毎月月末(明けの翌月月初)にその月にあった量子コンピュータや量子力学関連のニュースをまとめて紹介しています。
これまで記載した量子コンピュータの各方式の説明をアップデートし、記載します。
量子コンピュータ といっても いろいろな方式 があるんですよね。
現在主流となっている5方式の説明になります。
超電導方式(Super Conducting)
Google やIBM、日立 や 理研 が開発中
超伝導体で作られた人工原子(ジョセフソン接合)を用いて量子ビットを構成する方式
マイクロ波パルスで制御が容易で、ゲート動作は速いが、極低温環境が必須
<メリット>
・技術成熟度が高い(現在の主流)
・ゲート処理が速い
<課題>
極低温環境が必須
冷却・配線負荷が大きく数万量子ビット化が難しい
イオントラップ方式(Trapped Ion)
IonQ や Quantinuumが開発中
電磁場に閉じ込めたイオンを量子ビットに利用し、レーザーで制御する方式
高い精度と長寿命が特長だが、大規模化には課題がある
<メリット>
・ゲート精度が全方式中トップクラス
・コヒーレンス時間が長い(量子状態が長時間持つ)
<課題>
・レーザーシステムが大規模で複雑
・ゲート速度が遅め(大規模化が課題)
光方式(Photonic)
NTT や PsiQuantum、Xanadu、OptQC が開発中
光子を量子ビットに用いる方式で、光ファイバー伝送や室温動作が可能。誤り耐性に優れ、量子通信とも親和性が高いが、光子間相互作用の実現が難しい。
<メリット>
・室温で動作可能
・光通信との相性が非常に良い
・誤り耐性符号(例:GKP)と組み合わせやすい
<課題>
・光子間相互作用を作るのが難しい
・高純度シングルフォトン源が必要
中性原子方式(Neutral Atom)
QuEra や Pasqal が開発中
中性原子をレーザーでトラップしてリュードベリ状態を利用して量子ビット間を相互作用させる方式
アレイ化しやすく、大規模化に有利。誤り率低減や安定動作の研究が進む
<メリット>
・原子を 2D/3Dアレイに並べ替えられる → スケールしやすい
・レーザー技術の進化により急成長中
<課題>
・誤り率の低減が課題
・システム全体の安定化が必要
半導体量子ドット方式(Semiconductor Quantum Dot)
Intel 、QuTech や UNSW が開発中
半導体中の電子スピンを量子ビットとして利用する方式
既存の半導体技術を応用できるため集積化が期待されるが、コヒーレンス時間の短さが課題
<メリット>
・半導体プロセスによる大量生産・集積化の可能性
・小型化しやすい
<課題>
・コヒーレンス時間が短め
・高精度スピン制御や誤り訂正の統合が課題
以上、代表的な5方式になります。
他に研究段階として、トポロジカル量子ビット(Topological Qubits、Microsoft が研究)や ダイヤモンドNV量子ビット(Diamond NV Centers)などがあります。