CTから作った骨のSTLをBlenderで整えたあと、実際に3Dプリントしてみたときの注意点と試作品の反省点をまとめていきます。
前編: CTデータの骨を3Dプリント 【前編】DICOMデータからSTLの作成
中編: CTデータの骨を3Dプリント 【中編】STLを修正して3Dプリントしやすい形にする
印刷環境
- プリンター: Bambu Lab A1 mini
- スライサー: Bambu Studio
- ノズル:
0.4mm- 試作品は
0.2mmノズルで作成
- 試作品は
- レイヤー高さ:
0.16mm High Quality
向きを考える
まずは、どの向きを下にして印刷するかを考えました。最終的には背骨を下にした仰向けの向き で配置しました。
この向きにした理由は主に4つです。
- もろい肋骨の部分が、より多く地面から近い距離に配置される
- 正面から見た時にサポート材が裏側に来るため、剥がしたあとが目立ちにくい
- 頭が上(人間が立っている方向)よりも、少しサポート材が減らせた
- 背骨や腕など、上下に長いパーツが同じ平面として印刷される(強度がでやすい)
また、この向きで印刷する前提で、Blender側で支柱を追加する際にも鎖骨と肋骨をできるだけ垂直につなぐようにしています。
台座について
他の骨との接続が細くなっている部分がいくつかあり、サポート材を外すタイミングですぐに折れてしまいます。台座を作ることで、個々の骨の位置が台座に対して安定する効果や、パーツが接する構造が増えるなどの良い影響がありました。
特に肋骨は背骨と細い点のみで接続されているので、台座を作ることでかなり安定しました。
腕、肩甲骨、背骨、胸骨は台座に対してどれも頑丈なパーツとなり、他のパーツを支えることができるようになりました
サイズについて
最初は「A1 miniの最大幅が 180mm なので、最長辺を 175mm くらいにすればいけるだろう」と思っていました。ただ、実際にBambu Studioに入れてみると、175mm では収まりませんでした。
原因は印刷対象のサイズだけでなく、ブリムの影響です。ブリムは、造形物の周囲に薄く広がる補助部分で、ベッドへの定着を安定させるために使われます。今回の設定では、背の高さによって自動でブリムが広がるようで、ギリギリのサイズではブリムが印刷できません。
(設定で大きさを調整できるとは思いますが、今回はスライサーの推奨を使うことにしました)
最終的には、154mm くらいでかなりギリギリでした。
印刷物の高さによってもブリムの大きさが変わるようで、これまでのあまり背の高い構造を印刷したことがなかったので学びでした。
試作品と完成品
個々からは試作品の印刷設定と反省点について振り返りたいと思います。
試作ver1
CTデータから3Dのデータを作成し、あまりいじらない状態でひとまず小さめに印刷してみました。
- ノズル:0.2mm(小さいもの)
- 印刷設定:0.08mm High Quality
- 長辺の長さ: 8cm
- 印刷時間: 4時間
印刷直後、サポートがついた状態
サポートを外し終えた状態
印刷は4時間ほどで完了しましたが、小さくて脆いためサポート材を丁寧に剥がすのに2時間ほどかけました。それでも肋骨の一部が折れてしまったり、肩甲骨が透けていたり、一部サポート材を剥がすのを諦めました。
印刷時に、なぜかプレートと台座の一部がうまくくっつかずに、片側だけ台座から浮いてしまいました(が、リカバリーされて途中からは復活しました)
試作ver2
試作1の反省を踏まえて、強度を増すために背骨の前側、背中側、下側(地面側)の3面に対して壁を作り、また不要な部分(肩甲骨の後ろ側や胸骨の半分)までで切り取りました。
- ノズル:0.2mm(小さいもの)
- 印刷設定:0.08mm high Quality
- 長辺の長さ: 8cm
- 印刷時間: 12時間
印刷終了時
印刷完了時
途中で印刷が失敗しかけており、もじゃもじゃがかなり発生していました。一応、最後まで形になっていますが、糸を引きまくっているのと、プリンターの周りに大量のクズが散らばっていました。(鎖骨は弾き出され、本来の位置とは別の位置で新たな骨折をしていました)。
この原因は、印刷時の底面(背中側)に壁があることで、プレートに対してではなく印刷面の上にサポートが作成され、その部分の強度が弱かったので印刷中にサポートが一部折れて(鎖骨の部分)、空中に印刷してしまったのではないかと考えられます。
印刷した背面からサポートが生えている。
また、壁を作ったことで全体的に強度は増しましたが、サポート材まで工具が届きにくく剥がしにくくなり、前側などは肋骨の隙間から作業することが多く、結果として破損のリスクは高まったと思います。
サポート材の作成のされかた だけでなく、サポート材を剥がすときのことも考えて配置するとよいことを学びました。
完成品
- ノズル:0.4mm(標準サイズ)
- 印刷設定:0.16mm High Quality
- 長辺の長さ: 15.5cm
- 印刷時間: 17時間
試作1,2の反省を踏まえ、①CTデータの選択時にStnd 2.5mmに変更(ver1,2はBone 2.5mm)し、すべての作業をやり直し、②強度重視で補強を19箇所追加、③ノズルを0.4mmのものにして強度を上げました。
モデル本体が163gに対してサポート材が44gほど使っています。モデルが大きいため、サポート材の台座もかなり大きいものが生成されていました。まとめてサポート材を外すと本体に負荷がかかりそうだったので、サポート材をある程度の大きさで分割しながら、小さいパーツごとに外すようにしました。
大きさと補強のおかげか全体的に強度が増して、サポート材を外す際も安心感がありました。
また、肩甲骨と鎖骨を固定したサポートはかなりしっかりと機能し、見た目にもあまり気にならなかったのでこれは正解でした。
印刷は概ね成功しているのですが、背骨の一部が欠けています。原因は不明ですが、その高さでモデル全体に線が入っており、印刷する際にヘッドが引っかかって、ビルドプレートごとズレたのではないかと思います。
印刷時の注意点まとめ
- 置き方は
背骨を下にした仰向けが比較的安定した - 最大印刷サイズぎりぎりは危険。サポート込みで確認する
- 支柱を追加すると構造が安定し、かなり強固になる
- 大きいは正義
- サポート材は剥がすことも考慮してモデルを設計するのが良い
などなど、3Dプリントに対して多くの学びを得られました。
次やるとしたら試したいこと
- マルチカラー印刷できる機種で水溶性のサポート材を使いたい
- そもそも、フィギュアのような精密な構造は光造形でやるべきかも
- 骨の中が空洞なので、これを適切に埋めることで更に強度アップ
- 骨折部位・他の骨・補強 で色を分けて印刷
おわりに
試作品含め3回もサポート材を剥がしていると、「肋骨はわりと脆い」「腕はかなり強度があって安定感ある」、「背骨は上部だけど構造が複雑」「肩甲骨、形が複雑すぎて面白い」など、人体の骨格についても理解が深まりました。
GWの5日間+αを使って自分の骨格模型を作る大人の自由研究は、トライ&エラーで完成度を上げていく過程はとても楽しかったと思います。
この記事を書いている今も折れた鎖骨はしっかりつながっておらず、手術をして支柱の代わりにチタンのプレートと10本のボルトで固定されています。しばらく後にはプレートを抜く手術も控えています。。
みなさんも怪我には気をつけつつも、怪我をしてしまった際にはカルテ開示をして自分の骨を3Dプリントしてみてはいかがでしょうか。











