確認日: 2026-10-06
対象: 2026年10月現在、IJCAD公式から開発用資料を入手できるバージョン
API: GRX(ObjectARX互換のネイティブC++ API)
はじめに
IJCAD向けのGRXアプリケーションをビルドする場合、IJCADの年版だけでなく、Visual Studio、Platform Toolset、CPUアーキテクチャ、対象年版のGRXSDKを合わせる必要があります。
この記事では、2026年10月現在、IJCAD公式ヘルプセンターから開発用CHMと「アプリケーション開発での特記事項」を入手できるバージョンを対象に、現在開発環境を整えるために必要な情報を一覧化します。
IJCAD公式は、サポート完全終了製品に対応した開発用ヘルプファイルの提供を終了すると案内しています。現在公開されている開発資料はIJCAD 2021~2026です。
対象バージョンとサポート状況
| IJCAD | 2026年10月現在のサポート | 開発用CHM / 特記事項 | 本記事 |
|---|---|---|---|
| 2026 | フルサポート | 入手可 | 対象 |
| 2025 | フルサポート | 入手可 | 対象 |
| 2024 | フルサポート | 入手可 | 対象 |
| 2023 | 限定サポート | 入手可 | 対象 |
| 2022 | 限定サポート | 入手可 | 対象 |
| 2021 | 限定サポート | 入手可 | 対象 |
| 2020以前 | サポート完全終了 | 開発用ヘルプ提供終了 | 対象外 |
2021~2023は現在も開発資料を入手できますが、製品サポートは限定サポートです。新規案件で積極的に選択するというより、既存資産の保守・移植用として考えるのが現実的です。
開発環境一覧
| IJCAD | Visual Studio | Platform Toolset | Platform | 主なポイント |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | Visual Studio 2017 15.9.17以降 | v141 | x86 / x64 | IJCAD 2021用GRXSDKで再ビルド |
| 2022 | Visual Studio 2017 15.9.17以降 | v141 | x86 / x64 | 対象年版GRXSDKで再ビルド |
| 2023 | Visual Studio 2017 15.9.17以降 | v141 | x86 / x64 | 32bit対応最終世代 |
| 2024 | Visual Studio 2017 15.9.17以降 | v141 | x64のみ | SDKフォルダ構成・モジュール構成・一部API変更 |
| 2025 | Visual Studio 2017 15.9.17以降 | v141 | x64のみ | 2024世代の構成を継続 |
| 2026 | Visual Studio 2022 17.8.0以降 | v143 | x64のみ | コンパイラ世代変更 |
大きな境目だけ先に覚える
| 境目 | 何が変わるか |
|---|---|
| 2023 → 2024 | 32bit版終了、x64専用化、GRXモジュール構成変更、GRXSDKフォルダ構成変更、一部API変更 |
| 2025 → 2026 | Visual Studio 2017 → 2022、Platform Toolset v141 → v143 |
ざっくり分けると次の3世代です。
IJCAD 2021~2023
Visual Studio 2017 / v141
x86・x64
↓
IJCAD 2024~2025
Visual Studio 2017 / v141
x64のみ
SDK構成変更
↓
IJCAD 2026
Visual Studio 2022 / v143
x64のみ
Visual Studioで確認する項目
既存GRXプロジェクトを別年版へ移植する場合は、少なくとも次を確認します。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| Configuration Type | Dynamic Library(DLL) |
| Target Extension | .grx |
| Platform | 2024以降はx64 |
| Platform Toolset | 2021~2025 = v141、2026 = v143 |
| Include | 対象年版GRXSDK |
| Library | 対象年版GRXSDK |
| Additional Dependencies | 対象年版SDKのSampleと比較 |
| Preprocessor Definitions | 対象年版Sampleと比較 |
| PCH |
stdafx.h / pch.h / framework.h の構成を確認 |
| MFC | 使用する場合はVisual Studio側のMFCコンポーネントを確認 |
IJCAD 2024移行時の注意
IJCAD 2024から64bit版のみとなりました。
