※以下の企画です
今回は前回の記事で少し触れた「フレーミング効果」を深ぼってみます。
これ、知れば知るほど「人間、チョロすぎないか...?」と怖くなってくる話でした。
それでは頑張ります〜
フレーミング効果
フレーミング効果おさらい
前回の記事で少し触れましたが、改めて定義しておきます。
フレーミング効果とは、「実質的に同じ内容であっても、表現方法(フレーム)が異なると、受け手の印象や意思決定が変わってしまう現象」 のことです。
情報工学的に言えば、「入力データ(Value)が同じでも、データ形式(Format)が違うだけで処理結果(Output)が変わるバグ」 みたいなものだと考えています。
人間という処理系、やっぱり例外処理が甘いですね。
有名な具体例:属性フレーミング
一番わかりやすいのが「属性フレーミング」と呼ばれるものです。
ある対象の「ポジティブな側面」を強調するか、「ネガティブな側面」を強調するかで評価が変わります。
- A:赤身75%のひき肉
- B:脂身25%のひき肉
これ、中身は全く同じ物体です。でも、多くの人は「A(赤身75%)」の方を「健康的」「品質が良い」と評価し、購買意欲が高まるそうです。
「生存率95%の手術」と「死亡率5%の手術」もこれですね。
人間の脳は直感で判断するときに、提示された情報の「ポジティブ/ネガティブ」のラベルに強く引きずられるようです。
アジアの病気問題(Asian Disease Problem)
フレーミング効果を説明する上で最も有名な実験が、トベルスキーとカーネマン(1981)による「アジアの病気問題」です。
これがプロスペクト理論(損失回避)と密接に関わってきます。
【設定】
ある病気が流行し、このままだと600人が亡くなると予想されています。対策として2つのプランがあります。
パターン1:利得のフレーム(助かることに注目)
- プランA:200人が確実に助かる
- プランB:$\frac{1}{3}$の確率で600人が助かり、$\frac{2}{3}$の確率で誰も助からない
この場合、多くの人(72%)が 「確実そうなプランA」 を選びます。
「せっかく助かる命をギャンブルに晒したくない」というリスク回避的な判断です。
パターン2:損失のフレーム(亡くなることに注目)
- プランC:400人が確実に亡くなる
- プランD:$\frac{1}{3}$の確率で誰も亡くならず、$\frac{2}{3}$の確率で600人が亡くなる
この場合、なんと多くの人(78%)が 「ギャンブルであるプランD」 を選びます。
「確実に400人死ぬ」という確定した損失を嫌がり、イチかバチかに賭けるリスク志向的な判断に切り替わるのです。
冷静に計算してみる
ここで期待値を計算してみます。
- プランA(助かる人数):$200$人
- プランB(助かる期待値):$600 \times \frac{1}{3} = 200$人
- プランC(亡くなる人数):$400$人 $\rightarrow$ (助かるのは $600-400=200$人)
- プランD(亡くなる期待値):$600 \times \frac{2}{3} = 400$人 $\rightarrow$ (助かるのは $200$人)
全部一緒じゃん。
論理的には「プランA=プランC」「プランB=プランD」なのですが、「助かる(Gain)」という言葉で飾られると保守的になり、「亡くなる(Loss)」という言葉で飾られるとギャンブラーになる。
これが人間です。
まとめ
今回は「フレーミング効果」について深掘りしました。
- 同じ期待値でも「ポジティブ表現」か「ネガティブ表現」かで判断が逆転する。
- 人間は「利益」の前では臆病になり、「損失」の前ではギャンブラーになる。
合理的であるはずの「数字」ですら、それを包む「言葉」によって意味が変わってしまう。
開発者としては、ユーザーに選択を迫る画面(エラーメッセージや課金ページなど)を作るときに、「これは利得フレームか?損失フレームか?」 を意識するだけで、UIの説得力が変わりそうだなと思いました。
それではまた明日!