※以下の企画です
今回は、個人の内面(性格や価値観)から離れて、外側の世界である「状況要因(環境)」についての内容です。
それでは頑張ります〜
状況要因と消費者行動
消費者行動を理解するための基本式として、以前クルト・レヴィンの以下の式を紹介しました。
$$B = f(P, E)$$
- $B$ (Behavior):行動
- $P$ (Person):個人
- $E$ (Environment):環境
これまでは $P$(個人の性格、記憶、態度)について掘り下げてきましたが、今回はもう一つの変数である $E$(環境・状況) に焦点を当てた内容でした。
正直一番ここが難しいよなぁと思いつつ読んでいました。
状況要因の構成要素 (Engel, Blackwell, & Miniard, 1993)
一口に「状況(Situation)」と言っても定義が難しいのですが、エンゲルらは以下の5つの要素に分解して整理しました。
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物理的環境 (Physical surroundings)
- 立地、店内の装飾、照明、音、匂い、気温、天候など。
- 「雨の日はECサイトの売上が上がる」とか「アップテンポなBGMだと回転率が上がる」などがこれにあたります。
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社会的環境 (Social surroundings)
- 自分以外の他者の存在。友人、家族、販売員、あるいは単に居合わせた他の客
- 「行列ができているから並ぶ(バンドワゴン効果)」や「店員に見られているから万引きできない」など
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時間的視点 (Temporal perspective)
- 時間帯、季節、あるいは「急いでいるかどうか」
- 閉店間際の値引きシールに群がる心理や、クリスマス前の駆け込み需要など
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購買目的 (Task definition)
- 自分用か、ギフト用か、仕事用か
- 自分用のチョコは100円でも、本命へのバレンタインチョコは3000円になる現象です
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先行状態 (Antecedent states)
- その環境に入る前の、一時的な生理的・心理的状態
- 「空腹時にスーパーに行くと買いすぎる」や「給料日直後で気が大きくなっている」など
こうして見ると、マーケティングやUI設計というのは、単にプロダクトを作るだけでなく、これらの 「状況変数」をいかにハックするか という考え方も必要そうです。
環境が感情を操作する
ラッセル&メーラビアンのモデル (Russell & Mehrabian, 1976)
では、物理的な環境(照明や音楽など)は、どうやって人を行動させるのでしょうか?
ラッセルとメーラビアンは、環境が直接行動を起こさせるのではなく、「感情(内的状態)」を媒介して行動につながる と提唱しました。
$$Stimulus(環境) \rightarrow Organism(感情) \rightarrow Response(接近/回避)$$
彼らは感情を以下の3次元(PADモデル)で捉えました。
- 快 (Pleasure):楽しい、嬉しい vs 不快
- 覚醒 (Arousal):興奮している、目が覚めている vs 眠い、退屈
- 支配 (Dominance):自分が状況を支配している vs 圧倒されている
特に重要なのが 「快」と「覚醒」の組み合わせ です。
例えば、店舗において「快+覚醒(ワクワクする)」状態を作れれば、滞在時間が伸び、購買意欲(接近行動)が高まります。逆に「不快+覚醒(イライラする)」状態だと、すぐに店を出て(回避行動)しまいます。
日本での検証(永野, 1988)
この理論は日本でも永野光博氏らによって研究されています。
店舗の雰囲気が消費者の情緒的反応(感情)に影響を与え、それが最終的な購買行動や店舗への評価につながることを実証しました。
「お洒落なカフェに行くと、コーヒーの味そのもの以上に、その空間にいる自分に酔って高い代金を払う」というのは、まさに環境が感情というパラメータを書き換えた結果と言えます。
計画購買と非計画購買
状況要因が最も強く影響するのが、非計画購買(Unplanned Purchase)、いわゆる「衝動買い」です。
青木の分類 (青木, 1989)
青木幸弘氏は、非計画購買を以下の4つに分類しました。
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純粋衝動購買
- 全く買う予定がなかったのに、店頭で見て「欲しい!」と感情的に反応して買う
- レジ横のガムや、タイムセールの服など
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想起購買
- 商品を見て「あ、そういえば無くなりそうだった」と思い出して買う
- トイレットペーパーや調味料など。これは潜在的にはニーズがあったケース
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関連購買
- 買った商品に関連するものを買う
- パスタを買ったついでにパスタソースを買う、スマホを買ったついでにケースを買う
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条件購買
- 「何か買おう」とは思っていたが、具体的なブランドや商品は店頭の条件(価格や陳列)を見て決める
- 「今日の夕飯の魚」をスーパーに行ってから決めるケース
面白いのは、スーパーマーケットでの買い物の約7〜8割は非計画購買である というデータもあることです。
まとめ
今回は「状況要因」についてまとめました。
- 行動は環境との相互作用 ($B=f(P,E)$):個人の性格($P$)だけでなく、状況($E$)を見ないと行動は読めない
- 環境変数は5つある:物理、社会、時間、目的、先行状態
- 環境ハックの仕組み:環境が「感情(快・覚醒)」を刺激し、その感情が行動(接近・回避)を引き起こす
- 衝動買いの正体:現場の状況によってトリガーされる「非計画購買」が、実は買い物の大半を占める
それでは、また明日!