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selected.el で「選択して右クリック」的な概念を

Last updated at Posted at 2017-12-11

はじめに

この記事は,Emacs 使いに「右クリックしてメニューから選択」的な概念をもたらす selected.elhelm-selected.el/counsel-selected.el の紹介です.Macユーザを前提としていますが,他のプラットフォームでも通用する話です.

簡単な(?)設定をするだけで,作業効率が劇的に向上します.

Screen Shot 2017-12-11 at 1.18.11 PM.png

Note - ガチンコの右クリック実装には@tad3氏の「right-click-context」があります!オススメ!

選択して,実行

マウス操作の「右クリック」はとても便利で,メニューから選択領域に限定したアクションを選択するだけで,所定の処理を簡単かつ高速に行えます.Emacsにおいても,選択領域を引数とするコマンドを容易に発行できますが,各コマンドが独立していてグループ化されていません.「ユーザが領域選択した時だけ発行できるコマンド群」をグループ化し,かつ,簡単な操作でそれらを選ぶことができれば,選択領域に対する追加処理を最小の操作で実行できます.

わかりやすい例では「Emacsバッファ内の言葉をブラウザでググりたい」があります.通常のシーケンスですと,

  1. 領域指定: C-<space> + C-M-<right> or C-<space> + <right>連打 or C-M-<space>
  2. 領域複製: M-w
  3. ブラウザを開く(ランチャーから選ぶ,/Applications フォルダから選ぶ,M-<tab>でアクティブ化,等)
  4. フォームに単語・文章をペースト: M-v
  5. 検索実行: <ENT>

と5ステップです.こんな複雑な処理を日々,何度も繰り返すのは嫌ですね.

一方,selected.el(とhelm-selected.el)を使えば,もっと楽です.

  1. 領域指定: C-<space> + C-M-<right> or C-<space> + <right>|C-f連打 or C-M-<space>
  2. 検索実行: g(設定済みのシングルキー)

わずか2ステップです!

前出の処理の2-4が所定のコマンドで自動化されているので,ちょうど「右クリックして実行」の感覚です.「この英単語を辞書で調べたい!」というような,選択領域に対する同様の処理事例がたくさんあるはずです.

selected.el (とhelm, ivy/counsel拡張)の導入

インストール

selected.el は,MELPAからインストールできます.
Githubから取り寄せる場合は,https://github.com/Kungsgeten/selected.el から.

次に,helm-selected.elです.これは selected.el で設定したコマンド群を helm インターフェイスで絞り込む拡張で, Githubで公開しています(拙作).
https://github.com/takaxp/helm-selected

MELPA登録は申請中で,しばらく先になりそうです.また,記事に合わせて急いで作成したので,まだバグが残っているかもしれません.

(Updated: 2017-12-23) マージされました. Many thanks to purcell!!

(Updated: 2019-05-31) counsel-selected.el を公開しました.

設定

selected.el

まずselected.elの設定です.以下は一例で,選択領域の処理に紐付けたいコマンドをselected-keymapに追加していくだけです.また,特定のメジャーモードに限定したコマンドの設定も可能です.

(when (require 'selected nil t)

    ;; コメントアウト・アンコメントアウト
    (define-key selected-keymap (kbd ";") #'comment-dwim)

    ;; 選択領域の単語数をカウント,ミニバッファに表示   
    (define-key selected-keymap (kbd "=") #'count-words-region)

    ;; 選択した関数のヘルプを表示
    (define-key selected-keymap (kbd "f") #'describe-function)

    ;; 選択した変数のヘルプを表示
    (define-key selected-keymap (kbd "v") #'describe-variable)

    ;; 選択した単語・文をググる
    (define-key selected-keymap (kbd "g") #'my:google-this)

    ;; 選択した単語をOSに発声させる
    ;; 要osx-lib.el (https://github.com/raghavgautam/osx-lib/blob/master/osx-lib.el)
    (define-key selected-keymap (kbd "s") #'osx-lib-say-region)

    ;; 選択領域を評価して結果をミニバッファに表示(結構危険かも...)
    (define-key selected-keymap (kbd "e") #'my:eval-region)

    ;; 英単語を調べて結果を表示
    ;; 要osx-dictionary.el (https://github.com/xuchunyang/osx-dictionary.el)
    (define-key selected-keymap (kbd "w") #'osx-dictionary-search-pointer)

    ;; 選択した単語を一括変換する
    ;; 要replace-from-region.el (replace+.elでも良いらしい)
    (define-key selected-keymap (kbd "5") #'query-replace-from-region)

    ;; 実行中止(ただし,selecte.elでは selected-offの紐付けが推奨されている)
    (define-key selected-keymap (kbd "q") #'keyboard-quit)

    ;; メジャーモードがOrg Modeの時,選択領域をテーブルに変換する
    (setq selected-org-mode-map (make-sparse-keymap))
    (define-key selected-org-mode-map (kbd "t") #'org-table-convert-region)

    (selected-global-mode 1))

上記設定に出てくるプライベート関数は次のようなものです.

