※最初に少しだけ
この記事で出てくる“AI営業”という言葉は、
「提案書づくりにAIを積極利用している営業の方」 を示す便宜的な呼び名です。
深い意味はなく、読みやすさのためのタグのようなものです。
■ 1. AIが“自分の理解をほんの少し越えた提案”を生成してしまう問題
AIに技術提案を作らせると、とにかく“それっぽい資料”が一瞬で出てきます。
- 図は綺麗
- 文言は丁寧
- 技術用語も正確
- 課題整理も無駄がない
しかし、営業本人の理解度を微妙に超えたレイヤーで文章が出てくることがあり、
技術者の視点で読むと“ほんの小さな違和感”が生まれます。
- 運用前提が暗黙的
- 実装段階の落とし穴に触れていない
- 技術選定理由が抽象的
- スケール時の条件が曖昧
- 「方向性は合ってるけど、このままだと厳しいかも?」
AI営業は別に嘘をつこうとしているわけではありません。
AIが滑らかに、整った文章を出してしまうがゆえに発生するギャップなのです。
■ 2. その提案の“違和感”を一切見逃さない「AI提案チェック警察」の誕生
しかしここで、お客さん側もAIを使い始めます。
すると AI提案チェック警察 のような存在が誕生し、こんなふうに切り込んできます。
- 「ここの依存関係、説明足りなくないですか?」
- 「この用語、一般的な技術文脈と少しズレてますね」
- 「この構成だと運用リスクありますよ」
- 「課題との対応が浅いです」
- 「代替案比較がないのは不自然ですね」
圧倒的な赤ペンっぷり。しかも秒速。
AI営業は静かに悟ります。
「……“雰囲気の提案”では生き残れない世界になった……」
■ 3. 気づいたAI営業、「よし、徹底的に迷彩しよう」と腹黒モードに入る(※悪人ではない)
この瞬間 AI営業の心の中でスイッチが入ります。
「……くそ、全部見破られる。
ならばこちらも更にAIで迷彩してやる……!」
動機は不純だが、必死の現れでもある。
そしてAI営業はきっかけとしては"迷彩のため"に AIにさらに頼って頼って頼りまくります。
✔ AIにお客さんに役を演じてもらう
この提案書について、技術者視点で突っ込まれそうな点を全部教えて。改善案も添えて。
AI営業:
「これでAI警察は騙せる……!」
(※普通に提案品質が上がっているだけ)
✔ 曖昧表現は全削除
この構成の前提条件と曖昧な表現をすべてクリアにしてください。
AI営業:
「曖昧さ=弱点。全部潰す。」
(※透明性が上がり、技術文書として正しくなる一方)
✔ リスクをごまかすために、逆に全部書き出す
この方式のリスクと、その対策をセットで提示してください。
AI営業:
「ほら、ちゃんと書いたし!完璧な迷彩!」
(※むしろ誠実で健全な提案に近づきはじめてる)
✔ 代替案比較で“もっともらしさ”を盛る
同じ課題に対する代替案を3つ提示し、比較表を作成してください。
AI営業:
「比較してるし!選定理由も書いたし!迷彩成功!」
(※恣意的な提案ではなく、すんごいフラットになってる)
✔ 想定問答をAIで特訓
顧客が質問しそうなポイントと、その回答例を作って。
AI営業:
「どこからでも撃ってこいよ……返り討ちだ……!」
(※結果として自分の言葉で話せるようになってる)
✔ “迷彩のために”プロトタイプまで作り始める
ここでAI営業は、各種提案の実現可能性の調査のために、AIのアドバイスをうけながら 実際に動かし始めてしまう。
- AWS/GCPで最小構成をデプロイ
- LLM APIを叩いてレイテンシ測定
- WebhookでSaaS連携を試す
- SDKを触って挙動を理解
- データパイプラインを動かしてみる
AI営業(完全に勘違い):
「これは迷彩……迷彩のためなんだ……!」
(※実際には提案の現実性が劇的に高まっている。)
✔ エンジニアとの関係が激変する
迷彩前:
「○○ってできますか?」(ふんわり)
迷彩後:
「この構成で状態同期する場合、実務だとどの方式が一般的ですか?」
エンジニア:
「お、答えがいのありそうな質問ですね……」
AI営業(また勘違い):
「迷彩成功……!」
(※成功しているのは、高度な技術への理解とエンジニアとの信頼関係の構築である。)
■ 4. 迷彩のつもりが、提案はどんどん本物に近づいていく
AI営業の動機は「AI警察にバレたくない」。
それなのに結果はどうか。
- 課題理解が深まり
- 技術選定理由も説明でき
- 実現可能性が向上し
- リスクと前提が整理され
- プロトタイプで動作も確認し
- 技術者の細かい目線もはいり
- 提案の筋がしっかり通るようになる
迷彩のつもりが、ただの“良い提案”が完成してしまう現象。
■ 5. 最終的な気づき:「って、あれ?これもう迷彩じゃなくない?」
AI営業は意気揚々と最終版を見返します。
「しめしめ、これでAIチェック警察も黙る……!」
しかし……ふと冷静に見る。
「あれなんかこれ普通にめっちゃいい提案になってない……?」
迷彩のための努力が、
そのまま 誠実で現実的で筋の通った提案 を作るプロセスになっていた。
そしてAI営業はこうつぶやく。
「……わたしにも、こんな提案書けたんだ…」
■ 6. 結論:AIは“ごまかしの道具”ではなく、“ごまかしを不可能にする道具”だった
AI → チェックAI → 迷彩AI → プロトタイプ → エンジニア相談
このループにより:
- 誤解が減り
- 技術的に無理のある部分が消え
- リスクが明確になり
- 実行環境と提案の距離が縮まり
- 営業の理解が底上げされ
- エンジニアとの協働も加速し
- 最終的に“本物の提案”へ収束する
AIは薄い提案をごまかすためのツールではなく、
薄さをごまかせない世界へ営業を連れていくツールだった。
迷彩のつもりが、まさかの超進化。
AI、やっぱり良いやつだった。
■ 実務に使えるプロンプト集
▼ お客さん(AI提案チェック警察)向け
提案書の技術者視点で気になる点を理由つきで教えてください。
この構成が実務的に成立するための前提条件と、説明不足の箇所を整理してください。
この方式で発生しやすいトラブルや運用上の注意点を挙げてください。
提案内容と課題の整合性を確認し、違和感があれば指摘してください。
類似ケースの一般的な構成案と比較し、差分を説明してください。
▼ AI営業(迷彩したい人)向け
この提案がAIでチェックされた場合、指摘されそうな点を一覧化し、改善案を提示してください。
構成上の前提条件や説明不足の箇所を洗い出してください。
リスクと対応策をセットで提示してください。
顧客がしそうな質問と回答例を作成してください。
この提案の実現可能性を第三者視点でレビューしてください。