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【アドベントカレンダー2025】#11 心理学的な「感情」②

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Last updated at Posted at 2025-12-11

※以下の企画です

今回は「感情の想起と意思決定への影響」についての内容に入ります。
人間が記憶をどう振り返り、どう評価を下すのかというアルゴリズムの話です。

それでは頑張ります〜

経験の評価と記憶

ピーク・エンドの法則 (Kahneman et al., 1993)

人間が過去の経験を振り返って評価するとき、その経験の「時間の長さ」や「総和」ではなく、「最も感情が動いたとき(ピーク)」と「終わったとき(エンド)」の2点だけで全体を判定してしまうという心理現象です。

  • ピーク(Peak): 一番楽しかった、あるいは一番苦痛だった瞬間
  • エンド(End): その出来事の最後

例えば、どんなに長時間待たされる行列(苦痛)があっても、アトラクション自体が最高(ピーク)で、最後に素敵なパレードを見て帰れれば(エンド)、「今日は最高の一日だった」と記憶されます。
逆に、どんなに良いWebサービスでも、解約フロー(エンド)が最悪だと「最悪なサービスだった」という記憶が定着してしまいます。

積分値(総量)ではなく、最大値(Max)と最終値(Last)だけで評価が決まるというのは、なんとも省エネな法則と捉えて良いのかな?

感情と価値評価のモード

計算か、感情か (Hsee & Rottenstreich, 2004)

HseeとRottenstreichの研究は、人が対象を評価するときには2つのモードがあることを示しました。

  1. 計算モード (Valuation by Calculation)
    • 線形に評価する。量が2倍になれば、価値も2倍
    • 例:「10時間の稼働削減」は「5時間の稼働削減」の2倍嬉しい
  2. 感情モード (Valuation by Feeling)
    • 有無(0か1か)で評価する。量の変化に対して鈍感(Scope Insensitivity)
    • 例:「可愛いパンダの赤ちゃん」を助ける場合、1頭でも4頭でも「助けたい!」という感情の強さはあまり変わらない

「スペック(計算モード)」でプロダクトの良さを語りがちですが、ユーザーが「感情モード」に入っているときは、スペック向上(量の変化)はあまり響かない可能性があります。
逆に、エモいストーリーやデザインで攻めるなら、数字のロジックは無視される傾向にあるということですかね。

統合感情と偶発感情

意思決定に影響を与える感情には、大きく分けて2種類あるそうです。

統合感情 (Integral Emotion)

その対象自体から生じる感情です。
「このデザインが好き」「このUIは使いやすくて気持ちいい」といった、商品やサービスに直接紐づく感情です。
これは当然、購買意欲や評価に直結します。

偶発感情 (Incidental Emotion)

その対象とは全く関係ない、たまたまその時に感じていた感情です。
これが意思決定に影響を及ぼす現象は非常に面白いです。

  • 天気が良くて気分がいい $\rightarrow$ 商品を高く評価しやすい
  • 悲しい映画を見た直後 $\rightarrow$ 売り手は安く売りたがり、買い手は高く買おうとする(現状を変えたい心理が働くため)

つまり、ユーザーがアクセスしてきたときの「文脈(Context)」や「気分」によって、コンバージョン率が変わってしまうということです。
ECサイトなどで、雨の日クーポンを出したり、夜間に落ち着いたデザインにするのは、この偶発感情をコントロール(あるいは利用)しようとする試みと言えそうです。

感情を情報として使う

感情情報機能説 (Schwarz & Clore, 1983)

人間は複雑な判断を迫られたとき、「自分の感情(気分)」を判断材料(情報)として使ってしまうという説です(Affect-as-Information Theory)。

  • 問い: 「この商品は良いものか?」
  • 脳の処理: 1. 論理的に考えるのは面倒だ。
    2. とりあえず、今自分はどう感じているか(How do I feel about it?) を参照しよう。
    3. 「なんか気分がいいな(実は天気がいいだけ)」
    4. 結論: 「私がいい気分なのは、この商品が良いものだからに違いない」

これを誤帰属と言います。
UI/UXにおいて、マイクロインタラクションや効果音で「心地よさ」を演出するのは、単なる装飾ではなく、「この心地よさはサービスへの信頼感だ」とユーザーに誤認(学習)させるためのハックとも捉えられます。

まとめ

今回は、感情が記憶や評価にどう組み込まれるかをまとめました。

  • 終わり良ければ全て良し(ピーク・エンドの法則):UXは「去り際」のデザインが重要
  • 感情モードのときは数字が通じない:パンダを助けるのに計算はいらない
  • 関係ない気分の影響を受ける:ユーザーの機嫌が良いタイミングを狙うのも手
  • 気分を証拠にする:心地よいUIは、機能的信頼に誤帰属される

論理的な正しさ(機能要件)だけでなく、感情的な心地よさ(非機能要件)がいかに「合理的な判断」を歪めているか...もとい、支えているかがわかります。

それでは、また明日!

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