日本初の円建てステーブルコイン JPYC が、DeFi(分散型金融)市場で本格的な展開を見せています。これまでドル建てが中心だった DeFi 市場に、日本円という選択肢が加わることで、私たちの資産運用や企業の財務管理のあり方が大きく変わろうとしています。
DeFi 市場での JPYC 取り扱いが拡大
分散型金融(DeFi)とは?
従来の金融サービスをブロックチェーン上で再構築することで、銀行や金融機関の仲介なしに金融取引を行うことができます。UniswapやCompoundなどのプラットフォームでは、自動的な価格発見と流動性提供が行われているといわれています。
JPYC の DeFi 市場への参入を象徴するのが、PAO TECH Labs による包括的なエコシステム構想の発表です。同社は 11 月 27 日、Morpho(預かり資産約 50 億ドル)、Euler Finance(同約 10 億ドル)、IPOR Fusion、Napier Finance という 4 つのグローバル大手 DeFi プロトコルとの連携を明らかにしました。この協働により、円建てのレンディング(貸付)、利回り生成、固定金利商品が段階的に提供されることになります。
関連する具体的な動きとして、Secured Finance は JPYC 建ての固定金利レンディング市場の板寄せを 11 月 3 日から開始しています。年率約 2.7 ~ 3.4%といった商品を提供しており、ユーザーは自身に合わせて JPYC の貸し出しや、ビットコインやイーサリアムを担保とした JPYC の借り入れができます。従来の DeFi では金利が変動するのが一般的でしたが、伝統的な金融商品のように満期と金利が事前に確定する仕組みを採用している点が特徴です。
さらに、Secured Finance は決済インフラへの応用も進めており、Coinbase の x402 プロトコルとの連携により、ウェブサービス上で直接 JPYC での支払いを実現する自動決済機能を発表しました。加えて、DeFi プロトコル Yearn Finance との連携による日本円金利カーブのオンチェーン化も計画されており、日本円を世界的な金利ベンチマークとして位置づける構想が進行中です。
また、double jump.tokyo と Bifrost は、企業向けに JPYC を活用した DeFi レンディングサービスの共同推進を発表しました。マルチシグ承認やアクセス権限設定といった内部統制機能を備えた「Nsuite」を基盤とし、ビットコイン利回り提供プラットフォーム「BTCFi Boost」との統合も視野に入れています。暗号資産を企業財務の一部として活用する「トレジャリー戦略」が注目される中、JPYC は日本円との価値連動性により会計・監査面での整合性が取りやすい資産として期待されています。
JPYC の DeFi 展開で何が変わるの?
JPYC の DeFi 展開は、私たちの経済活動にいくつかの重要な変化をもたらします。
日本円金利のグローバル化
Secured Finance が進める日本円金利カーブのオンチェーン化により、世界中の投資家が日本円金利に直接アクセスできるインフラが構築されます。これまで日本の金融市場と隔絶されていた DeFi と実世界の金融市場をつなぐ新しい橋渡しの役割を果たし、ドル中心だった国際的な DeFi 市場において円建ての選択肢が加わることで、通貨分散が進む可能性があります。
為替リスクの管理
さらに、為替リスクの管理が容易になります。ドル建ての DeFi 市場を利用する場合、円安・円高による為替変動リスクを常に意識する必要がありましたが、JPYC を使えば円建てで完結するため、為替リスクを最小化しながら資産運用ができるようになります。
JPYC の DeFi 展開が作る未来の社会
これらの動きが進展すると、どのような社会が実現するのか考えてみました。
グローバルな金利裁定取引の一般化
低金利の日本円で借り入れを行い、高金利のドル建て資産に投資する「オンチェーン・キャリートレード」が、機関投資家だけでなく個人投資家にも開かれることになりそうです。JPYC を 0.75%程度で借り入れ、年率 10%以上の DeFi プールに預けることで、金利差を収益として得る戦略が、技術的な障壁なく実行可能になります。
日本円が国際的な金融インフラの一部に
これまで国際的な DeFi 市場ではドルやユーロが中心でしたが、JPYC の普及により日本円も主要通貨の一つとして機能するようになります。世界中の投資家が円建ての金利商品にアクセスし、日本の金利動向がグローバルな投資判断に影響を与える、そんな未来が現実味を帯びてきています。
企業のトレジャリー戦略の進化
企業が余剰資金を従来の銀行預金や国債以外に、JPYC 建て DeFi プロダクトで運用する選択肢が生まれます。IPOR Fusion などのプラットフォームでは、低リスク・低ボラティリティ戦略から積極的なポイントファーミング戦略まで、企業のリスク許容度に応じた多様な運用が可能になります。法人向けウォレット(Nsuite など)との統合により、企業が安全かつコンプライアンスに配慮した形で DeFi にアクセスできる環境が整い、新しい財務管理の形が定着していくでしょう。
JPYC を取り巻くこれらの動向は、単なる技術革新を超えて、お金の使い方、増やし方、管理の仕方そのものを変えていく可能性を秘めています。日本発のステーブルコインが、新たな金融インフラとして世界に広がっていく様子を、私たちは今、まさに目撃しているのかもしれません。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、JPYC や DeFi サービスの利用を推奨するものではありません。ステーブルコインや暗号資産は価格変動リスクを伴い、相場の変動等により損失を被る可能性があります。DeFi サービスの利用に際しては、スマートコントラクトの脆弱性、清算リスク、流動性リスクなど、固有のリスクが存在します。投資判断はご自身の責任において行ってください。
参考記事
- https://coinpost.jp/?p=669577
- https://www.coindeskjapan.com/321684/
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000199.000034671.html
- https://crypto-times.jp/news-earn-yen-with-jpy-jpyc-now-available-on-morpho-a-major-lending-platform/
- https://www.neweconomy.jp/posts/510635
- https://news.yahoo.co.jp/articles/a4d00a89f8abfa43a6af5fbafac0d5a4be11589d
- https://coinotaku.com/news/articles/239602
- https://news.3rd-in.co.jp/article/a8bd98f0-cb48-11f0-b480-9ca3ba083d71#gsc.tab=0
