※以下の企画です
今回は、人間の共通的な心理メカニズムから一歩進んで、「個人特性(パーソナリティ)」の話に入ります。
それでは頑張ります〜
消費者の個人特性
レビンの行動法則 (Lewin, 1935)
まず、個人の行動が何によって決まるのかを示す数式が紹介されていました。
クルト・レヴィンが提唱した以下の式です。
$$B = f(P, E)$$
- B (Behavior):行動
- P (Person):個人特性(性格、価値観、属性など)
- E (Environment):環境(状況、社会的圧力、物理的環境など)
つまり、行動(B)とは、個人(P)と環境(E)の関数であるという定義です。
-
Output(行動) は、 -
Instanceのプロパティ (個人特性) と、 -
Runtime Environmentの環境変数 (環境) - の相互作用によって決まる。
「あの人はこういう性格だからこれを買うはずだ」と $P$ だけを見ても、$E$(たまたま金欠、周りに人がいて恥ずかしい等)が変数として組み込まれるため、行動の予測は単純ではないということです。
パーソナリティとは何か
では、この変数 $P$ (パーソナリティ)とは具体的に何なのでしょうか。
G.W.オルポート(Allport, 1943)による定義は以下のようになっています。
「個人のうちに実在して、その個人に特徴的な行動や思考を決定する心理物理的体系の力学的体制」
ちょっと何言ってるか分からない感じがすごいですが、要約すると 「環境への適応の仕方を決める、その人独自のシステム構成」 といったところでしょうか。
常に変化しうる動的なもの(Dynamic)であるという点がポイントのようです。
パーソナリティの分類アプローチ
このつかみどころのない「性格」をどうやってデータ化・分類するかについて、大きく2つのアプローチがあります。
類型論 (Typology)
人間をいくつかの「タイプ(型)」に分類する方法です。
「血液型占い」や「MBTI」などがこれに近いイメージです。
書籍では リースマン(Riesman, 1950) の研究が挙げられていました。彼は社会的な指向性で人間を分類しました。
- 伝統指向型:昔からのしきたりに従う
- 内部指向型:自分の信念に従う
- 他人指向型:他人の顔色や流行に従う
マーケティング的には「他人指向型」の人には流行をアピールすれば売れそうですが、「内部指向型」には逆効果かもしれません。わかりやすい反面、 「人間はそんな単純にラベリングできない(中間層がいる)」 というのがデメリットです。
特性論 (Trait Theory)
こちらは、性格をいくつかの「構成要素(パラメータ)」の集合体として捉える方法です。
エドワース(Edwards, 1954) などが有名です。
「社交性が高い/低い」「神経質さが高い/低い」といったように、複数のパラメータの数値をレーダーチャートのように表してその人を理解しようとします。
RPGのステータス画面(STR: 50, INT: 20...)みたいなものですね。
個人の差を量的に測定できるため、科学的な分析にはこちらの方が向いていそうです。
パーソナリティ研究の限界
ここまで書いておいてなんですが、実は 「パーソナリティだけで消費者行動を予測するには限界がある」 といった感じの内容も書かれていました。
最初のレビンの式 $B = f(P, E)$ に戻ると、あまりにも $E$ (環境・文脈)の影響が大きすぎるからです。
どんなに「慎重な性格(特性)」の人でも、「タイムセールで残り1分(環境)」という状況下では衝動買いをしてしまうかもしれません。
結局のところ、ユーザーの静的なプロファイル(性別、年齢、性格)だけを見ていてもダメで、「今、そのユーザーがどういう状況(Context)にいるか」 を掛け合わせないと、正しいレコメンドはできないということですね。
まとめ
今回は「個人特性(パーソナリティ)」についてまとめました。
- 行動は個人と環境の関数である ($B = f(P, E)$)
- 人を理解するには「タイプ分け(類型論)」と「パラメータ計測(特性論)」がある
- 個人の性格だけ分析しても、環境要因が強ければ行動は変わる
データ分析をしているとつい「ユーザー属性(P)」ばかりを分析してクラスタリングしたくなりますが、「利用シーン(E)」という変数を忘れてはいけないという戒めになりました。
それでは、また明日!