こちらの企画です
前回は「文化(Culture)」という巨大なOSが消費行動を規定しているという話をしました。
今回は、その中でさらに分岐した「下位文化(Subculture)」や、特定の世代(シニア・若者)特有の消費行動について深掘りしていきます。
ちなみに書籍の最後の部分です!
それでは頑張ります〜
下位文化(サブカルチャー)とは
「サブカル」というと、日本ではアニメや漫画、ゴスロリなどをイメージしがちですが、消費者行動論における定義はもっと広いです。
下位文化(Subculture) とは、「支配的な文化(全体)」の中に存在しながら、独自の価値観や行動規範を持つ集団 のことです。
国籍、宗教、人種はもちろん、「世代(高齢者・若者)」 や 「趣味のコミュニティ(ハーレー乗り、ゲーマー、キャンパー)」 も立派なサブカルチャーです。
マーケティングにおいて重要なのは、「メインストリーム(全体)の常識で彼らを判断してはいけない」 ということです。彼らには彼らの「部族の掟(プロトコル)」があります。
高齢者の消費:アイデンティティの再生
老いは「撤退」ではなく「再生」である(Schau, Gilly, & Wolfinbarger 2009)
かつて、定年退職後の高齢者の消費は「役割からの撤退(Role Exit)」としてネガティブに捉えられがちでした。
「現役引退=社会的な死」であり、あとは余生を静かに過ごすための「守りの消費」しかしない、という見方です。
しかし、Schauらの研究はこれを真っ向から否定し、「消費者アイデンティティのルネサンス(再生)」 であると定義しました。
彼らは退職を「自由な時間」と捉え、消費を通じて自己を再定義しようとします。これには2つのパターンがあります。
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再生型(Revived Identity)
- 「昔やりたかったこと」の再起動。
- 若い頃に好きだったギターを高級品で買い直す、学生時代に憧れたバイクに乗るなど。
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創出型(Emergent Identity)
- 「全く新しい自分」のスタート。
- 今まで無縁だった「陶芸」を始めて作家を目指す、「YouTuber」になってみるなど。
我々が高齢者向けサービスを考えるとき、「介護」「見守り」といった 「弱者へのケア」 の文脈になりがちですが、実は彼らは 「人生2周目のスタートアップ」 として、自己表現のためのツール(武器)を求めているのかもしれません。ここには大きなヒントがありそうです。
若者の消費:アルコール離れの正体
若者向けチューハイのヒット(Wedge 2011)
次は逆のサブカルチャー、若者世代です。
2011年頃のビジネス誌『Wedge』などで取り上げられた話題として、「若者の酒離れ」と「低アルコール飲料(ほろよい等)のヒット」 の話があります。
当時(今もですが)、おじさん世代(メインカルチャー)は「最近の若者は酒も飲まない」と嘆いていました。
しかし、若者のインサイトは「飲みたくない」のではなく、「既存の飲み会文化(苦いビール、泥酔、説教、上下関係)」というサブカルチャーへの拒絶 でした。
そこにハマったのが、サントリーの「ほろよい」に代表される 「ライトなチューハイ」 です。
- 度数3%:酔っ払って醜態を晒すリスクがない(コントロール可能性)
- 甘くて飲みやすい:苦味(大人の我慢)を強要されない(快楽の追求)
- おしゃれなパッケージ:SNSや部屋に馴染む(自己表現)
若者にとってお酒は「憂さ晴らしのドラッグ」ではなく、「ゆるいコミュニケーションのためのファッションアイテム」 だったわけです。
これも、「若者というサブカルチャー」の価値観(つながりは欲しいが、拘束はされたくない)を正しく理解した結果の勝利と言えます。
まとめ
今回は「サブカルチャー(世代)」という切り口でまとめました。
- サブカルチャーは「部族」である:全体平均で見ると彼らの行動原理は見えなくなる
- 高齢者は「枯れた人」ではない:引退を機に「アイデンティティ・ルネサンス(再生)」を起こすクリエイター層である
- 若者の「〇〇離れ」は「既存価値観からの離脱」:彼らなりの新しい価値観(スマートさ、ゆるさ)にフィットさせれば消費は起きる
そんでもって今回の記事で「新・消費者理解のための心理学」は読破となりました!
本当に自分にとっては意味のある本でした。
詳しくはまとめ記事を書きます。
それでは、また明日!