はじめに
はじめまして。ニッセイ情報テクノロジー株式会社 プロダクト・サービス事業推進室の青木と申します。 昨年に引き続き、今年で2年連続のアドベントカレンダー参加となります。
本記事は「ニッセイ情報テクノロジー Advent Calendar 2025」の記念すべき1日目の記事です。これからクリスマスまで、当社の多様なメンバーが記事を繋いでいきますので、ぜひ楽しんでいただければ幸いです。
さて、私は普段、保険会社様向けに生成AIを活用したコンサルティングサービスを提供しています。 日々、お客様のバックオフィス業務(事務手続きや管理業務など)へのAI導入をご支援する中で、「ある種の誤解」や「ハードルの高さ」を感じていらっしゃる方が多いことに気づきました。
本日は、生成AI導入の現場で得た「データ準備とリテラシーに対する等身大の向き合い方」についてお話しします。
1.「完璧なデータ基盤」を待つ必要はない
『AIを活用するには、まずはデータを集めて、AIが学習しやすいように綺麗に整形しなければならない』
そう考えている方は非常に多いのではないでしょうか。 これは、従来のAI(予測AIや識別AIなど)においては正解であり、大量の学習データがなければ精度が出ないため、データ整備がプロジェクトの成否を分けました。
しかし、生成AIの活用において、最初から完璧なデータ整備を目指して、過剰に反応する必要はないと私は考えています。
多くの企業では、「まずは自社のあらゆる業務マニュアル、保険約款、契約内容などのデータを統合した『叡智の結晶(データベース)』を作り、そこからAIを活用しよう」という壮大なステップを描きがちです。 もちろん、将来的にはそのような基盤整備は非常に重要です。しかし、それを待っていては、いつまで経ってもスタートが切れません。基盤構築には多大な時間と開発コストがかかるからです。
2.解きたい業務で扱う情報のみに着目する
私がご支援している保険会社様のバックオフィス業務には、システム化が見送られてきたような、人手による雑多な業務が山のように存在します。
- 申込書の不備チェック
- 特定のケースにおける規定やルールの確認
- 過去の取扱履歴を参考にした回答文の生成
これら一つひとつの業務を生成AIで効率化しようとしたとき、必要な情報は実は限定的です。 参照すべきは「関連する1〜2個の業務マニュアルや契約内容」と「請求内容」だけで済むことがほとんどです。
言い換えると、全社のデータを統合しなくても、「その業務に必要な限定的な情報」さえ生成AIに渡せば、十分な効果が得られるのです。 基盤整備は足元で進めつつも、まずは目の前の小さな業務に必要なデータだけを切り出して、スモールスタートで使い始める。これが、現場で成果を出すための最短ルートです。
3.リテラシーは「AI自身」が持っている
もう一つ、現場でよく耳にするのが「何に生成AIを活用すればいいのか分からない」「まずは社員のAIリテラシーを上げなければ」という声です。
これについても、難しく考える必要はありません。 なぜなら、リテラシー(知識や活用能力)は、生成AI自体が持っているからです。
「この業務は生成AIで効率化できそうですか?」 「このマニュアルを使ってチェック業務をするには、どんなプロンプト(命令文)を書けばいいですか?」
これらをChatGPTやGeminiなどの生成AIに直接聞いてしまえばいいのです。 人間が必死にユースケースをひねり出すよりも、AIに相談し、プロンプト作成まで任せてしまう。そうすれば、特別なスキルがなくても、実は誰でも簡単に生成AIを使い始めることができます。
4.本当の壁と、そこで求められるエンジニア力
ここまで「始めるハードルは高くない」とお伝えしてきましたが、実際に現場導入を進めると、一つだけ厄介な壁にぶつかります。 それは、「現場データの保管状態」です。現場には、生成AIがそのままでは理解しづらいデータが溢れています。
- Excel方眼紙(セルを結合してレイアウトされた、見た目重視の帳票)
- 複雑な業務フロー図が含まれたPowerPointのマニュアル
- 画像化された複雑な表が含まれるPDF
これらは人間には見やすくても、AIにとっては解読困難なデータです。 ここで初めて、工夫の世界、すなわち「エンジニア力」が必要になります。
- PythonやVBAを使って、Excel方眼紙を構造化データ(CSVやJSONなど)に変換する
- 業務フロー図の意味をマーメイド記法で補足する
- AI-OCRで文字情報を正確に抽出する
こうした「AIが理解できる形にデータを渡すための加工技術」こそが、実務適用における最大のキーポイントです。ここは一朝一夕では身につかない部分であり、私たちのようなプロフェッショナルが価値を発揮できる領域でもあります。
まとめ
生成AIの活用は、決して高い壁ではありません。 「全社データの整備」や「高度なAI知識」を待つ必要はなく、限定的な情報と、AIへの壁打ちから今すぐ始められます。
まずは思い切ってチャレンジしてみてください!
Advent Calendarはまだ始まったばかりです。明日以降の記事もぜひお楽しみに!