの枠組みを用いることで理解が進んだりすることもあります。「多様性・多様化」に対し、大なり小なりの矛盾をいろいろな部分で抱えながらも多種多様なアプローチで言語化がされていくテーマなのかなと思っています。
「倫理」については過去の記事で少し触れてまいりましたが、作成にあたりどう向き合ったのかを共有させていただければと思います。
作成の背景
倫理表現についての考え方
過去の倫理記事でも記載をしましたが、私は多様性に対しての配慮は「個々のアイデンティティを大切にする」と同義であり、他人も個人も尊重しながら生きていくうえで必要であると考えています。
しかしながら、法的なルールがある部分はそちらを遵守し、差別や偏見を助長しない表現を行うことは大前提の上で、「創作活動の中で使用したい表現をどう表現するか」という部分を考えていくことは放棄してはいけないと思っています。
全てにおいて規制を入れることはある意味簡単なことですが、表現の自由を失わないよう考えていくことは良き作品を作るうえで非常に大切なことだと考えます。
表現に関しては配慮が足りずにご指摘を頂いたり、お叱りを受けることもあると思います。逆に過剰な配慮で世界観が壊れたとご意見を頂戴することもあると思います。
それらを「炎上したから」問題があった、「炎上しなかった」から問題がなかったと判断するのでは本質ではありません。
倫理の問題は人類の成熟に紐づきながら、社会問題として業界問わず横断的にインプットとアウトプットを繰り返し行いながら取り組むべき課題になると考えています。
なぜガイドラインを制定したのか
上記考えを前提にした上でも事業を行う以上、やはり集客/売り上げなどを意識しなければなりません。ターゲット層を絞ることでよりそのターゲットに合致する表現に特化しがちです。
求められる配慮については、下記で対応が異なってきます。
上記のように配慮することが多岐にわたるため、この情報社会で一案件の担当者として、「必要な配慮」を自身で判断していくことは命綱のない綱渡りに等しいのではないか。
ある程度注意すべき事柄と、リスク度合いが見られる資料が必要なのではないか、そういった部分から生まれたのが倫理表現ガイドラインです。
作成のメリットとデメリット
もちろん、ガイドライン制定にもメリットとデメリットが存在します。
企業としても大切ですが、企業で働いている従業員も個々の「アイデンティティ」をもっています。
企業の判断軸と従業員の判断軸が異なることはあり得ることですが、ガイドラインで判断させるのは企業としてのもののみであり、良否や個人の判断軸を企業が定めてはいけないというところにも注意が必要です。
作成プロセス
情報収集
作成前には、現在の社内運用状況の把握及び過去事例の調査と協力会社の選定を行いました。
また、担当者自身のインプットとして直近の倫理に関連する用語をひたすらに調査しました。具体的にはダイバーシティ、SDGs、ポリティカルコネクトレス、多様性に関する法律、などなど…
作成
協力会社で国内・海外の調査内容をご共有いただき、社内ガイドラインとしての体裁を整えていきました。
求められる配慮については上記で既に記載していますが、それらを下記カテゴリのような例で分け、さらに日本と海外での共通/非共通を洗い出しました。
カテゴリ例:
- 未成年者に対する表現
- 人種差別に関する表現
- 信仰に関する表現(色、食事、音楽)
- 性的表現
- 暴力表現(虐待、武器、出血、欠損)
- 反社会的表現
- 歴史や文化的表現
- 意味を持つハンドサイン・シンボル・マーク・数字 など
どんなものがあり、どのような温度感があるのか、国内限定、特定の地域限定、特定の国限定等で傾向が分かれてきますが、国の成り立ち、歴史、周囲の環境、信仰等の地政学的な影響がしばしば見られました。
日本でリスクが高いと判断していても、日本以外ではリスクはそこまでないものもある。
また逆もしかりということでそれらの情報を見やすく分類し、あくまで地域に応じリリースの際に生じる可能性のあるレピュテーションリスクを高~低でどう考えるかを記載することにしました。
展開
社内ポータルへの掲載と、朝会にて500名前後の規模での発表を行いました。
外部においても、内部においても、倫理観点は非常にセンシティブな問題になりやすい部分ではあるため、資料において最も重要なことは、あくまで一つの判断指標に過ぎず、特定の個人や会社、環境、価値観、習慣、思想などを否定したり、それらの是非を論じるための資料ではないという点を合わせて伝えました。
振り返り
どんな点に苦労したか?
私自身が担当者として実務を経験していたこともあり、資料として特に現場で判断をせざるを得ない立場の担当者が、どういったことを求めているのか、何があれば安心材料となるのか頭を悩ませました。
判断しやすいよう詳細を記載すると企業として善悪を判断するような縛りが強いものになってしまい、逆に判断を行わないと指標にならない全く使えない形骸化する資料となってしまいます。
また、本人が中立の判断をしているつもりでも、自身の所属するアイデンティティに引っ張られていないか、個人的な主義主張が入っていないか、逆側の主義主張に気を使って判断が甘くなっていないか等の確認を常に行いつつ進行しました。
全体として、忖度のないものにまとめたつもりではありますが、この辺りは作成者によっても変わりますし、社会の時流に応じて常にアップデートをしていく部分と考えています。
作成してよかった点
社内の反応としては知らなかった知見が強化されたという反応をいただきましたが、同時にOK/NGが容易に判断できるものではないため、運用がなかなか難しいといったご意見も頂戴しました。
社員の多くが一律倫理面について考える機会を持てたことに意味があったと考えており、一次相談先として自チームの認知向上につながったことはよかったと思いました。
今後に向けて
ガイドラインについては資料として存在することではなく、社内に浸透することに意味があるため、継続して啓発活動を行う必要があります。朝会等で啓発等を行いましたが、定期的に発信する機会を設けたいと考えています。
また、判断軸は社会情勢に伴って日々進化していくもののため、ほぼ”水物”と考えています。運用に合わせて常にアップデートを行っていく必要があり、日々の業務とは別に意識を向けて情報収集と資料の刷新を行っていく必要があり、それらをどうやって行っていくかを今後の課題としたいと思っています。
読んでくださり、ありがとうございました。