はじめに
2026年9月に行われた、Googleの「Build with Gemini」で、Google Antigravityを使ったAI Agentについて学びました。
私が参加したのは、Day2(9/4)の Track 1 - Platform Builders のハンズオンになります。このトラックでは、Referenceを確認しながら、M0、M1、M2、M3、M5の各ステップを順番に進めていきます。M0でAgentの状態を確認するところから始まり、M1以降で、Agent Runtimeへの展開、Agent Registryを使ったAgentの配置・管理、Agent IdentityによるAgentごとの識別、Agent Gatewayによるアクセス制御、Model Armorを使ったプロンプト防御やコンテンツ検査、監査ログやCloud Traceを使った可観測性、Agentの動作やコンテンツを評価する仕組みまで扱います。
この記事では具体的な手順や教材の内容ではなく、実際にAntigravityを使ってみて分かったことを整理します。あわせて、Antigravity CLIを使うと、実際にどのような操作になるのかも紹介します。
1. Antigravityとは
Antigravityは、Googleが提供するAI Agent向けの開発環境です。
現在のAntigravityには、Visualな環境でAgentを操作するAntigravity 2.0やIDEに加えて、Terminalから利用できるAntigravity CLIがあります。
特にCLIを触ってみると、Antigravityが単なるチャット型のAIコーディングツールではないことが分かります。
例えば、Terminalでプロジェクト用のディレクトリを作り、そこから agy を起動します。
mkdir agy-demo
cd agy-demo
agy
これでAntigravity CLIのTUIが起動します。
ここからAgentに、例えば次のように入力します。
Write a simple python script to fetch web page text
Agentは現在のWorkspaceを確認し、必要なファイルを作成するための計画を立て、Pythonファイルを生成します。
さらに、
Run the python script and show me the output
と指示すると、Agentは必要なTerminalコマンドを判断して実行し、結果を確認できます。
この流れを見ると、
指示 → ファイル作成 → コマンド実行 → 結果確認
という一連の作業をAgentに任せられることが分かります。
単にコードを生成するだけではなく、コードを作り、実行し、結果を確認するところまでAgentが扱えることがポイントです。
2. 「AIにコードを書かせる」と何が違うのか
これまでのAIコーディングでは、開発者が「この関数を書いて」「このエラーを直して」とAIに依頼し、生成されたコードを確認するという使い方が一般的でした。
Antigravityでは、もう少し大きな単位で仕事を依頼できます。
例えば、
Create a small Python application that reads a CSV file,
calculates the average value of each column,
and outputs the result as a Markdown report.
という指示をした場合、Agentは必要なファイルを調べ、コードを作成し、必要なコマンドを実行し、結果を確認しながら作業できます。
開発者が毎回、
「このファイルを作って」
「このコマンドを実行して」
「結果を確認して」
「ここを修正して」
と一つずつ指示する必要がなくなります。
「何を作るのか」という目的を伝え、そのための作業をAgentに任せる。この違いが大きいと感じました。
3. Antigravity CLIでは何を入力するのか
Antigravity CLIは、通常のShellコマンドを実行するだけのCLIではありません。
agy を起動すると、Terminal上にAgentとの対話画面が表示されます。
例えば、
agy
と起動したあと、
Analyze this project and explain how the main components are connected.
と入力すれば、AgentがWorkspace内のファイルを調べて、プロジェクトの構成を説明してくれます。
さらに、
Find the cause of the failing tests and fix the problem.
と指示すれば、Agentはコードやテストを調べ、原因を探し、修正を行い、必要に応じてテストを実行します。
もちろん、AgentがTerminalコマンドを実行するときには、設定に応じて確認を求めることがあります。
この「調べる→考える→変更する→実行する」という部分までAgent側が担当するのが、従来のコード生成とは大きく違うところです。
4. / から使えるAgentの操作
Antigravity CLIでは、プロンプト欄で / を入力すると、Agent用のコマンドを選択できます。
例えば、
/plan
を使うと、コードを変更する前に実装計画を作成できます。
また、
/agents
ではAgentやバックグラウンドで動作するSubagentを確認できます。
ほかにも、
/skills
で利用可能なSkillsを確認したり、
/mcp
でMCP関連の設定を確認したりできます。
複雑な作業では、
/goal
を使って、指定したゴールに向けてAgentに自律的に作業させることもできます。
このように、Antigravity CLIでは「自然言語で仕事を依頼する」だけでなく、Agentの動き方をコマンドで切り替えることもできます。
5. 通常のShellコマンドも実行できる
Agentとの会話中に、実際のTerminalコマンドを直接実行したい場合は、! を使います。
例えば、
!git status
と入力すると、Agentへの依頼ではなく、Terminalコマンドとして git status を実行できます。
これは、
git statusを実行して結果を教えて
とAgentに依頼する場合との違いが分かりやすいところです。
! は自分でコマンドを直接実行するためのもの、通常の入力はAgentに仕事を依頼するためのもの、と考えると理解しやすいと思います。
6. CLIからAgentをスクリプトとして使う
Antigravity CLIには、対話形式だけでなくHeadless Modeもあります。
例えば、
agy -p "Summarize the design tradeoffs of optimistic locking."
