※以下の企画です
今回は、書籍の中で少しだけ触れられていた「グルーグマンの効用関数」について、自分で調べてみた内容をまとめてみます。これめちゃくちゃ面白い関数です。
それでは頑張ります〜
なぜ興味を持ったのか
- シンプルな数式なのに、消費者の購買意欲を表せていて見事だと思った
- 応用がかなり効きそうだった
本当にこれだけです。
※ちなみに今読んでいる本の中ではここまで細かくは(今のところ)記述されていないです
効用関数
登場した論文
効用関数が登場した論文は、「Increasing returns, monopolistic competition, and international trade(1979)」みたいです。
この論文は「なぜ先進国同士(似たような国同士)で貿易が行われるのか?」という、それまでの経済学の常識では説明できなかった謎を解き明かし、クルーグマンが後にノーベル経済学賞を受賞するきっかけとなった非常に有名な研究らしいです。
この論文の「何が革命的だったのか」?
これまでの経済学では、貿易は「各国の違い」があるから起こると考えられていました 。
- 従来の常識: 「日本は技術があるから車を出し、オーストラリアは資源があるから石炭を出す」というように、違うものを持っている国同士が交換することで得をする
- 現実の謎: しかし、戦後の世界を見ると、アメリカとドイツのように「似たような技術・似たような豊かさ」を持つ国同士が、お互いに工業製品(車と車など)を売り買いしている
この「なぜ、似たもの同士がわざわざ貿易するの?」という疑問に対し、クルーグマンは「規模の経済(たくさん作ると安くなる)」と「多様性への愛(いろんな種類が欲しい)」という2つのキーワードで説明をしました。
このときに使用されていたのが、効用関数です。
※効用関数自体は、ディキシットとスティグリッツ(Dixit and Stiglitz, 1977)のものを応用したものみたいです。
数式と活用例
効用関数 (Utility Function)(自分でまとめたものなので、論文内の式とは形式がやや異なります)
すべての消費者は対称的な選好を持つと仮定します。
$$
U = (\sum_{i=1}^{n} c_i^{ρ})^{1/ρ}
$$
- $U$ : 効用(満足度的な)
- $C_{i}$ : $i$番目の種類の財の消費量
- $n$ : 利用可能な財の種類の総数
- $ρ$ : パラメータ($0<ρ<1$)。財同士の代替のしやすさ
この式は「同じ予算なら、同じものを何度も購入するよりも多くの種類を買うほうが効用は高まる」ということを表します。
$ρ$が高い(1に近い)ほど、**財同士は「ほぼ同じ(代替可能)」**とみなされます。
逆に、$ρ$が低いほど、**違う種類のものを持っていることの価値(満足度)**が上がります。
つまり、この数式は「人間は飽きっぽいから、同じものばかり大量にあるより、少しずつ違うものが沢山ある方が嬉しいよね」という直感を記述しているわけです。
本当に「バラエティ豊か」な方がお得?
数式だけだとピンと来ないので、具体的な数字を入れて検証してみます。
設定
- パラメータ $ρ = 0.5$ とします(計算しやすい数値を適当に設定)
- 予算で買える合計個数は「4個」
パターンA:一点集中型
「俺はアンパンだけあればいい!」と、1種類($c_1$)だけを4個買った場合。
$$
U = (4^{0.5})^{1/0.5} = (\sqrt{4})^2 = 4
$$
効用は「4」です。
パターンB:バラエティ型
「アンパン、カレーパン、メロンパン、チョコパンを1個ずつ食べたい」と、4種類($c_1, c_2, c_3, c_4$)を1個ずつ買った場合。
$$
U = (1^{0.5} + 1^{0.5} + 1^{0.5} + 1^{0.5})^{1/0.5}
$$
$$
U = (1 + 1 + 1 + 1)^2 = 4^2 = 16
$$
効用は「16」になります。
結果
合計数は同じ4個なのに、種類を分散させたほうが効用(満足度)が4倍も高くなりました!
これが、クルーグマンがモデルに組み込んだ「消費者の多様性選好」というものです。面白い。
まとめ
「クルーグマンの効用関数(CES型効用関数)」について調べてみたら、数式自体はシンプルながら、「人間の欲張りな心理(いろいろ欲しい)」と「企業の都合(たくさん作りたい)」を見事にリンクさせるための重要なパーツであることがわかりました。
「数式」と聞くと身構えてしまいますが、こうして具体的な意味を紐解くと、現実世界の「なんで?」を説明するための強力なツールなんだなと改めて実感しました。
めちゃくちゃ簡単な数式で表せているという点が特に素敵です。
ではまた明日〜