ExpressRoute Private Peering における PE と MSEE の IP アドレス割り当てを理解する
ExpressRoute の設計やトラブルシューティング、または BGP のログ調査を行う際、Azure ポータルや設定情報で以下のようなピアリングアドレスを目にすることがあります。
PrimaryPeerAddressPrefix: 192.168.1.0/30
SecondaryPeerAddressPrefix: 192.168.2.0/30
このとき、
「この /30 の中のどの IP が自分(PE)側で、どの IP が Microsoft(MSEE)側なのか?」
と一瞬迷ってしまうことはないでしょうか。
本記事では、Microsoft Learn の仕様をもとに、ExpressRoute Private Peering における IP アドレスの自動割り当てルールを整理・解説します。
そもそも ExpressRoute で /29 が要求される理由
ExpressRoute の Private Peering を新規構成する際、Microsoft からは /29 のサブネット(CIDR)を提供するよう求められます。
例えば、テスト用として 192.168.1.0/29 を提供した場合、この範囲には以下の 8 個の IP アドレスが含まれます。
192.168.1.0
192.168.1.1
192.168.1.2
192.168.1.3
192.168.1.4
192.168.1.5
192.168.1.6
192.168.1.7
なぜ /29 を 2 つの /30 に分割するのか?
ExpressRoute は高い可用性を確保するため、物理的に Primary と Secondary の 2 本の接続(デュアルホーム構成)を必須としています。
そのため、提供された /29 空間は Azure 内部で自動的に 2 つの /30 サブネット に分割されて割り当てられます。
【提供したアドレス空間】
192.168.1.0/29
│
├─ Primary 接続用: 192.168.1.0/30
│
└─ Secondary 接続用: 192.168.1.4/30
Microsoft Learn の IP アドレス割り当てルール
/30 サブネット内での IP 割り当てロジックは、Microsoft の仕様によって明確に定義されています。
法則は非常にシンプルで、「ネットワークアドレス + 1」が PE 側、「ネットワークアドレス + 2」が MSEE 側 になります。
1. Primary リンク (192.168.1.0/30) の内訳
| IP アドレス | 割り当て | 役割 |
|---|---|---|
192.168.1.0 |
ネットワークアドレス | - |
192.168.1.1 |
PE (Customer / Provider Edge) | Network + 1 |
192.168.1.2 |
Microsoft MSEE | Network + 2 |
192.168.1.3 |
ブロードキャストアドレス | - |
2. Secondary リンク (192.168.1.4/30) の内訳
| IP アドレス | 割り当て | 役割 |
|---|---|---|
192.168.1.4 |
ネットワークアドレス | - |
192.168.1.5 |
PE (Customer / Provider Edge) | Network + 1 |
192.168.1.6 |
Microsoft MSEE | Network + 2 |
192.168.1.7 |
ブロードキャストアドレス | - |
※なお、Primary と Secondary で異なる
/30(例: Primary に192.168.1.0/30、Secondary に192.168.2.0/30)を個別に指定・分離して構成した場合でも、「PE は Network + 1」「MSEE は Network + 2」 という計算ルールは全く同じです。
図解:BGP ピアリングとトポロジ
オンプレミス(PE)と Azure(MSEE)の間では、Primary / Secondary のそれぞれで独立した Point-to-Point の BGP セッションが確立されます。
【オンプレミス / 拠点側】 【Microsoft 側】
( PE Router ) ( MSEE Edge )
Primary: 192.168.1.1 <=== BGP Session ===> 192.168.1.2
(Primary)
Secondary: 192.168.1.5 <=== BGP Session ===> 192.168.1.6
(Secondary)
PE と MSEE の役割と整理
トラブルシューティング時に混同しないよう、それぞれのルータの役割を整理しておきましょう。
PE(Customer Edge / Provider Edge)
お客様拠点、または接続事業者(プロバイダ)側に設置されたルータです。
- 主な役割:
- Microsoft(MSEE)との間で BGP セッションを確立する
- オンプレミス側のルート(IP プレフィックス)を Azure 側へ広告する
- Azure から広告されたルートを受信し、適切なネクストホップを選択する
MSEE(Microsoft Enterprise Edge)
Microsoft が管理・運営する ExpressRoute ピアリング位置のエッジルータです。
- 主な役割:
- 仮想ネットワーク(VNet)や Azure サービスのルートをオンプレミスへ広告する
- お客様側から広告されたルートを受信する
- 計画メンテナンス時に AS-path prepend を付与してトラフィックを迂回させる
まとめ
ExpressRoute Private Peering における IP アドレスの関係性を表にまとめました。
| リンク種別 | サブネット例 | PE アドレス (Network + 1) |
MSEE アドレス (Network + 2) |
|---|---|---|---|
| Primary | 192.168.1.0/30 |
192.168.1.1 |
192.168.1.2 |
| Secondary | 192.168.1.4/30 |
192.168.1.5 |
192.168.1.6 |
show ip bgp neighbors や show ip route などのコマンドを実行する際、「どちらが自社ルータで、どちらが Azure(Microsoft)側のネクストホップ IP なのか」 を見極める基本ロジックとして、このルールを覚えておくと大変役立ちます。