のように -p を指定すると、Agentに一度だけ指示を送り、結果を取得できます。
この方式を使えば、Shell ScriptやCI/CDの処理からAgentを呼び出すこともできます。
例えば、
result=$(agy -p "Review the latest changes and summarize potential risks." --output-format json)
echo "$result"
のように、Agentの結果を別の処理につなげることもできます。
ここまで来ると、Antigravityは「AIと会話するためのCLI」というより、Agentを開発作業の中に組み込むためのCLIとして見えてきます。
7. SkillsでAgentの仕事の進め方を定義する
Skillsには、特定の仕事を行うための手順、判断基準、ベストプラクティスなどを定義できます。基本となる情報は SKILL.md に記述します。
例えば、作業を始める前に何を確認するか、どの順番で処理するか、どのルールに従うか、どのような結果を出すか、といった内容をSkillとしてまとめられます。
今回のハンズオンでも、あらかじめSkillsが用意されており、Agentが決められた進め方に沿って作業できるようになっていました。
AIには、同じ指示でも毎回まったく同じ結果になるとは限らないという性質があります。Skillsを使って仕事の進め方や判断基準を与えることで、Agentの自由な判断を残しながら、作業のばらつきを抑えることができます。
毎回プロンプトに細かな手順を書くのではなく、繰り返し使う仕事の進め方をSkillとして切り出しておく。この考え方は、Agentを実際に使ってみると分かりやすい部分でした。
8. プロンプトより、Agentが仕事をできる環境が重要になる
今回のハンズオンを通して、Agentに仕事をさせるときはプロンプトだけでなく、周囲の環境を考える必要があると感じました。
Agentが何を知っているのか、どんなSkillsを使えるのか、どんなToolsを使えるのか、どのファイルにアクセスできるのか、どのコマンドを実行できるのか。さらに、外部サービスへの接続や権限、結果の検証方法も関係します。
Skillsは、その中でもAgentの仕事の進め方を決める重要な要素です。
AI Agentに必要なのは、長いプロンプトではなく、Agentが仕事をできる「世界」を作ること。
今回のハンズオンでは、この考え方を実際の作業を通して理解できました。
9. Agentの自律性と権限
Agentがファイルを読み書きし、Terminalでコマンドを実行し、Browserを操作できるようになると、権限の設計も重要になります。
Antigravityでは、Terminalコマンドの自動実行について、Request Review、Proceed in Sandbox、Always Proceedといった設定があります。
また、AgentがProjectの外にあるファイルへアクセスする場合についても制御できます。
例えば、Agentに自由にShellコマンドを実行させるのか、毎回確認するのか、Sandbox内で実行させるのかによって、安全性と自動化の度合いが変わります。
Agentに多くの操作を任せれば、開発者の作業は減ります。一方で、必要以上の権限を与えると、意図しない操作につながる可能性があります。
Agentに何を許可するのかを、作業内容に合わせて決めることが重要と思いました。
10. BrowserとTerminalを使った開発
Antigravityでは、AgentがコードだけでなくTerminalやBrowserも利用できます。
例えば、
コードを修正 → アプリを起動 → Browserで確認 → 問題を発見 → コードを修正 → 再確認
という作業をAgentに進めさせることができます。
従来なら、開発者がコードを書き、実行し、ブラウザを開き、結果を確認してからAIに修正を依頼するという作業を繰り返していました。
Agentが複数のToolsを扱えることで、こうした作業を一つの流れとして任せられるようになります。
11. Agentには検証が必要
Agentがそれらしい結果を返しても、それだけで作業が完了したとは限りません。
Agentは目的を理解し、計画し、実行できますが、結果が本当に正しいかは別に確認する必要があります。
そのため、
目的 → 計画 → 実行 → 検証
という流れが重要になります。
Antigravityでは、Agentが作成したArtifactやコード差分を確認できます。Agentに作業を任せるだけでなく、どのような変更を行ったのか、テスト結果はどうだったのかを確認することが大切です。
Agentに任せる範囲が広くなるほど、検証の仕組みも重要になります。
12. Antigravityを触って感じたこと
今回のBuild with GeminiでAntigravityを触ってみて、一番大きかったのは、「AIにコードを書いてもらう」から「AI Agentに仕事を任せる」への変化を実際に体験できたことです。
CLIで agy を起動して自然言語で作業を依頼し、Agentがファイルを調べ、コードを変更し、Terminalコマンドを実行する。
必要であれば /plan で計画を作り、/skills でSkillsを確認し、/agents でAgentやSubagentの状態を確認する。
さらにHeadless Modeを使えば、agy -p でAgentをShell ScriptやCI/CDから呼び出すこともできます。
こうして見ると、Antigravityは Agentを中心に、開発環境そのものをAIが操作する仕組みになっています。そのため、開発者に求められることも変わっていくと感じました。
これからは、実装方法を細かく指示するだけでなく、何を実現したいのか、どこまでAgentに任せるのか、何を参照させるのか、どんなSkillsやToolsを与えるのか、どんな権限を与えるのか、どうやって結果を検証するのか、といった設計も重要になります。
13. まとめ
Build with Gemini を通して、AntigravityはAI Agentに開発作業を任せるための環境だと感じました。AIの使い方も、「AIにコードを書かせる」から「AI Agentに仕事を任せる」方向へ変わっていくのだと思います。その変化を実際に体験する良い機会になりました。
今後はさらに、「人間がAgentを使う」から「AgentがAgentを使う」世界へ進んでいくのかもしれません。
参考
- Google Antigravity
https://www.antigravity.google/
#BuidWithGemini