Summary
- Kubernetes上でMailuを構築後、Gmail・Yahooメールへの配信が拒否される問題が発生した
- Gmail向けの対処法として、Google Postmaster Toolsへの登録とドメインレピュテーション蓄積が有効である
- Yahoo向けの対処法として、送信IPアドレスに対する逆引きDNS(PTR)レコードの設定が必要である
やらないこと
本記事では、Mailuの基本的なインストール手順やKubernetesクラスターの構築方法については扱わない。また、SPF/DKIM/DMARCレコードの基本的な設定方法についても詳細は省略する。
本記事における課題
事象の概要
Kubernetes環境にHelm chartを使用してMailuを構築し、VPSで運用を開始した。SPF、DKIM、DMARCの各認証レコードをMailuの指示通りに設定したにも関わらず、Gmail及びYahooメール宛のメール配信が拒否される問題が発生した。
Gmail側で発生したエラー
Gmail側では550-5.7.1エラーコードと共に「unsolicited mail」(迷惑メール)として判定され、配信が拒否された。実際のエラーメッセージは以下の通りである:
This is the mail system at host mail.example.com.
I'm sorry to have to inform you that your message could not
be delivered to one or more recipients. It's attached below.
For further assistance, please send mail to postmaster.
If you do so, please include this problem report. You can
delete your own text from the attached returned message.
The mail system
<test@gmail.com>: host
gmail-smtp-in.l.google.com[74.125.203.27] said: 550-5.7.1 [xxx.xxx.xxx.xxx
12] Gmail has detected that this message is 550-5.7.1 likely unsolicited
mail. To reduce the amount of spam sent to Gmail, 550-5.7.1 this message
has been blocked. For more information, go to 550 5.7.1
https://support.google.com/mail/?p=UnsolicitedMessageError
d9443c01a7336-2a952206ac6si106646435ad.159 - gsmtp (in reply to end of DATA
command)
Reporting-MTA: dns; mail.example.com
X-Postfix-Queue-ID: 3A677400E2
X-Postfix-Sender: rfc822; user@mail.example.com
Arrival-Date: Sun, 08 Feb 2026 15:26:19 +0900 (JST)
Final-Recipient: rfc822; test@gmail.com
Original-Recipient: rfc822;test@gmail.com
Action: failed
Status: 5.7.1
Remote-MTA: dns; gmail-smtp-in.l.google.com
Diagnostic-Code: smtp; 550-5.7.1 [xxx.xxx.xxx.xxx 12] Gmail has detected
that this message is 550-5.7.1 likely unsolicited mail. To reduce the
amount of spam sent to Gmail, 550-5.7.1 this message has been blocked. For
more information, go to 550 5.7.1
https://support.google.com/mail/?p=UnsolicitedMessageError
d9443c01a7336-2a952206ac6si106646435ad.159 - gsmtp
このエラーは、Gmailが2024年2月から施行している厳格な送信者要件に関連している。新しいドメインやIPアドレスからの送信において、レピュテーションが蓄積されていないことを意味する。
Yahoo側で発生したエラー
Yahoo側では553エラーコードと共に「VS98-IP1 deferred」エラーが発生した。実際のエラーメッセージは以下の通りである:
This is the mail system at host mail.example.com.
I'm sorry to have to inform you that your message could not
be delivered to one or more recipients. It's attached below.
For further assistance, please send mail to postmaster.
If you do so, please include this problem report. You can
delete your own text from the attached returned message.
The mail system
<test@yahoo.co.jp>: host mx2.mail.yahoo.co.jp[124.83.237.247] said:
553 Mail from xxx.xxx.xxx.xxx not allowed - VS98-IP1 deferred - see
https://support.yahoo-net.jp/PccMail/s/article/H000007342 (in reply to RCPT
TO command)
Reporting-MTA: dns; mail.example.com
X-Postfix-Queue-ID: 078F0400D7
X-Postfix-Sender: rfc822; user@mail.example.com
Arrival-Date: Wed, 08 Apr 2026 16:17:55 +0900 (JST)
Final-Recipient: rfc822; test@yahoo.co.jp
Original-Recipient: rfc822;test@yahoo.co.jp
Action: failed
Status: 5.0.0
Remote-MTA: dns; mx2.mail.yahoo.co.jp
Diagnostic-Code: smtp; 553 Mail from xxx.xxx.xxx.xxx not allowed - VS98-IP1
deferred - see https://support.yahoo-net.jp/PccMail/s/article/H000007342
このエラーは、送信IPアドレスに対する逆引きDNS(PTR)レコードが適切に設定されていない場合に発生する典型的な問題である。
やったこと
逆引きDNS(PTRレコード)について
逆引きDNSの概要
逆引きDNS(PTRレコード)は、IPアドレスからホスト名を調べる仕組みである。通常のDNS(正引き)がドメイン名からIPアドレスを調べるのに対し、逆引きはIPアドレスからドメイン名を調べることができる。
PTRレコードの書式
PTRレコードは以下の書式で記述される:
[IPアドレスの逆引き用表記] IN PTR [ドメイン名]
例えば、IPアドレス 192.168.1.1 の場合:
- IPアドレスの各オクテットを逆順に並べる:
192.168.1.1→1.1.168.192 - IPv4の場合は
.in-addr.arpa.を付与する:1.1.168.192.in-addr.arpa.
