Gemini CLIで実現する「感情を排した」S&P 500投資判断:マクロ指標を自動集計・定量評価するスキルを作ってみた
はじめに
投資において最大の敵は「感情」です。「なんとなく上がりそう」「ニュースで不穏なことを言っていた」といった主観に惑わされず、客観的なデータに基づいて判断を下すのは、人間には意外と難しいものです。
そこで今回は、Gemini CLI/Claude Code/Codex を活用して、現在のマクロ経済指標を自律的に収集・分析し、S&P 500の投資スタンスを機械的に判定してくれるスキルを作成しました。
作ったもの
このスキルを登録すると、以下のようなことが可能になります。
- 最新マクロデータの自動取得: S&P 500、VIX、金利、為替、クレジットスプレッド、NFCIなどを一括取得
- 市場レジームの自動判定: 現在が「インフレ懸念」なのか「リセッション懸念」なのか、はたまた「通常時」なのかを自律判定
- 定量スコアリング: 各指標を -10 〜 +10 の範囲で客観的に採点
- 具体的なアクション提示: 「通常積立のみ」か「スポット買いを実行すべきか」を比率とともに提案
なぜAI × マクロ分析なのか
通常のAI(LLM)に「今は買い時?」と聞いても、「投資は自己責任です」といった一般的な回答しか得られません。このスキルでは、以下の厳格なフレームワーク(Scorecard)を定義することで、AIに投資家のような一貫性のある分析をさせています。
特徴1:4つのレジーム分類
現在の市場環境によって、同じ指標の変化でも意味が変わります。
- A. 通常 (Normal): 景気が良いので金利が上がる(ポジティブ)
- B. 地政学ショック (Shock): 戦争や紛争で原油・金が急騰(イベントリスク)
- C. インフレ再燃 (Inflation): 物価高で金利が上がる(ネガティブ)
- D. リセッション懸念 (Recession): 景気後退で金利が下がる(ネガティブ)
このスキルは、まず最初にデータからレジームを特定し、その環境に最適な採点ロジックを動的に切り替えます。
特徴2:整合性チェック(矛盾の検出)
「株価は上がっているのに、信用市場(HYスプレッド)は悪化している」といった、市場の歪みや矛盾をチェックします。矛盾がある場合は、判定を1段階保守的に下げ、信頼度(Confidence)を明記するように設計されています。
使い方
インストール
Gemini CLI
リポジトリをクローンして、スキルとして追加します。
git clone https://github.com/takurot/super-stockmarket-skills.git
gemini skill add ./super-stockmarket-skills/skills/stock-signals
Claude Code (Anthropic)
Claude Codeでも同様の SKILL.md フォーマットがサポートされています。グローバルに登録するには、以下のディレクトリにファイルを配置します。
# スキル用ディレクトリを作成
mkdir -p ~/.claude/skills/stock-signals
# SKILL.md と関連ファイルをコピー
cp -r ./skills/stock-signals/* ~/.claude/skills/stock-signals/
これで、どのプロジェクトからでも Claude に対して「S&P 500の判定をして」と頼むことができるようになります。
Codex
Codex環境(Google内部ツール等)でも、SKILL.md をロードするように設定可能です。
# Codexのスキルパスに追加
codex skill add ./skills/stock-signals
実行
エージェントに対して投資判断を仰ぎます。
# Gemini CLIの場合
gemini ask "S&P 500は今買い時?"
# Claude Codeの場合
claude "Is the S&P 500 a buy now?"
実行すると、以下のようなレポートが出力されます(イメージ)。
- レジーム判定: 現在はレジームA(通常)と判定
- 指標テーブル:
| 指標 | 現在値 | 1M前 | スコア | 加重スコア |
|---|---|---|---|---|
| S&P 500 | 5,200 | 5,000 | +1 | +1.0 |
| VIX | 14.2 | 16.5 | +1 | +1.0 |
| US 10Y | 4.2% | 4.3% | +1 | +1.0 |
| HY Spread | 3.2% | 3.4% | +1 | +1.5 |
| NFCI | -0.52 | -0.48 | +2 | +3.0 |
- 合計スコア: +7.5(強い買い)
- アクション: 積立継続 + 通常積立額の100%分をスポット購入
おわりに
このスキルの核心は、「AIに判断を丸投げするのではなく、AIにプロトコル(手順)を強制させる」ことにあります。データソースの確認から矛盾のチェックまで、人間がやると面倒なステップをAIに代行させることで、投資の意思決定を劇的に効率化できます。
ソースコードは公開していますので、自分なりの閾値や指標を追加してカスタマイズしてみてください。
免責事項:本ツールおよび記事の内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘を意図するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。