また、公式の「アプリケーション開発での特記事項」では、GRXについて以下の変更が案内されています。
| 変更 | 内容 |
|---|---|
| モジュール構成 | 変更あり |
| GRXSDKフォルダ構成 | 変更あり |
| API | AutoCAD互換性向上に伴う一部APIの廃止・変更 |
| Platform | x64のみ |
このため、2023プロジェクトのInclude/Libパスを単純な文字列置換で2024へ移すより、2024用GRXSDKのSampleを基準にプロジェクト設定を比較する方が安全です。
特に64bit移行では、次のような古い前提が残っていないか確認します。
ポインタを int / long に格納していないか
ハンドル値を32bit整数として扱っていないか
sizeof(void*) == 4 を前提にしていないか
外部DLLがx86のまま残っていないか
構造体サイズを32bit前提で固定していないか
IJCAD 2026移行時の注意
2026ではVisual Studioが変更されます。
Visual Studio 2017 / v141
↓
Visual Studio 2022 17.8.0以降 / v143
プロジェクトの「プラットフォーム ツールセット」は次を指定します。
Visual Studio 2022 (v143)
v143が選択肢に表示されない場合は、Visual Studio InstallerでC++ビルドツールを追加します。
また、新しいVisual StudioのDLLプロジェクトではstdafx.hではなくpch.hとframework.hが生成される場合があります。旧資料の「stdafx.hへ追加」という説明を、そのままファイル名だけで判断しないよう注意します。
バージョンアップ時の実務チェックリスト
| # | 確認 |
|---|---|
| 1 | 対象IJCADの年版を確定した |
| 2 | 対象年版のGRXSDKを用意した |
| 3 | 公式DEV_CHMと特記事項PDFを確認した |
| 4 | Visual Studioの対応バージョンを確認した |
| 5 | Platform Toolsetを確認した |
| 6 | x86/x64を確認した |
| 7 | Include / Libraryパスを対象年版SDKへ変更した |
| 8 | Additional DependenciesをSampleと比較した |
| 9 | PCH / MFC設定を確認した |
| 10 | コンパイル・リンク警告を確認した |
| 11 | 実機IJCADでロードした |
| 12 | 主要コマンドの回帰確認を行った |
まとめ
現在公式から開発資料を入手できるIJCAD 2021~2026をGRX開発環境の観点でまとめると、重要なのは次の2点です。
- IJCAD 2024でx64専用化とSDK/API構造変更
- IJCAD 2026でVisual Studio 2022 / v143へ変更
年版だけを見て既存プロジェクトを機械的に書き換えるのではなく、対象年版のDEV_CHM・特記事項・GRXSDK Sampleを正としてビルド設定を合わせるのが基本です。
元情報の索引
以下は、この記事の作成時に確認した一般公開の公式資料です。
| 用途 | 資料 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 開発資料の現行配布範囲 | IJCAD: 開発API(SDK)に関するドキュメントはありますか? | 2021~2026 DEV_CHM・特記事項PDF、完全サポート終了製品のヘルプ提供終了 |
| 現在のサポート状況 | IJCAD: サポート状況とサポート終了製品について | 2024~2026フル、2021~2023限定、2020以前完全終了 |
| 2021開発環境 | IJCAD 2021 アプリケーション開発での特記事項 | VS2017 15.9.17以降、GRX再ビルド、.NET Framework 4.8 |
| 2022 GRX | IJCAD 2022 アプリケーション開発での特記事項 | VS2017、v141、PCH注意 |
| 2024 GRX | IJCAD 2024 アプリケーション開発での特記事項 | v141、64bit化、SDK/API構造変更 |
| 2026全般 | IJCAD 2026 アプリケーション開発での特記事項 | VS2022 17.8以降、x64、GRX/.NET変更 |
| 2026 GRX Toolset | Visual Studio 2022を用いたGRXモジュールの作成方法 | v143 |
| GRX概要 | IJCAD: ARXによるプログラミングの概要 | GRXSDK、ロード方法、基本構成 |
| 利用可能API | IJCADで利用可能なAPIはありますか? | GRXはSTD/PROで利用可能 |
補足
公式資料は更新される可能性があります。特に新しいIJCADが公開された後は、この記事の表より公式のDEV_CHM・特記事項を優先してください。