はじめに
こんにちは。LITALICOにQAエンジニアとして所属しています@take_takehiroです。「障害福祉サービスを展開する事業所様向けの請求業務支援システム」に関わらせてもらっております。本記事は、LITALICO Advent Calendar 2025の1日目の記事となり、普段の業務ではなく、最近思ったことを「主観たっぷり」な記事にしてみました。真面目半分冗談半分で読んだ頂けますと幸いです。
毎年10月後半以降、年末調整に苦しめられる!!
多くの方は、10月後半に年末調整を行っていると思います。そんな年末調整、下記のようなことが起こっていないでしょうか?
- (意図的に年末調整を行わない限り)毎年対応しますよね?
- そして、毎年同じようなこと入力しますよね??
- なのに、思っていた以上に対応時間がかかりますよね???
そうなのです。毎年同じようにやれば良いだけの話なのです。なのに、いざ年末調整をやると、とっても時間がかかってしまうのです。毎年同じこと思うんです、「今年苦しんで入力したのだから、来年は簡単に終わるだろう」と。そんな希望も時間が経つときれいサッパリ消えてしまっており、「今年も苦しまねば」となる訳です。
年末調整って、なぜ大変?
なんで年末調整って大変なのかな?って思い、思い当たる節を列挙してみました。
- 年に1回の作業なので、前回やったことはきれいに忘れている
- 必要な情報を収集してから、年末調整を提出するまでの時間がとても短い
- 毎月の給料から税金が天引きされているのに、なぜ年末調整を改めてやる必要がある?
- なぜ来年の納税情報をわざわざ申告する必要ある?(税金高すぎるよ。)
- 何が対象/非対象か判断するのが逐一面倒
- 地味に出てくる言葉が難しいし違いが分からない(当たり前のように出てくる「控除」って言葉、年末調整と確定申告以外で出てくる?この言葉の意味に毎年おどおどしております)
細かいこと言えば、更に思い当たる節が出てくると思います。ここまでを通して、
「年末調整の価値を実感出来にくいため印象が薄い」
ということなのかなと思いました。
私自身LITALICOに入社して4年目になるのですが、入社以来同じシステムで年末調整の対応を行っており、更には項目によって前年の入力情報を引き継いでくれるという、とても素晴らしい仕様を提供してもらってます。それでも困ってます。続けて、毎年同じ作業をすれば良いはずのに、なぜ毎年はじめましてになってしまうのか考えてみました。要因は様々だと思いますが、下記のようなことは誰にでも共通なのかなと思ってます。
- 年に1回の作業だから、単純に前回実施した内容のことを忘れてしまう
- 給料/生命保険/住宅ローンなど種類があっても、どれも「お金」のことを登録することになるため、年末調整の入力でも同じような作業を繰り返し行う感じになり違いを感じにくい
- 給料から税金が天引きされるので、年末調整という機会があっても税金について真剣に考える気にならない
申告者が年末調整の価値を実感出来てない
皆さまは「年末調整の価値を教えて」と言われて、速やかに言うことは出来ますか?筆者は調べるまでは「確定申告を免除するため」と誤った解釈をしてました。国税庁のHPに年末調整を行う意義が下記の通りの記載がありました。
年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
この一言こそが年末調整の価値です。ただし、実際には「源泉徴収された税額の年間の合計額」と「年税額」の乖離が大きいということはほとんどないのかなというのが現実だと思うので、年末調整の価値は実感しにくいと感じてます。
年末調整に対する、申告者が欲しい「価値」VS国税庁が考える「価値」に乖離があるかもしれない
先で書いた年末調整が大変だと思う理由について、一部抜粋して「申告者がこうして欲し価値もしくは不満」と「国税庁が届けたい価値」を表にまとめてみました。
| 年末調整が大変だと思う理由 | 申告者が欲しい価値もしくは不満 | 国税庁が伝えたい価値 |
|---|---|---|
| 年に1回の作業なので、前回やったことはきれいに忘れている | 前回作業を忘れても問題なく対応出来るようにしたい | 最低限の入力さえあれば後は計算するよ |
| 毎月の給料から税金が天引きされているのに、なぜ年末調整を改めてやる必要がある? | 天引きされているのに改めて申告する意味なくね? | 多く徴収してしまった税金を返金するための情報で必要だよ(税金の追納も・・・) |
| 何が対象/非対象か判断するのが逐一面倒 | 病院で支払っても医療費控除の対象/非対象が出るとか罠でしょ | 国民全員が憲法に記載されている最低限の生活を保護することが目的だからね |
| 地味に出てくる言葉が難しいし違いが分からない | 言葉に親和性がないし似た言葉が多いから区別がつかない | 短い言葉で伝えることが出来るから文字数を減らせる |
