はじめに
Red Hatというと、やはり、「オープンソース」や「Linux」といったイメージがあるかと思います。
まさにその通りではありますが、色々とAI関連もここ何年かで力をいれてきてますが、
あまり知られていないことが多いのと、製品名が似ていて(RHEL AI? RHEL Lightspeed?)どれで何ができるのかわからない方(私も含め笑)も多いかと思います。
ですので、改めてどいった製品群があるかを認識しておきたく、簡単にまとめてみたいと思います。
結論:この3つに分けるとわかりやすい
大きくわけて、下記の3つがカテゴリです。
- AIを作る・動かす基盤(AIをガッツリ開発および運用する場所)
- Red Hat製品のAIアシスタント機能(Red Hat製品の運用を楽にしてくれる機能)
- 手元のツール(PCで試せる実験道具)・その他
各カテゴリと各製品の説明概要
1. AIを作る・動かす基盤(AIをガッツリ開発および運用する場所)
ここの部分がAIといった観点で、Red Hatが最も力を入れているカテゴリとなります。
この製品群の総称として、呼ばれているのが「Red Hat AI」です。
Red Hat AIとしては、「Any Model, Any Accelerator, Any Cloud」といった方向性が3つの製品が含まれています。
①Red Hat AI Inference Server(RHAIIS)
概要:
一言で言うと、「爆速でAIを動かすための高性能エンジン」です。
AIモデル(特にLLM)を動かす「推論(Inference)」に特化したソフトウェアです。オープンソースでデファクトスタンダードになりつつある vLLM をベースに、Red Hatが買収したNeural Magic社の技術(モデル圧縮・高速化)を統合しています。
主な特徴:
・圧倒的な軽さと速さ: モデルを圧縮(量子化)して、少ないGPUメモリで高速に動作させることができます。
・どこでも動く: NVIDIAのGPUだけでなく、AMDやその他のAIアクセラレータ、あるいはCPUだけでも高速に動くように最適化されています。また、②RHEL AIおよび③RHOAI上で動かすこともできますし、
・Docker感覚で使える: コンテナイメージとして提供されるため、これをポンと動かせばすぐにAIのAPIサーバーが立ち上がります。
②Red Hat Enterprise Linux AI(RHEL AI)
概要:
一言で言うと、「カスタマイズ学習ができるAI専用Linuxサーバー」です。
Linux OS (RHEL) に、上記の推論エンジン(RHAIIS)と、モデルを賢くするための学習ツール(InstructLab)をセットにした製品です。「AIのための開発キット一式」が入ったLinuxと考えると分かりやすいです。
主な特徴:
・InstructLab (インストラクトラボ): IBMのGraniteモデルなどに、自社の知識(ドキュメントやスキル)を簡単に追加学習させることができます。
・サーバー1台でOK: 大掛かりなクラスターを組まなくても、1台のサーバー上でモデルの微調整から実行まで完結できます。ですので、大規模な基盤はいらないけど、自社専用のLLMを作って動かしたいといったお客様がターゲットになります。
③Red Hat OpenShift AI(RHOAI)
概要:
一言で言うと、「チームで開発・運用するためのAI全自動工場」です。
Kubernetes (OpenShift) 上で動作する、最も高機能なAIプラットフォームです。RHEL AIの機能(学習や推論)はもちろん、多数のモデル管理、パイプライン処理、監視、セキュリティなど、運用に必要なすべてが含まれる統合MLOps用のプラットフォームです。
主な特徴:
・MLOpsの実現: データ準備、学習、デプロイ、監視というサイクルを自動化できます。
・スケーラビリティ: コンテナ基盤なので、アクセスが増えたら自動で推論サーバー(RHAIIS)を増やして負荷分散する、といったことが可能です。
・Jupyter環境: データサイエンティストが実験するためのNotebook環境が標準装備されています。
ちなみに、、、、
Red Hat AI 3.0がリリースされ、2025年12月4日には、そのLaunch Partyが開催されました。
開発機能の強化(Model Catalogや、MCPサーバーの一元管理、Playground)や推論機能の強化(分散推論を助けるllm-d)がされてますので、是非今後も注目です。
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2068363.html
2. Red Hat製品のAIアシスタント機能(Red Hat製品の運用を楽にしてくれる機能)
こちらについては、1のRed Hat AI製品群とは異なり、単体で販売している製品ではなく、
製品の中の付加価値の機能として販売、もしくは、製品の中に含まれている機能となります。
製品は異なりますが、「Lightspeedシリーズ」と呼ばれています。
①Red Hat Ansible Lightspeed with IBM watsonx Code Assistant
概要:
一言で言うと、「やりたいことを書けば、コード(Playbook)が出てくる自動化の相棒」
