DNSのフォワーディングとNS委任の違い
フォワーディング(Forwarding)とNS委任(Delegation)は、DNSクエリの解決方法として似ていますが、根本的な仕組みと用途が異なります。以下に主な違いをまとめます。
1. 基本的な仕組み
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NS委任:
- ゾーンの一部(サブドメイン)を別の権威DNSサーバーに階層的に委譲します。
- NSレコードで委任先のネームサーバー名(例:
ns1.azure-dns.com)を指定。クライアントのクエリがそのNSを解決し、直接権威サーバーに到達します。 - DNSの標準的な階層構造を活用。委任されたサーバーが最終的なレコードを返します。
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フォワーディング:
- 特定のドメインのクエリを、自分のDNSサーバーから**指定のDNSサーバー(IPアドレス)**に転送します。
- 条件付きフォワーディングの場合、ドメイン名ごとに転送先IPを指定。転送先が再帰的に解決して結果を返します。
- 階層委譲ではなく、「プロキシ」的な転送です。
2. 優先順位と動作
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NS委任:
- DNSサーバーはNSレコードを優先的に参照。委任があれば、フォワーディングを無視して委任先へクエリをルーティングします。
- 権威的解決(Authoritative)なので、キャッシュ効率が高く、冗長性(複数NS)があります。
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フォワーディング:
- NSレコードがない場合や、バイパスしたい場合に使われます。委任が存在すると競合する可能性あり(委任が優先)。
- 再帰的解決(Recursive)なので、転送先の負荷が増え、遅延が発生しやすい。
3. 用途と適した場面
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NS委任:
- ハイブリッド環境やサブドメイン管理で最適(例: 内部DNSから外部Azure DNSへ委任)。
- スケーラビリティが高く、DNSのベストプラクティス。移行時のような階層移管に適します。
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フォワーディング:
- 簡単な外部解決や、NSレコードが使えない場合(例: 古いサーバー間連携)。
- 条件付きで便利ですが、委任が可能なら不要。トラブルシューティングが複雑化しやすい。