最終的なPTRレコードは以下のようになる:
1.1.168.192.in-addr.arpa. IN PTR mail.example.com
メール送信における重要性
PTRレコードは、メール送信において送信者の身元認証として重要な役割を担っている。受信側メールサーバーは以下の観点でチェックを行う:
- 送信元IPアドレスにPTRレコードが設定されているか
- 送信元IPアドレスから逆引きしたホスト名のAレコード(IPアドレス)と、送信元IPアドレスが一致しているか
- 送信元IPアドレスから逆引きしたホスト名と、送信元SMTPサーバーのホスト名が一致しているか
特にGmail、Yahoo、Microsoft等の主要メールプロバイダーは、有効なPTRレコードのないメールサーバーからのメールの受信をブロックする可能性がある。
SPF/DKIM/DMARCの確認方法
DNSレコードの存在確認
まず、Google Admin ToolboxのDigツールを使用してDNSレコードが正しく設定されているかを確認する:
- Google Admin Toolbox Digにアクセス
- 名前欄にドメイン名を入力
- レコードタイプ(TXT、MX等)を選択
- 結果の「VALUE」欄で設定値を確認
SPF/DKIM/DMARCレコードの文法確認
dmarcianの無料オンラインツールを使用して、各レコードの文法をチェックする:
SPF確認
- SPF Surveyorにドメインを入力
- 問題がない場合は結果が緑色で表示される
- DNSルックアップ回数(上限10回)も確認できる
DKIM確認
- DKIM Inspectorでドメインとセレクタを入力
-
Mailu Helmチャートの場合、デフォルトのセレクタは
**dkim**である - 問題がなければ緑色で表示される
DMARC確認
- DMARC Inspectorにドメインを入力
- レコードの文法と設定内容をチェック
実メール送受信による確認
実際にメールを送受信して認証状況を確認する方法:
- Gmailアドレスにテストメールを送信
- 受信したメールを開く
- 送信元の三点リーダーから「メッセージのソースを表示」を選択
- SPF/DKIM/DMARCの項目が全て「PASS」になっていることを確認
Gmail配信問題への対処
Google Postmaster Toolsへの登録
Gmail配信問題の解決のため、Google Postmaster Toolsにドメインを登録することから始めた:
-
ドメインの追加: Postmaster Toolsのコンソールにアクセスし、メール送信ドメイン
example.comを追加した - DNS検証レコードの追加: Googleから提供された検証用TXTレコードをMyDNSに追加し、ドメインの所有者確認を完了した
- 監視期間の設定: 登録完了後、約1週間の監視期間を設けた
レピュテーション蓄積の実施
Google Postmaster Toolsへの登録後、段階的にレピュテーションを構築した。具体的には、1日1通程度のテストメールを送るようにした。この期間中、送信したテストメールの配信状況が監視されることで、Gmailのアルゴリズムに「正常な送信者」として認識されるよう努めた。
1週間後の再送信テストでは、同一内容のメールが正常に配信されることを確認できた。これは、ドメインレピュテーションの改善とGoogle側での信頼度向上によるものと考えられる。
Yahoo配信問題への対処
逆引きDNS(PTR)レコードの設定
Yahoo配信問題については、先述のGoogle Postmaster Toolsへの登録では解決せず、VPS管理画面から送信IPアドレス xxx.xxx.xxx.xxx に対する逆引きDNSレコードを設定した。多くの一般的なVPSサービスでは、管理画面から直接PTRレコードの設定が可能と思われる。
- VPS管理画面での設定: 利用しているVPSサービスの管理画面にログインし、VPSサーバーの設定画面から逆引きDNS設定を行う
-
ホスト名の指定: 逆引き時に返されるホスト名として
mail.example.comを指定 -
設定反映の確認:
dig -x xxx.xxx.xxx.xxxコマンドで逆引き設定が正常に反映されていることを確認
$ dig -x xxx.xxx.xxx.xxx
xxx.xxx.xxx.xxx.in-addr.arpa. 3600 IN PTR mail.example.com.
逆引きDNS設定完了後の再送信テストでは、Yahoo側でのエラーが解消され、正常に配信されることを確認した。
まとめ・所感
解決策の効果と考察
今回の経験から、メール認証の技術的設定(SPF/DKIM/DMARC)だけでは、主要メールプロバイダーへの確実な配信は保証されないことが明らかになった。
Gmail の場合、2025年以降の厳格な送信者要件により、新規ドメインは自動的に疑わしい送信者として扱われる傾向が強まっている。Google Postmaster Toolsへの登録と適切な監視期間の設定により、段階的にレピュテーションを構築することが重要である。
Yahoo の場合、従来から重視されている逆引きDNSの設定が配信可否の決定要因となっているに見受けられる。Yahooのポリシーとして明示されてはいないが、今回は対応が必須であった。
運用上の注意点
- 段階的な運用開始: 新規メールサーバーの運用開始時は、少量のテストメールから始め、段階的に送信量を増やすことが重要である
- プロバイダー固有の対応: Gmail、Yahoo等の主要プロバイダーはそれぞれ異なる要件を持っているため、個別の対応策が必要となる可能性がある
- 継続的な監視: Postmaster Toolsやその他の監視ツールを活用し、継続的にメール配信状況を監視することが重要である
参考リンク
- Google Postmaster Tools
- Gmail Email sender guidelines
- Yahoo Mail sender guidelines
- Mailu Documentation
- Google Admin Toolbox Dig
- SPF Surveyor - dmarcian
- DKIM Inspector - dmarcian
- DMARC Inspector - dmarcian
- PTRレコードは何のために設定するの? DNSの逆引きとメール送信の関係について - ベアメールブログ
- ステップごとに解説!SPF/DKIM/DMARC設定をチェックする方法 - SendGridブログ