IT自動化ツール「Ansible」のコード開発を支援するサービスです。VS Codeの拡張機能として提供され、自然言語で指示を出すと、AIが適切なタスク(YAMLコード)を提案してくれます。バックエンドにはIBMのAI基盤「watsonx」が使われています。
主な特徴:
・Text-to-Code生成: 「Apacheをインストールして起動する」と入力すると、Ansibleのタスクコードを自動生成します。
・コードの説明機能: 既存のPlaybookが何をしているか、AIが解説してくれます(他人が書いたコードを読む時に便利)。
・信頼性の高さ: 一般的なLLMとは異なり、高品質なAnsible Galaxyのデータで専門的に学習されているため、Ansibleのベストプラクティスに沿ったコードが出やすいです。
②Red Hat OpenShift Lightspeed
概要:
一言で言うと、「トラブルが起きたとき、ログを読んで原因を教えてくれる先輩エンジニア」です。
Kubernetes/OpenShiftの管理コンソールに統合されたチャットボット型のAIアシスタントです。管理者が「なぜこのPodが動かないの?」「クラスターの状態はどう?」と質問すると、システムの状態を分析して回答してくれます。Kubernetes/Openshiftの運用は大変と思われている方々も多いかと思いますが、これによって、運用のハードルが下がることを期待してます。
主な特徴:
・コンテキスト認識: 一般論ではなく、「今動いているそのクラスターのログや設定」を見にいって回答します。
・トラブルシューティング支援: エラーメッセージを貼り付けなくても、AIがアラートやイベントログを分析し、「メモリ不足の可能性があります」といった診断と対処法を提案します。
・GUI操作のナビゲート: 「オートスケーリングの設定はどこ?」と聞くと、適切な設定画面へのリンクを提示してくれます。
③Red Hat Enterprise Linux (RHEL) Lightspeed
概要:
一言で言うと、「コマンドやパラメータをド忘れしても大丈夫なLinux辞書」です。
Linux OSの管理や運用を助けるAIアシスタントです。コマンドライン操作に不慣れな初心者や、細かいオプションを忘れてしまったベテラン管理者のために、適切なコマンドや解決策を提示します。(※他の2つに比べて新しく、順次機能が実装されている段階です)
主な特徴:
・コマンド生成: 「特定のポートを開放したい」などの要望に対し、firewall-cmdなどの具体的なコマンド列を提示します。
・Red Hatナレッジベースとの連携: エラーが発生した際、Red Hatが持つ膨大なサポートナレッジ(KCS)の中から、関連する解決策を要約して教えてくれます。
・定型作業の効率化: システムのアップデートやログ確認など、日常的な管理業務の負担を減らします。
3. 手元のツール(PCで試せる実験道具)・アプリモダナイぜーションツール
こちらは、2つを紹介したいと思いますが、それぞれ全く異なるものです。
①Podman AI lab
概要:
一言で言うと、「PCの中にある、自分専用のAI実験室」です。
コンテナ管理ツール「Podman Desktop」に追加できる拡張機能(レシピ)です。高価なクラウド環境やGPUサーバーを用意することなく、手持ちのノートPC(ローカル環境)だけでLLMをダウンロードし、チャットやアプリケーションへの組み込みを試すことができます。
主な特徴:
・直感的なモデル管理: LlamaやGranite、Mistralなどの人気オープンソースモデルを、カタログから選んでクリックするだけでダウンロード・起動できます。
・プレイグラウンド機能: 起動したモデルに対して、その場ですぐにチャット(プロンプト入力)ができ、回答精度や挙動のテストが可能です。
・ローカルAPIサーバー: 起動したLLMを標準的なREST APIとして公開できます。これにより、自作のアプリケーションからローカル上のAIを簡単に呼び出して開発・テストを行えます。
②Konveyor AI
概要:
一言で言うと、「古いJavaコードをAIが自動でリフォームしてくれる移行のプロ」です。
既存のアプリケーションをKubernetesやOpenShiftなどの最新環境へ移行(モダナイズ)する際、障壁となる「古いコードの修正」を支援するツールです。移行ツール(MTA: Migration Toolkit for Applications)の一部として機能し、静的解析で見つかった問題点に対し、生成AIが具体的な「修正後のコード案」を提示してくれます。
主な特徴:
・修正Javaコードの自動提案: 「IPアドレスがハードコードされている」「廃止されたJavaライブラリを使っている」といった移行の障害となる箇所に対し、AIが修正コードを生成して提案します。
・移行スピードの向上: 開発者がマニュアルを調べて手作業で書き換える時間を大幅に短縮し、移行プロジェクト全体の工数を削減します。
・IDEとの統合: VS Codeなどの開発エディタ上で動作するため、開発者は普段のコーディング作業の流れの中で、AIからの修正提案を受け入れ(Apply)たり、調整したりできます。
まとめ
ということで、文字ばかりで恐縮ですが、Red HatのAI関連製品をまとめてみました。
2025年12月時点で、Red Hatがこういった製品や機能を持っているということの概要はお伝えできたと思います。
今後、上記の製品・機能に限らずですが、お伝えしたいですし、事例についても書いて行こうと思います。