はじめに
ブロックチェーンの分野では、スマートコントラクトのセキュリティがますます重要視されています。スマートコントラクトにバグや脆弱性があれば、資産やデータが危険にさらされるリスクがあるため、コードの品質を担保することが必須です。そこで今回は、OpenAI APIとGitHub Actionsを組み合わせ、スマートコントラクトを自動で監査できるツールの作成方法を紹介します。このツールにより、プッシュやプルリクエストが行われた際に、コードの自動監査が実行され、セキュリティや最適化に関するアドバイスが得られます。
必要な準備
このツールを構築するためには、以下の準備が必要です。
- OpenAI APIキー: OpenAIのAPIにアクセスするためのキー。OpenAIの公式サイト(openai.com)で取得できます。
- GitHubリポジトリ: 自動化ツールを動作させるためのGitHubリポジトリ。
- PythonとOpenAIライブラリ: PythonスクリプトでAPIを活用するために、OpenAIのPythonライブラリをインストールします。
ステップ1: OpenAI APIキーの設定
GitHubリポジトリにAPIキーを保存し、秘密情報を安全に扱うためにGitHub Secretsに設定します。
- GitHubリポジトリのページから「Settings」 > 「Secrets and variables」 > 「Actions」に移動し、新たに
OPENAI_API_KEY
という名前でシークレットを追加し、APIキーを保存します。
ステップ2: Pythonスクリプトの作成
監査の実行とOpenAI APIとの通信を行うPythonスクリプトを作成します。このスクリプトは、指定したSolidityコードを解析し、セキュリティリスクや最適化の提案を返します。
以下がPythonスクリプトaudit_contract.py
の内容です。
audit_contract.py
import openai
import os
import sys
def audit_smart_contract_code(code):
prompt = f"""
Analyze the following Solidity smart contract code for security vulnerabilities, optimization suggestions, and best practices. List each vulnerability and provide recommendations for improvement in bullet points.
Solidity Code:
{code}
Output:
- List of vulnerabilities
- Suggestions for improvements
- Additional best practices
"""
response = openai.ChatCompletion.create(
model="gpt-4o",
messages=[
{"role": "system", "content": "You are a Solidity smart contract auditor."},
{"role": "user", "content": prompt}
],
temperature=0.5,
max_tokens=1500,
top_p=1.0,
frequency_penalty=0.0,
presence_penalty=0.0
)
return response.choices[0].message['content'].strip()
if __name__ == "__main__":
openai.api_key = os.getenv("OPENAI_API_KEY")
solidity_file = sys.argv[1]
with open(solidity_file, 'r') as file:
solidity_code = file.read()
audit_report = audit_smart_contract_code(solidity_code)
print("Audit Report:")
print(audit_report)
ポイント
-
API呼び出し:
openai.ChatCompletion.create
を使い、最新モデルgpt-4o
でスマートコントラクトの監査を行います -
APIキーの安全管理:
os.getenv("OPENAI_API_KEY")
でAPIキーを環境変数から取得し、GitHub Secretsで安全に管理します
ステップ3: GitHub Actionsワークフローの設定
次に、GitHub Actionsを設定し、コードがプッシュされるたびに自動的に監査が行われるようにします。この設定はリポジトリ内に.github/workflows/audit.yml
として保存します。
.github/workflows/audit.yml
name: Smart Contract Audit
on:
push:
branches:
- main
pull_request:
branches:
- main
jobs:
audit:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- name: Check out repository
uses: actions/checkout@v3
- name: Set up Python
uses: actions/setup-python@v4
with:
python-version: '3.x'
- name: Install dependencies
run: pip install openai
- name: Run smart contract audit
env:
OPENAI_API_KEY: ${{ secrets.OPENAI_API_KEY }}
run: python audit_contract.py contracts/YourSmartContract.sol
- name: Upload audit report
run: |
python audit_contract.py contracts/YourSmartContract.sol > audit_report.txt
cat audit_report.txt
continue-on-error: true
- name: Upload audit report as artifact
uses: actions/upload-artifact@v3
with:
name: audit-report
path: audit_report.txt
ポイント
-
actions/checkout@v3
とactions/setup-python@v4
: 最新のGitHubアクションを使い、リポジトリのチェックアウトとPython環境のセットアップを行います。 -
エラー処理:
continue-on-error: true
により、監査中のエラーでワークフロー全体が失敗しないようにしています。 -
アーティファクトの保存: 監査結果を
audit_report.txt
に保存し、アーティファクトとしてアップロードします。
ステップ4: Solidityコードの配置
監査対象のスマートコントラクトファイルをリポジトリ内にcontracts/YourSmartContract.sol
として配置します。必要に応じてファイル名やパスを調整してください。
ステップ5: ワークフローの実行と結果の確認
コードをプッシュまたはプルリクエストを作成すると、GitHub Actionsが自動的にワークフローを実行し、監査が行われます。監査結果は、GitHubの「Actions」タブから確認でき、アーティファクトとしてダウンロードすることも可能です。
このツールのメリット
- 自動化: 手動での監査作業を減らし、プッシュやプルリクエストごとに自動でコードの品質チェックを行えます。
- セキュリティ向上: セキュリティリスクのあるコードを早期に発見し、迅速に改善できます。
- コスト削減: 手動レビューの工数が削減され、効率的にセキュリティ管理が行えます。
GitHub Actionsを活用した自動化により、スマートコントラクト開発者はコードのセキュリティや品質管理を継続的に行えるようになります。OpenAIのAPIを活用することで、一般的な脆弱性の検出や最適化提案が得られ、より安全で信頼性の高いスマートコントラクトを開発するための支援ツールとして機能します。