※以下の企画です
今回は「購買意思決定」の内容に入ります。
それでは頑張ります〜
購買意思決定
SOR型
まず、消費者行動の最も基本的な枠組みとして紹介されていたのが「SORモデル」です。
- S (Stimulus):刺激広告、価格、陳列、口コミなど、外部からの入力
- O (Organism):生体(消費者)消費者の内部状態。心理プロセス、属性、記憶など
- R (Response):反応購入する、しない、ブランドを好きになる、などの出力
$$Stimulus \rightarrow Organism \rightarrow Response$$
古くはこの「O(消費者)」の部分はブラックボックスとして扱われていましたが、ここを解明しようというのが消費者心理学の歴史のようです。入力(S)に対して出力(R)があるという構造は、関数的な構造で理解しやすいです。
ベットマンの情報処理モデル
1979年にJames Bettmanが提唱した情報処理モデルです。
これは人間を「情報の処理システム」として捉えるアプローチ*です。
コンピュータと人間の最大の違いとして、ベットマンは以下の特徴を挙げています。
- 処理能力の限界: 人間はすべての情報を完璧に処理できない
- ヒューリスティックの使用: だからこそ、簡略化したルール(近道)を使って意思決定を行う
人間はメモリもCPUも有限なので、毎回フルスペックで計算していたらパンクしてしまいます。だから 「安ければ買う」「有名なら買う」といったショートカット(ヒューリスティック) を使うわけですね。
これが後述する「バイアス」の原因にもなります。
フレーミング効果
フレーミング効果とは、同じ内容であっても、表現方法(フレーム)が異なると、受け手の印象や意思決定が変わってしまう現象です。
「生存率95%の手術」と言われると安心する「死亡率5%の手術」と言われると恐怖を感じる中身は全く同じ確率($0.95$ vs $1-0.05$)なのに、ポジティブな枠組みで見せるか、ネガティブな枠組みで見せるかで、人間の意思決定はブレます。
これは私の解釈ですが、 「同じ関数に値を入力している」のに「処理する人によって答えが異なる」 という状況だと思います。そのため、先日記事にした効用関数みたいな数理モデルってバチッとハマらないんじゃないのか?とも思います。
ここらへんは面白い内容なので、もしかしたら別途記事にするかもしれません。
プロスペクト理論
行動経済学で最も有名な理論の一つ、ダニエル・カーネマンらの「プロスペクト理論」です。
一言で言うと、 「人間は『損』を極端に嫌がる生き物である(損失回避性)」 ということを理論化したものです。
書籍で紹介されていた例を見てみます。
【損失の場面】
あなたは今、200万円の借金があります。以下のどちらかを選べます。
- 選択肢1: 確実に借金が100万円減る(残り100万円払う)
- 選択肢2: コインを投げて表なら借金帳消し(0円)、裏なら借金はそのまま(200万円)
- 多くの人の反応:
「選択肢2」を選びます。損をしている場面では、損失を確定させることを嫌がり、リスクを冒してでも損失をゼロにしようとします(リスク志向的)。
期待値は以下の通り全く同じです。
- 選択肢1の負債:$-100$万円(確定)
- 選択肢2の期待値:$(0 \times 0.5) + (-200 \times 0.5) = -100$万円
しかし、人間は「確実に100万円損する(払う)」という痛みを回避したくて、リスクを冒してでもチャラにできる可能性(選択肢2)に賭けてしまうのです。
利益が出ているときは「確実に利益を得たい(リスク回避)」になりますが、損をしている場面では「リスクを冒してでも損失をゼロにしたい(リスク志向)」 になる。
これが、ギャンブルや株の損切りができない心理メカニズムですね。怖い。
心理的財布
最後は、小嶋外弘らが1983年に提唱した「心理的財布」という概念です。
これは、フレーミング効果を説明する一つの要素とも言えます。
人間は、お金に対して用途や入手経路ごとに別々の「心の財布(勘定)」 を持っています。
- 家計の財布: スーパーで10円高いキャベツには悩む
- 遊興費の財布: 飲み会での1杯500円の追加注文は躊躇しない
- あぶく銭の財布: ギャンブルで勝ったお金やボーナスは、パーッと使ってしまう
同じ「1円の価値」は客観的には等しいはずなのに、どの財布から出すかによって、痛みの感じ方が変わるということです。
広告という観点で言うと、当てたいユーザーのペルソナを考えるときに「心理的財布」に対する価値観も考えてみると面白いかもなぁと感じました。
#まとめ
今回は「購買意思決定」における人間の非合理的な側面を中心にまとめました。
- 基本は刺激と反応(SORモデル)
- でも人間はスペック不足なので手抜き(ヒューリスティック)をする
- その結果、見せ方(フレーミング)や、損得の状況(プロスペクト理論)で判断が歪む
- お金の出処(心理的財布)によっても金銭感覚が変わる
情報系の人間としては、人間がいかに「バグだらけの処理系」であるかを思い知らされますが、マーケティングやUI設計ではこの「バグ(心理的特性)」を仕様として理解しておく必要がありそうです。
僕が今研究テーマにしている「AIと心理」という分野でも重要になりそうな部分だったので、あとはまたいつか別途記事にアウトプットするかもしれません。
それではまた明日!