ナントカaaS
最近、仕事をしていると「ナントカaaS」という言葉をよく見かけます。
SaaS、PaaS、IaaSあたりは以前からありますが、最近はDaaS、BaaS、MaaS、XaaSなど、かなりいろいろな言い方があります。
正直、初見だと「またaaSか……」と思うこともあります。
ただ、言葉としては増えすぎていても、考え方自体はシンプルです。
自社で全部持つのではなく、必要な機能をサービスとして利用する
ということです。
雑談
よく見るようになったなーと思っていたら、自律型AIエージェントの登場でSaaSの死と言われ、忙しい時代です。
よく見るaaS
代表的なものをざっくり整理すると、こんな感じです。
| 用語 | 意味 | ざっくりした内容 | 主なサービス |
|---|---|---|---|
| SaaS | Software as a Service | アプリケーションをサービスとして使う | Google Workspace、Microsoft 365、Salesforce、Slack、Zoom、Notion、Dropbox、freee、SmartHR |
| PaaS | Platform as a Service | アプリを動かすための基盤を使う | Heroku、Google App Engine、AWS Elastic Beanstalk、Azure App Service、Render、Vercel、Firebase |
| IaaS | Infrastructure as a Service | サーバやネットワークなどの基盤を使う | AWS EC2、Azure Virtual Machines、Google Compute Engine、Oracle Cloud Infrastructure、さくらのクラウド |
| DaaS | Desktop / Data as a Service | デスクトップ環境やデータ基盤を使う | Amazon WorkSpaces、Azure Virtual Desktop、Windows 365、Citrix DaaS、Snowflake Marketplace、Google Analytics Data API |
| BaaS | Backend / Backup as a Service | バックエンド機能やバックアップを使う | Firebase、Supabase、AWS Amplify、Appwrite、Auth0、Stripe Treasury、GMOあおぞらネット銀行 API系サービス |
| XaaS | Everything as a Service | いろいろなものをサービスとして使う考え方 |
同じ略語でも、文脈によって意味が違うことがあります。
たとえばDaaSは、Desktop as a Service のこともあれば、Data as a Service のこともあります。
BaaSも、Backendの場合もあれば、Backupの場合もあります。
なので、略語だけ見て分かった気にならない方がよさそうです。
ナントカaaSは便利
ナントカaaSの良いところはたくさんあります。
- 初期費用を抑えやすい
- 導入が早い
- 自社で機器を持たなくてよい
- 運用の一部を外部に任せられる
- 必要に応じて増減しやすい
特に、情シスやインフラ担当の立場だと、サーバを買って、ラックに積んで、OSを入れて、パッチを当てて、バックアップを考えて……という作業を減らせるのは大きいです。
ただし、「ナントカaaSだから全部楽になる」と考えると少し危ないです。
管理対象がなくなるわけではない
ナントカaaSを使うと、自社で直接管理しない範囲は増えます。
ただ、管理対象がなくなるわけではありません。
見る場所が変わるだけです。
オンプレならサーバやネットワーク機器そのものを見ますが、ナントカaaSでは契約、設定、権限、データ、障害時の対応などを見ることになります。
ここを見落とすと、あとで困ります。
まず確認したいこと
1. 責任分界点
一番大事なのはここだと思います。
どこまでがサービス提供側の責任で、どこからが自社の責任なのか。
たとえば、
- OSのパッチは誰が当てるのか
- バックアップは標準で取られているのか
- リストアは誰が行うのか
- 障害時の一次切り分けは誰がするのか
- セキュリティ設定はどこまで利用者側で行うのか
このあたりは、サービスによってかなり違います。
「クラウドだから安心」「SaaSだから任せて大丈夫」と思っていると、実は利用者側の設定ミスだった、ということもあります。
2. データの置き場所
次に見るのはデータです。
- どこのリージョンに保存されるのか
- 国内なのか海外なのか
- 暗号化されるのか
- ログはどこに残るのか
- 契約終了時にデータを取り出せるのか
特に業務データや個人情報を扱うサービスでは、ここは確認しておきたいところです。
導入時は便利さに目が行きがちですが、あとでデータ移行や解約の話になると、意外と大変なことがあります。
3. 障害時に何ができるか
ナントカaaSは便利ですが、サービス側で障害が起きたとき、自社でできることは限られます。
だからこそ、事前に確認しておきたいです。
- SLAはどうなっているか
- 障害情報はどこで確認するのか
- サポート窓口はどこか
- 復旧見込みはどのように通知されるのか
- 代替手段はあるのか
オンプレなら自分たちでログを見たり、機器を再起動したりできます。
ナントカaaSでは、それができない場合もあります。
その代わりに、どこまで情報が出るのか、どこまでサポートしてもらえるのかを見ておく必要があります。
4. 認証と権限管理
SaaSを入れるとき後回しにされがちですが、認証と権限管理はかなり重要です。
- SSOに対応しているか
- MFAを使えるか
- 権限ロールを細かく分けられるか
- 退職者や異動者のアカウントをどう管理するか
- 監査ログを取れるか
利用者が増えるサービスほど、ここを雑にすると後でつらくなります。
特に退職者アカウントの消し忘れは、地味ですが怖いです。
5. コスト
aaSは月額課金なので、最初は安く見えることがあります。
ただ、使い方によってはコストが増えます。
- ユーザー数課金
- 容量課金
- API利用量課金
- データ転送料
- オプション機能
- サポートプラン
導入時の見積もりだけでなく、利用者が増えたとき、データ量が増えたとき、機能を追加したときにどうなるかは見ておきたいです。
気づいたら「便利だけど高い」になっていることもあります。
新しいaaSを見たときの自分用チェック
新しい「ナントカaaS」を見たときは、まず以下を見るようにしています。
- 何をサービスとして提供しているのか
- 誰が運用するのか
- 自社側に残る作業は何か
- 責任分界点はどこか
- データはどこに置かれるのか
- 障害時に何ができるのか
- やめるときにデータを取り出せるのか
- コストは何に対して増えるのか
このあたりを見ると、単なる流行り言葉としてではなく、実際に使うサービスとして判断しやすくなります。
まとめ
ナントカaaSは便利です。
自社で全部持つよりも、早く使えて、運用負荷も下げられる場合があります。
一方で、何も考えなくてよくなるわけではありません。
インフラや情シスの立場では、サーバや機器を直接見る機会は減っても、責任分界点、データ、認証、障害対応、コストを見る必要は残ります。
むしろ、そこを見ないと導入後に困ります。
新しいaaSを見かけたら、まずはこう考えるとよさそうです。
それは結局、何を誰が運用して、何を月額で買っているのか。
この視点を持っておくだけでも、ナントカaaS系サービスの見え方は少し変わると思います。