この1週間、GitHubで複数のプロジェクトを同時並行で進め、AIを活用することで個人レベルでは不可能だったアウトプット量と質を実現しました。その軌跡と、それを可能にした「AI並列開発」の力について共有します。
プロジェクトの全体像:1週間で346コミット、10リポジトリ
この1週間、10個の異なるリポジトリに対して、合計346件のコミットを行い、多数の成果をマージしました。
開発リポジトリ一覧
- takurot/real-estate-mcp (116 commits): 不動産データ関連のMCPサーバー
- takurot/sfdao (90 commits): 匿名加工・合成データ生成支援ツール
- takurot/Pyrope (50 commits): エージェント向けポリシーエンジン
- takurot/multi-ai-parallel-dev (25 commits): 並列開発オーケストレーター
- takurot/baseball-speedgun (19 commits): 野球の球速・データ分析ツール
- VOID-TECHNOLOGY-INC/PyBun (17 commits): Agent-First Python Runtime
- takurot/get-the-information (14 commits): 情報収集・要約エージェント
- takurot/utsunomiya-mcp-server (5 commits): 宇都宮観光データMCPサーバー
- takurot/mlprep (5 commits): 機械学習データ前処理ユーティリティ
- takurot/baseball-score (5 commits): スコアブック管理ツール
圧倒的な統計値の比較:人間 vs AI並列開発
一般的な高生産エンジニアのコミット数は週に10〜20件程度と言われています(中央値では週14件程度という調査もあります)。今回記録した346コミットは、その約17倍〜25倍に相当します。
これは単にコードを打つ速度が速いのではなく、AIが設計、デバッグ、タスク分割を並列でこなし、人間が「意思決定」に専念できた結果です。
AIとの共創:アイデア出しと差別化の源泉
今回の開発では、AIを単なる「コード生成機」としてではなく、「戦略的パートナー」として活用しました。既存ツールとの差別化を図るため、AIと以下のようなディスカッションを重ねました。
- 不動産MCPにおける差別化: 既存のGISツールがデータの「取得」に留まっているのに対し、AIと議論する中で「大規模地理空間データの配信効率」の重要性を特定。結果として MVT (Mapbox Vector Tile) プロトコルへの対応という高度な実装に踏み切りました。
- sfdaoにおける差別化: 単なるデータの難読化ツールではなく、最先端の GAN (Generative Adversarial Networks) を用いた合成データ生成と、その機械学習的な有用性を定量評価する TSTR (Train Synthetic, Test Real) という概念をAIが提案・具体化。これにより、ただの「ツール」から「科学的な評価プラットフォーム」へと進化させました。
「単なるスクリプト」から「複雑なミドルウェア」へ
これまでのAIコーディングといえば、簡単な便利スクリプトや関数の生成が主でした。しかし今回の並列開発では、複雑なアーキテクチャを持つミドルウェアそのものを構築しています。
- PyBun (Runtime): 依存関係管理、環境分離、CLIツールを含む完全なPythonランタイム環境。
- Pyrope (Core Engine): 高頻度アクセスに耐えるスレッドセーフなポリシー更新メカニズムと、アトミックなデータ構造スワップ。
- real-estate-mcp (Server): 数万リクエストを捌くキャッシュ戦略と、非同期処理を駆使したGIS配信サーバー。
これらは、整合性、並行性、パフォーマンス要件が厳しく、従来は「人間の熟練エンジニアが時間をかけて設計するもの」でした。SPECとPLANをAIと共有することで、こうした堅牢なシステムのコア部分までもが、AI並列開発の射程圏内に入ったと言えます。
開発を支えたAIツールと基盤
今回の超並列開発を実現するために、以下のツールを適宜使い分け、あるいは組み合わせて活用しました。
- Cursor: メインのエディタ。コードの書き換え、定義へのジャンプ、インラインでのAI対話に使用。
- Codex: コードベース全体のインデックスと高速なコンテキスト取得。
- Antigravity: 本エージェントの実行基盤。自律的なタスク遂行とドキュメント管理をサポート。
- Qwen: 高度な推論能力を持つLLM。設計の壁打ちや、数理的なロジックの実装に活用。
全プロジェクト共通の「ドキュメント駆動開発(DDD)」
これほど多岐にわたるプロジェクトを品質を落とさずに並行開発できた鍵は、AIとの徹底したドキュメント駆動開発にあります。
すべてのプロジェクトにおいて、実装前に以下の2つのドキュメントをAIと共に構築・合意しました。
- SPEC.md (仕様書): ゴール、技術選定、API仕様、エラーハンドリング、テスト戦略を定義。
- PLAN.md (実装計画): PRサイズのタスク分割、モジュール間の依存関係、完了定義を明文化。
このプロセスにより、人間は「どの機能をいつ作るか」をAIに指示するだけで、AIがその前提条件をすべて把握した状態で正確にコードに落とし込むことが可能になりました。
主な成果とハイライト
1. PyBun & Pyrope:AIエージェントのためのインフラ
- PyBun: 「Agent-First Python Runtime」として再定義。エージェントが自ら実行環境をセットアップできるワンライナー、JSONファースト出力、MCPサーバー統合などを実現しました。
- Pyrope: パフォーマンスが要求されるHot Pathのパラメータをスレッドセーフかつアトミックにスワップする「ポリシー更新メカニズム」を実装。
2. sfdao:劇的なパフォーマンス改善とML Utility
- 28倍の高速化: 距離計算アルゴリズムの最適化(sampling & KDTree活用など)。
- ML Utility (TSTR): 合成データの有用性を機械学習モデルを用いて定量評価するロジックの実装。
結論:AI並列開発で見える新しい景色
「1人で1つのプロジェクトを集中して作る」時代から、「1人で複数のプロジェクトを、AIという高度なエージェントと共に同時多発的に進める」時代へとパラダイムがシフトしています。
この1週間で出したアウトプットは、従来の開発スタイルでは1ヶ月以上かかっていたであろう質と量です。AIを「手足」そして「思考のパートナー」として使い倒すことで、個人のパワーは文字通り数十倍にまで拡張されます。
GitHubリポジトリ一覧: