調査の目的
私たちのチームは、ユーザーが生命保険の情報収集や加入を行う際に利用するプロダクト・サービスの検討や開発を行っています。
活動の一環として、今後のアイデア創出に活用できる情報収集を目的として調査を実施することとしました。
調査の方針
問い = 海外の保険体験に関わるサービスは、どのような特徴があるか?
私たちのチームは、過去に国内サービスに関する事例調査を行い、一定のナレッジを蓄積していました。国内のサービスは、事業遂行上の規制の関係でどれも類似するようなコンテンツが多く、新たな差別化要素が生まれづらい状況にあると感じていました。
そこで、国内の調査から離れて、他国のサービスに国内とは異なる顕著な特徴があるのではないか?との期待から問いを設定しました。
着眼点 = UX/UI に関する特徴を導き出したい
事例調査は、マクロ/ミクロ観点など様々な観点での実施が考えられますが、限られた期間・メンバーで、踏み込んだ調査を行うために、チームが持つケイパビリティであるUI/UXの観点で特徴を調査することにしました。
調査範囲 = 2週間で最大限効果を出す範囲を設定する
期間に制約を持って、その中で効率的に調査や考察を行うために、以下のような条件を設定して開始しました。
- 対象国:民間保険の収入保険料ベース上位5カ国+周辺国を加えて選定
- 対象サービス:保険の情報収集〜加入に関するサービス&各国のシェアが高いサービスを中心とする(スタートアップなど小規模サービスは、期間内に対象を均質に抽出しづらいため)
調査手順
調査結果をもとに、関係者が調査内容をどのように捉えたか、フィードバックをもらうことを狙いとしました。
そのため、チームメンバーで事例収集を行い特徴に関する考察を加えた上で、調査結果をインプットとしたアイデア創出のためのワークショップを計画しました。
STEP1:対象国設定・サービス事例収集
対象国・対象サービス
調査範囲に従って、下図に示す通り、調査対象のサービスを選定しました。それぞれ実際に利用してみて(可能な範囲で)、画面を記録しました。
対象機能
日本のサービスと比較することも加味して、以下の機能を各サービスから抽出しながら、特徴を調査しました。
- 保険商品のランキング
- 保険商品の比較表
- 保障/商品診断
- 保険申込
- その他、各サービスに特徴的なものがあれば加える
STEP2〜3:特徴の抽出/考察の実施
調査の結果、国内のコンテンツと比較して、下記特徴があることが分かりました。
①CV(コンバージョン)に至るまでの動線がシンプル
国内のサイトと比較して、保険申込までに必要なステップが少ないという特徴がありました。
ターゲットユーザーの保険加入に関する動機やニーズが強く、サイト利用の目的がはっきりしているため、意思決定に時間をかけない傾向があるのではないかと思いました。
②ユーザーファーストなコンテンツが多い
ユーザーが求める情報や、比較行動に対しての実現のレベルが高いと感じました。国内では制約(保険業法)により、そのまま実現できない点が散見されました。
③個人情報/保険に対する意向を早期に入力させる
国内では保険申込の局面でユーザーが入力するような情報を、情報収集や比較検討を行う際に入力させる事例が多くありました。また、入力した情報はそのまま保険申込で活用されるため、申込手続きの際の手間が少ないことが特徴でした。
他の特徴と同じく、ユーザーの動機が強く、より詳しく確実な保険選びをしたいというニーズに応える仕組みになっていると考えました。
参考:レポートのまとめ方
抽出した特徴ごとに、提案価値と国内に導入した際のユーザーの行動変化を考察し、レポートにまとめました。
リンク先でレポートを閲覧できます
STEP4~5:関係者とのワークショップ
ワークショップのフレーム
チーム外へのリサーチ結果の共有を行い、ラウンドロビン※のフレームワークを元に国内導入時の障壁と回避手段を考えるワークショップを実施しました。
事例紹介を受けて「ふ~ん」と終わってしまうような受動的で一過性に終わらないように、導入時の障壁や回避方法を検討するインタラクティブなワークを参加者と一緒に行うことで記憶に残るようにしました。
