はじめに
私は営業 → エンジニアを経て、いまは技術人事をしています。
今回は、一次面接官から最終面接官(役員)への「申し送り」を、Notion AIで"一目でわかる1枚シート"にした話です(実際は一次と最終の間に二次面接などが入ることもあります)。
大したシステムを組んだわけではなく、プログラミングも一切していません。
それでも現場が少し便利になったので、同じように人事・採用で「申し送り」「引き継ぎ」に困っている人の参考になればと思って書きます。
そもそもNotion AIでスキルが作れる
Notion AIには、Claude の「Skills」のように、自分専用のコマンド(スキル)を作っておける機能があります。
「この手順で、この形式で出力してね」という指示を記載し、AIスキルとして使用と設定するだけで使えます。毎回プロンプトを書かなくても、決まった仕事を決まった品質でやってくれます。
しかもNotion AIの中身は Claude Opus 4.8 などの最新モデルが選択できるのが魅力的ですね。
今回はこの「スキル」機能で、申し送りシートを作る専用コマンドを用意しました。
何に困っていたか
ナハトの選考フローはこうなっています。
- 一次面接:Google Meetで実施、議事録が残る
- 面接官が HERP(採用管理ツール)に評価を記入
- 最終面接(役員):履歴書・職務経歴書・適正検査結果を バインダーで挟んだ 紙 で見ながら実施
ここでボトルネックだったのが、1→3の「申し送り」がSlackのテキストだったこと。
- 役員は分単位で忙しく、長文を読む時間がない
- 文字が多く、結局どこを見ればいいのか分からない
つまり「情報はあるのに、最終面接の直前に頭に入らない」状態でした。
なぜ Notion AI だったのか
候補は色々ありましたが、最終的に Notion AI を選びました。理由はシンプルです。
- 全社員にNotionが付与済み → 新しいツールの導入・教育コストがゼロ
- Notion AIはトークン数が実質無制限 → 議事録+評価を気にせず読ませられる
- そのうえで Claude Opus 4.8 などの最新モデル が使える
「非エンジニアが、いつもの環境のまま、追加課金もアカウント発行もなしで使える」
これが現場浸透のうえで決定的でした。
どんなに良いツールも、使ってもらえなければゼロなので。
作ったもの
一次面接の情報を放り込むと、こんな1枚のレポートが出てきます。(※デモデータです)
読ませているのは次の2つだけ。
- 一次面接の Google Meet 議事録
- 一次面接官が HERPに記載した評価項目(ナハト独自の評価軸 + 総合推奨)
出力は 単一のHTMLファイル。Notionページに埋め込んであるので、そのまま閲覧でき、印刷して面接に持ち込めるようにしました(理由は後述)。
レポートは6セクションに固定しています。
- ヘッダー(氏名・ポジション・総合推奨)
- 候補者サマリー(転職理由 / 転職軸 / 将来像 / 志望理由)
- ナハト独自の評価軸 — グレードのみの表
- 強み・懸念サマリー
- 申し送り(まだ聞き出せていない要素)
- 付随情報(年収・入社希望月・他社状況 など)
こだわった点
ここからが本題です。「Notion AIに丸投げ」では、この品質になりませんでした。
人の評価を扱うツールなので、AIの自由度をあえて削る方向で設計しています。
1. フォーマットを"ガチガチ"に固定して、表記ゆれをなくした
最初の壁が 出力の揺らぎ でした。
同じ指示でも、配色が変わる・列構成が変わる・勝手に汎用デザインが生成される……。
毎回見た目が違うと、役員が毎回レイアウトを読み解くことになり、「一目でわかる」が成立しません。
そこで方針を変えて、完成済みのHTML/CSSテンプレートを1文字も改変させず、AIには 〔〕 で囲った中身(テキスト)だけを差し替えさせるようにしました。
スキルの冒頭に、こういう"禁止事項"を最重要ルールとして置いています。
【最重要・厳守】固定テンプレートを丸ごとコピーし、〔〕内のテキストだけを差し替える。
- 固定HTML/CSSテンプレートを1文字も改変せずそのままコピーして出力する。
- 差し替えてよいのは〔〕で囲まれた内容(テキスト)だけ。
- 独自デザイン・別配色・汎用スタイル等を生成することを禁止する。
「AIに考えさせない部分」を決め切るのが、業務ツールでは品質を安定させる近道でした。
2. AIに盛らせず、根拠のない項目は「未確認」と明示させる
人事の申し送りで一番こわいのが、AIがそれっぽく話を盛ることです。
議事録にない強みを勝手に書かれたら、候補者の評価を歪めかねません。
なので、ルールをこう固定しました。
- 議事録に根拠がある項目だけ書く。推測で埋めない。
- 情報がない項目は「議事録上 未確認」とそのまま表示する(無理に埋めない)
なんでも書いちゃうAIの性質をルールで抑え込んだ形です。
きれいに全部埋まったレポートより、確認できたことだけが書かれたレポートのほうが、何倍も信用できます。
3. 紙文化に合わせて、A4印刷を最適化した
最終面接では、あえて画面を挟まず、紙の履歴書・職務経歴書を見ながら話すというのがナハトのスタイルです。候補者の方とまっすぐ向き合う時間を大事にしたい、という考えからきています。
なので申し送りシートも「画面で見るもの」ではなく「印刷するもの」として設計しました。
具体的には印刷用CSS(@media print)を入れ、A4・1枚に収まるように余白やフォントサイズを別途調整しています。
@page { size: A4; margin: 9mm; }
@media print {
body { font-size: 10px; line-height: 1.38; }
section { break-inside: avoid; } /* セクションが途中で切れないように */
/* ...印刷時だけ余白・サイズを詰める... */
}
4. HERP評価の"ラジオボタン"を、画像で正しく読ませた
地味につまずいたのがここ。
HERPの評価(総合推奨・各評価軸のグレード)はラジオボタン形式で、複数の選択肢が並んで見えます。
AIにテキストだけ渡すと、並んでいる選択肢のうちどれが選ばれているのか判別できない(最悪、全部選ばれているように扱う)ことがありました。
対策として、
- 採用するのは「●(塗りつぶされた丸)が付いた選択肢だけ」とルール化
- 「○(空の丸)」は未選択として無視
- 選択肢がテキストで並んでいるだけなら選択値ではない。塗りつぶし状態を画像で必ず確認してから書く
- 出力前に「●が付いていた選択肢」をもう一度自己チェックしてから確定
要は「テキストで読むな、画像で見ろ、そして見直せ」を指示に明文化しました。AIに画面を読ませるときの、地味だけど大事な落とし穴だと思います。
失敗談・試行錯誤
きれいに一発で動いたわけではありません。
いちばん厄介だったのが 「ファイルにならない問題」 です。
「HTMLファイルを作って」と頼んでいるのに、チャットにHTMLのコードがそのままベタ貼りされて終わることが何度もありました。エンジニアなら「これをファイルに保存して開けばいい」と分かりますが、非エンジニアの現場にコードの塊を渡しても、何もできません。
ここで効いたのが、Notionはアップロードした単一HTMLファイルを、ページ内でそのまま表示できるという点です(意外と知られていないかもしれません)。
そこでスキルの仕事を「HTMLを書く」ではなく、こう定義し直しました。
- 単一のHTMLファイルを生成する
- 新しいNotionページを作り、そこに
<embed>でファイルを埋め込む - Notion内でそのまま閲覧でき、ファイルのダウンロード(→印刷)もできる
「コードを出して終わり」ではなく「受け取った人がそのまま使える状態」までをゴールにしたことで、ようやく現場で回るようになりました。
非エンジニアでも作るための再現ポイント
-
AIに考えさせる範囲を最小化する
レイアウトや構成は人間が先に固定し、AIには「中身のテキストだけ」を任せる。これだけで出力が安定します。 -
盛らせないルールを最初に書く
「根拠がない項目は埋めず『未確認』と書く」。たった一文で、AIの暴走を大きく防げます。 -
アウトプットのゴールを成果物で指定する
「コードを出す」ではなく「Notionに埋め込まれたファイルにする」まで指定する。受け取る人がそのまま使える形を終点にする。 -
現場の文化に合わせる
うちの場合は最終面接の場合は「紙で見る文化」なのでそこに合わせました。
(もちろんそれ以外の場所では紙媒体はほとんど使いません笑)
テンプレートさえ一度作ってしまえば、あとは議事録を貼るだけです。
おわりに
- 全社員が使えるNotion AIを土台に選び
- フォーマットを固定して表記ゆれを消し
- 根拠のないことは書かせず
- 紙の文化に合わせて印刷まで設計した
プログラミングをしなくても、業務を分かっている人がAIの枠組みを設計すれば、現場で使えるツールは作れます。
いい時代になりましたね。
同じように「申し送り」「引き継ぎ」で困っている人事・採用の方の、何かのヒントになれば嬉しいです。

