※以下の企画です
今回は「情報の伝播と消費者行動」、いわゆる口コミ(Word of Mouth: WOM) についての内容です。
それでは頑張ります〜
口コミの影響力
最強の情報源(Walker, 1995)
ウォーカー(Walker)の研究によると、消費者が製品評価をする際、口コミは広告などの商業的情報源よりも遥かに強い影響力を持つとされています。
「公式サイトのドキュメント(広告)」よりも「Stack OverflowやQiitaの記事(口コミ)」の方が、実実装においては頼りになったりすることがありますが、近い感覚かもしれません。
公式は「できること(仕様)」しか書きませんが、ユーザーは「つらかったこと(バグ・ハマりどころ)」を含めて共有してくれるからだと思われます。
口コミを利用する動機(受信側)
リスク削減と知識不足(Engel, Blackwell, Miniard, 2006)
エンゲルらは、口コミを受信する主な動機として 「知識を持っていない(Lack of Knowledge)」 ことを挙げています。
以前の記事で書いた「知覚リスク(失敗したくない心理)」が高いとき、人は自分の知識不足を補うために、経験者のログ(口コミ)を参照しようとします。
これは、未経験のライブラリを選定するときに、GithubのStar数やIssueの荒れ具合を確認しに行く行動に近いかなと思います。
検索は「目的」を持って行われる(宮田・池田, 2008)
宮田・池田の研究によると、口コミサイトを訪れる人の約60%は、明確な目的を持っているそうです。
暇つぶしにAmazonのレビューを眺める人は少なく、多くのユーザーは「この製品のここが知りたい(Query)」という明確な検索意図を持ってアクセスしてきます。
つまり、口コミサイトのUI/UXは、ただ漫然とレビューを流すのではなく、ユーザーの「解決したい問い(例えば耐久性やサイズ感など)」に対して、インデックスが貼られている状態が望ましいと言えそうです。
口コミを発信する動機(送信側)
一方で、書く側(発信側)には何のメリットがあるのでしょうか?
アフィリエイトなどの金銭的報酬がない場合、なぜ人はわざわざ時間を割いてレビューを書くのか。
コンサマトリーなコミュニケーション(池田, 2000)
池田(2000)は、コミュニケーションを以下の2つに分類しました。
-
道具的(Instrumental)コミュニケーション
- 何かを達成するための手段としての会話。業務連絡や交渉など。
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自己完結的(Consummatory)コミュニケーション
- 話すこと自体が目的である会話。雑談、感情の共有など。
口コミの発信は、多くの場合は後者の 「コンサマトリーな動機」 によるとされています。
「こんなすごい体験をした!」「こんな酷い目にあった!」という感情を吐き出し、誰かと共有すること自体が報酬(快感)になっているわけです。
Qiitaで技術記事を書くのも、「誰かの役に立ちたい(道具的)」という側面もありつつ、「俺はこれを実装したぞ!見てくれ!(自己完結的)」という自己表現の側面も強いので、納得感があります。
※コンサマトリー(Consummatory) とは、社会学の概念で、「それ自体が目的」「自己充足的」という意味を持ち、「結果ではなくプロセスそのものを楽しむ」「今この瞬間を大切にする」価値観や行動を指します。(gemini訳)
まとめ
今回は「情報の伝播(口コミ)」についてまとめました。
- 公式ドキュメント(広告)よりユーザーログ(口コミ)の方が信頼される
- 読む側は「リスク回避」のために「目的」を持って検索している(エラーログ調査)
- 書く側は「書くこと自体(発散)」を目的にしていることが多い(自己表現)
マーケティングにおいて「UGC(User Generated Content)を増やそう」とよく言われますが、ユーザーに書かせるためには「書くこと自体の楽しさ(コンサマトリーな要素)」を刺激する設計が必要なんだなと再認識しました。
それでは、また明日!