※ラウンドロビンについて詳しくは以下の記事を参照してください。
内容の紹介
事例紹介が終わった段階で参加者に興味のある事例に投票していただき、3つの事例に絞り込んで「日本のサイトに導入しようとしたら障壁はなにか?」「障壁を回避する方法はないのか?」という観点で深堀りを行いました。
例えば、比較表で優位な項目をハイライトする機能に対しては「項目の表記方法が様々なので、表記の統一や評価ルールが大変」「募文や保険業法における、公平性の制約に引っかかる恐れがある」という障壁が挙がり、それに対して「ユーザー側で比較表に手動でハイライトをつける機能にする」という回避方法が提案されました。
参加者からのコメント
ワークショップの最後にプラス・デルタフレームワークで感想を記入してもらいました。
+プラス(良かった)の感想としては
- 国内の事例との違いがわかって新鮮
- 導入障壁について視野が広がった
- ワークによって新しいアイデアが考えられた
Δデルタ(改善策)の感想としては
- 障壁(業法や規制)の調査と回避方法を継続して考えたい
- 海外と日本のユーザーの違いが知りたい
- ワークの事前共有あれば、もっと深く検討できたかも
- 時間が足らず、消化不良
といった意見が挙がりました。
調査内容やワークに対するプラスの意見と、今後の調査に対する期待をフィードバックいただけたため、とても良いワークショップになりました。
リサーチ活動全体のふりかえり(メンバーコメント抜粋)
今回の調査活動に関する改善を目的に、調査メンバーでふりかえりを行いました。FunDoneLearnフレームワークに、もやっとしたこと(Moyami)を足し合わせて実施しました。
Fun
- 海外の状況を想像しながら、UXの背景を考えるのが楽しかった
- 海外の文化や保険制度を調べるの面白い
- 日本と海外の代理店サイトの構造の違い、UXや表現の差異が見えた
Done
- 調べ始める前に、関係者からフィードバックを受けるなど、機動的に動けた!
- もりもりなワークショップだったが、計画通り進んだことと、良し悪しのFBを多くもらえた
Learn
- 保険業界でも情報過多にならず、審美性のあるWebサイトを構築している事例に触れられた
- 日本の保険ニーズが他国より弱いと感じた
- 海外は目的に対してストレートであり、日本は「日常の不便・不満」を甘んじて許容してしまう文化だなと、改めて感じた
- 事例紹介だけでなく、問いのワークとセットになることで、事例に対する背景を深く意識してもらえる気がする
- 時間が経つと忘れてしまうんだろうと思っていたが記事作成をすることで後々に残すことができた!一人だとちょっとめんどくさく感じてしまうがチームならできる
Moyami
- 日本の方が様々な目的を持った人に対応できるサイトになっており、体験が進んでいる気がした
- 当初↑のように思ってたけど、日本の環境・価値観で見てるからかも?
- 海外サービスのユーザにはどのような不満があるのだろうか?ユーザにサービスが一定受け入れられている前提で評価したが、気になるところ
- ユーザの状況や目的に対する仮説まで立てたかった
- ワークショップは、情報共有を事前に行うことで、意見出しのワークをもっと多く取れたかも
- リサーチは目的が明確になっていないと、結果のみから何かを導きだそうとしてしまう。ユーザーを決めた方がリサーチクエスチョンがよかったかも?
まとめ・今後に向けて
アイデア創出に活用できる情報収集と、関係者を巻き込んでフィードバックを得ることができたため、目的を満たす活動ができたと思います。
次にどのような調査がしたいか?をメンバーで対話したところ、組織の目標であるプロダクト創出やプロダクト開発ができる組織を作ることに繋がるリサーチをしたいという意見が多くが上がりました。今後は組織で開発しているプロダクトに直結するリサーチを進めていきたいと考えています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。