表にして思うのが「申告者がこうして欲し価値もしくは不満」について、国税庁としても無関心ではなく、どうにかして価値提供しようとしているように感じました。例えば「年に1回の作業なので、前回やったことはきれいに忘れている」について、申告者の「情報を集めて計算するのが大変」について、国税庁は「最低限頑張って!!後はどうにかする!!」的なニュアンスが伝わってくる気がしており、申告者の負担を減らす意気込みはある雰囲気です。他の大変に思うことも同様なのかなと思いました。が、やはり上記のような不満があったりすると「国税庁の価値が申告者に届いていないのでは?」と考えざるを得ないので、価値のアピールを盛大にやっても良いのかなと思いました(筆者ももっと年末調整のありがたみを知るべきだぞ・・・)。
届けたい価値を変換してみる
「届いてない年末調整の価値をぜひ申告者に伝えたい!!」ということで、「年末調整が大変だと思う理由/そこから見える課題/どうすれば解決できる?(価値表現の仕方)」を表にまとめてみました。
| 年末調整が大変だと思う理由 | そこから見える課題 | どうしたら問題が解決できる?(価値表現の仕方) |
|---|---|---|
| 年に1回の作業なので、前回やったことはきれいに忘れている | 前回作業をきれいに忘れてしまうこと | 忘れないand作業が単純である印象を残す |
| 毎月の給料から税金が天引きされているのに、なぜ年末調整を改めてやる必要がある? | 「源泉徴収された税額の年間の合計額」と「年税額」の差が小さいから年末調整の必要性を感じない | 年末調整の作業時に差額が可視化されることで作業成果を実感する |
| 何が対象/非対象か判断するのが逐一面倒 | 非対象のものを対象として申告してしまった時のペナルティが怖い | 日対象内容を誤って申告しようとしても、申告者自身が気付ける工夫をする |
| 地味に出てくる言葉が難しいし違いが分からない | 言葉が難解もしくは似た言葉が多い。違いを理解しきれない。 | 年末調整以外の場面でも出てくる言葉に触れることで親和性を上げる |
考え方としては十人十色あるかと思いますが、筆者の考えとしては「年末調整の作業時に差額が可視化されることで作業成果を実感する」ことが、年末調整の特に重要な価値と考えました。
「価値」と「価値表現」は似ているが少し違う
ここで、年末調整からエンジニア視点の話を挟みたいと思います。アジャイル開発では、ユーザーストーリーを立てて、提供したい価値を定義して開発を行うことが多いと思います。LITALICOでも同様のやり方をしているチームが多い印象です。その中で「価値」と「価値表現」を混在してしまう場合があるのかなと感じてます。例えば、新横浜駅から品川駅に移動したい人がいて、その人に「労力なく移動できる」ことを価値とした時に、その価値を表現するには様々な交通手段があげられます。金額など考慮すれば、下記図のようになります。
ここで気を付けるべきなのは、価値を「労力なく移動できる」としている以上「新幹線/在来線/タクシーを使う」自体が価値ではなく価値表現と考えることです。「労力なく移動できる」が主たる目的なので、それが達成出来れば、新幹線/在来線/タクシーのどれを利用しても問題ない訳です。そのどれを選ぶかを判断するためには、新たに価値基準を設定(例えば「いち早く品川駅に到着する」など)することになります。価値表現の一つにした「新幹線を使う」を価値とするのであれば、「乗車券分のお金を稼ぐ」「新幹線の乗務員になる」といったことが価値表現になります。
年末調整は価値表現が足りてない?
先にも述べている通り、年末調整の価値は「源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続」と定義されています。ただし「年末調整の存在意義は実感しにくい」と記載した通りで、「年末調整の価値を実感しにくい→価値表現が十分ではない」と考えました。価値表現が十分でない理由としては「「源泉徴収された税額の年間の合計額」と「年税額」の乖離が小さいことにより労力の割に効果が小さい」ということだと思います。この実感しにくい点をいかに実感させれるか、この点について価値表現が足りないのではと考えました。ただし小さい効果を大きくする訳にはいかないので、「小さい効果をいかに認知してもらうか」が主たる着眼点になりそうです。これまでの内容を基に、足りてない価値表現にたどり着くまでの流れをまとめてみました。
まとめ
年末調整を題材に「価値」と「価値表現」を区別する必要性を説いてみました。2つの言葉は違うことが明らかだと思いますが、いざ作業すると、混在しやすいポイントだと思います。混在すると要求から洗い出しだすと「本来提供したい価値」が「こんなことも出来ると良いな」のWANTにつながり、そのWANTから更なるWANTにつながり、結果として「本来提供したい価値」から距離があるものをリリースすることにつながりかねません。本記事を読んで、「価値」と「価値表現」を明確に区別して「本当に届けたいもの」からぶれない意識を持てるようになれたらと思ってもらえたら幸いです。

