#はじめに
DevOpsのためのプラットフォームGitLabが2021年10月14日に時価総額約1兆2000億円で米NASDAQ市場に上場しました。途方も無い金額ではありますが、この上場に至るまでGitLabでは世界66カ国に分散する1200人以上の社員がフルリモートで働いてきているというのはさらに驚くべきことです。
このリモートワークを機能させるためにGitLabには徹底的な文書化と情報公開の文化があり、それらの文書は社外の私たちでも見られます。私たちもそこから学べることがあるはずです。なので、本記事ではそれらの一部を紹介します。
#Remote Manifest
まずはGitLabのcomplete Remote Playbookのトップページに記載されているRemote Manifestを見ていきましょう。
日本語訳は以下になります。
①本社の代わりに、世界中で採用して世界中で働く
②決められた労働時間よりも、柔軟な労働時間を
③口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録
④オンザジョブトレーニング(OJT)よりも、やり方を書面に
⑤知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を
⑥ドキュメントをトップダウンで管理するよりも、誰でも編集できるように
⑦同期的なコミュニケーションよりも、非同期的なコミュニケーションを
⑧労働時間よりも、仕事の成果を
⑨非公式なコミュニケーションチャネルよりも、公式なコミュニケーションチャネルを
このマニフェストでは特に知識の文書化により、非同期的なコミュニケーションをできるようにすることが重要であると読み取れます。出社する場合には直接の会話などの同期的なコミュニケーションが容易なために必ずしも常に文書化して公開する必要はありませんが、リモートの場合には同期的なコミュニケーションの質、量が出社時の場合より劣るために非同期的なコミュニケーションを重視することが必要となるのだと思います。後から入ってくる社員ややり方などを確認したい場合には、この文書にあたればよいということがはっきりしているので、各自でキャッチアップし社内の情報格差をなくしていくことが可能になるのでしょう。以上のことより、リモートワークをうまく機能させるには、非同期的なコミュニケーションができること、つまり、他人に情報を伝えるための文章力と、他人が書いた文章を読み取る読解力が求められることになります。
#The Remote Playbook
次にThe Remote Playbookを見ていきましょう。これにはリモートワークをより円滑に行っていくためのコツや方法などが記載されています。そのなかで私たちが活用できそうなものを一部紹介します。
#What not to do
リモートワークに移行していくにあたって、誰もが避けたいにも関わらず、共通して陥りがちな落とし穴があります。
①Do not replicate the in-office/colocated experience, remotely
②Do not transfer all in-person meetings to virtual
③Do not assume that everyone has access to an optimal workspace
④Do this, not that
⑤Do not assume that remote happens overnight
⑥Do not assume that remote management is drastically different
⑦Don't assume your existing values can remain static
日本語訳は以下になります。
①オフィスや拠点での経験をリモートで再現しないこと
②対面式の会議をすべてバーチャルに移行してはいけない
③誰もが最適なワークスペースを利用できると思わないこと
④あれをする、これをしない
⑤リモートが一夜にして実現するとは思わないこと
⑥リモート管理が大幅に変わると思わないこと
⑦既存の価値観がそのままでいいと思わないこと
これらの落とし穴を避けるには、メンバーに対し、「〜なはずだ」や「〜に決まってる」などの思い込みをやめ、メンバーが適切なフィードバックができるようにするのが効果的でしょう。
#Informal communication
個人が物理的に同じ空間にいる場合、フォーマルな場以外でも雑談や会話をする機会が十分にあります。一方フルリモートの場合、意図的にインフォーマルなコミュニケーションを設計する必要があります。リモート環境では、リーダーは非公式のコミュニケーションを正式に組織し、可能な限り、チームメンバーが誰にでも気軽に声をかけて誰にでも気軽に仕事とは関係ない話ができるような雰囲気を作ることが重要です。以下はGitLabが導入しているインフォーマルコミュニケーションの例です。
- SOCIAL CALLS
- COFFEE CHATS
- COWORKING CALLS
- CHAT CHANNELS FOR
SHARED INTERESTS - ASK ME ANYTHING
(AMAS) - TALENT SHOWS &
TOURNAMENTS - THANKS CHANNEL
日本語訳は以下になります。
- ソーシャル・コール 任意の通話でアジェンダを設定せず、ただオープンに話すことができます。
-
コーヒー・チャット
仕事以外のことでもお互いを知ることができる同僚との一対一のビデオチャット。 -
コワーキングコール
困難な作業を同僚と一緒に行ったり、別の作業をしながら談笑したりするスケジュールされたワーキングセッション。 -
共有する興味のためのチャットチャンネル
Slack(または他のチャットツール)で、思いつく限りの興味や趣味のチャンネルを開く。 -
何でも聞いてください(AMAS)
チームメンバーがホストに好きな質問をすることができる、オープンアジェンダのコール。 -
タレントショー&トーナメント
同僚同士の有意義なつながりを築くのに最適で、比較的簡単に開催できます。 -
サンクスチャンネル
チームメンバーが他のメンバーへの感謝の気持ちを共有する専用の公開チャットチャンネル。
GitLabには様々なインフォーマルコミュニケーションの場があることがわかります。a few of examplesとあるようにこれらの他にもまだまだあるようです。それだけ用意されているということからGitLabがいかにインフォーマルコミュニケーションを重視しているかが伝わってきます。
#Mental health and time away from work
燃え尽き症候群、孤立感、不安感は、チームメンバーに大きな影響を与えます。なのでメンタルヘルスとウェルビーイングのためには、この問題を認識し、対処する文化が必要となります。チームメンバーは、まだ対処可能なうちに問題を表面化させることができなければなりません。
- DOCUMENT PROCESSES AROUND MENTAL HEALTH
- CREATE A NON-JUDGMENTAL CULTURE
- DO NOT CELEBRATE LONG WORKING HOURS
- REST AND TIME OFF ARE PRODUCTIVE
- ENCOURAGE A HEALTHY REMOTE LIFESTYLE
日本語訳は以下になります。
- メンタルヘルスに関するプロセスの文書化
- 偏見のない文化を作る
- 長時間労働を賞賛しない
- 休息と休暇は生産的である
- 健康的なリモートライフスタイルを奨励する
これらはリモートワークかどうかに関わらず重要なことでしょう。心身の健康に関する問題を早期発見できる環境を作り、メンバーが長期的に能力を発揮していくほうがチームにとっても企業にとっても有益になります。
#おわりに
本記事ではGitLabのリモートワークのノウハウの一部を紹介しました。あなたのリモートワークに役立つ内容であったなら幸いです。本記事ではGitLabのThe Remote Playbookの一部を紹介しましたが、より詳しく知りたいという方は以下の参照元を一読することをおすすめします。
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#おまけ
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