(defun my:eval-region ()
  (interactive)
  (when mark-active
    (eval-region (region-beginning) (region-end) t)))

;; 要google-this.el (https://github.com/Malabarba/emacs-google-this)
(with-eval-after-load "google-this"
    (defun my:google-this ()
      "検索確認をスキップして直接検索実行"
      (interactive)
      (google-this (current-word) t)))

helm-selected.el

ほぼ設定不要で,helm-selectedの発動コマンドを設定するだけです.ただし,次の章で説明しますが,IMEの切り替えをコマンドでできない環境では,ASCIIのシングルキーがIMEに取られてしまうので,その場合は <f5>S-<f5>などを指定しておくべきです.

(with-eval-after-load "selected"
  (when (require 'helm-selected nil t)
    (define-key selected-keymap (kbd "h") 'helm-selected)))

領域選択後にh押下すると,helmインターフェイスが出てきますので,希望のコマンドを選んで<ENT>すればOKです.

selected.elにたくさんのコマンドを紐付けると,どのキーに何を割り振ったのか忘れてしまいがちです.そんな時にhelm-selectedが役に立ちます.

Screen Shot 2017-12-11 at 3.47.56 PM.png

counsel-selected.el

Ivy/counsel用のインターフェイスを準備しました.helm-selected.el と同じように使えます.

Screen Shot 2019-05-31 at 16.08.06.png

IMEユーザの一手間

selected.el の最大の欠点は,IMEとの相性が悪いことです.つまり,IMEがオンの時,選択領域に対するコマンドを選択すると,押下キーがバッファにそのまま入力されてしまいます.

これを避ける方法は二つあります(あるいは,毎回IMEを手動で切り替えるか...Orz).

一つは,helm-selectedの発動をASCII以外のキー(S-<f5>など)に割り当てて,各コマンドはhelmインターフェイスから選択することです.コマンド実行までのステップが一つ増えますが,右クリック相当の処理1回分と考えれば許容範囲です.

もう一つの方法は,IMEパッチを適用して IMEのオン・オフを制御可能にする方法です.そうすることで,領域を選択し始める時にIMEをオフにして,コマンド発行後にIMEを元に戻すことができます.同制御は,マークのhookを使って自動化できます.正しく動作すれば,任意のコマンドにシングルキーを割り当てることができ,IMEユーザも selected.elの本来の性能を引き出せます.

(when (and (fboundp 'mac-get-current-input-source)
           (fboundp 'mac-toggle-input-method))

  ;; IME ON/OFF ステータスフラグ
  (defvar my:ime-flag nil)
  ;; 判定
  (defun my:ime-active-p ()
    (not (string-match "\\.Roman$" (mac-get-current-input-source))))
  ;; IME ON
  (defun my:ime-on ()
    (interactive)
    (mac-toggle-input-method t))
  ;; IME OFF
  (defun my:ime-off ()
    (interactive)
    (mac-toggle-input-method nil))

  ;; 領域選択開始に合わせて IMEを OFF
  (add-hook 'activate-mark-hook
            #'(lambda ()
                (when (setq my:ime-flag (my:ime-active-p))
                  (my:ime-off))))
  ;; 選択解除で IME ONを復帰
  (add-hook 'deactivate-mark-hook
            #'(lambda ()
                (when my:ime-flag
                  (my:ime-on)))))

IMEパッチの適用については,emacs-25.3 をインラインパッチをあてて使う(OSX)をご参照ください.

おわりに

本記事では,selected.elhelm-selected.elを紹介しました.選択した領域に対する処理は,今回紹介した事例以外にもたくさん存在すると思います.「右クリックして実行」に相当する任意の関数を好みに合わせて設定してみましょう.作業効率が向上すること間違い無しです.

紐付けるべきオススメのコマンドがありましたら,コメント欄へお願いします m(_''_)m

また,hydra使いさんからのツッコミもお待ちしております.


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