LoginSignup
2
3

Pico Bot で温度計測

Last updated at Posted at 2024-04-18

1. はじめに

Pico Bot を開発中です。Pico Botは、PukiWikiのページに書かれたスクリプトを定期的に読み、そのスクリプトを実行し、実行結果をPukiWikiに書き戻す、Raspberry Pi Pico W (Pico W)で作られたBotです。今回、Pico Bot で気温を計測し、その値をPukiWikiページに書き込むIoTシステムを作成しました。

2. 概要

Raspberry Pi Pico Wに温度計測のためのセンサ、AE-BME280、をI2Cで接続し、Pico Botのプログラムに、BME280のデータを読み込むためのモジュールを組み込み、Pico Bot が動作するWi-Fi環境のSSIDとパスフレーズ、Pico Bot が読み書きするPukiWikiページのURLなどを設定して、Pico Wに書き込みます。
この状態で Pico Bot を起動することにより、Pico BotがPukiWiki の指定されたページに書かれたスクリプトに従い、温度計測を行い、このページに計測結果を書き込みます。計測結果をグラフ表示するための、JavaScript も作成しました。

3. 動作環境例

例として、以下のような環境で動作させることにします。WikiサーバとPico WはローカルネットワークのWiFiに接続します。Wiki サーバをインターネットの上に置いて、Pico Botのプログラムに書き込むIPアドレスまたはFQDN等をそれに従って設定し直しても動きます。

networking.png

4. エッジ(Pico Bot)の温度計測ハードウェア

秋月のボード、AE-BME280、のJ3を半田でブリッジ(ジャンプ?)し、I2Cの動作モードにします。

DSC_2047.JPG

AE-BME280とPico Wをブレッドボードとジャンプワイヤを使って以下のように接続します。

DSC_2046.JPG

回路(fritzing):
pico-bme280-fritzing.png

上の図を描くために作ったAE-BME280のfritzingの部品:
AE-BME280.fzpz

5. エッジ(Pico Bot)のソフトウェア

Pico Bot のプログラムに、I2CでBME280 を利用するためのモジュールを加えたソースプログラム(main.py)を用意しました。

以下の手順に従って、Pico Botを4.で作成したハードウェアのPico Wに書き込みます。

5.1 Pico Wの開発環境の準備

ここでは、パソコン(PC)に、Visual Studio Code (VSCode)をインストールし、VSCodeの拡張機能として、MicroPico を導入したものを利用することを想定しています。また、4.のハードウェアで利用するPico Wには、すでにMicroPythonを実行するためのファームウェアが書き込まれていることを想定しています。VSCode, MicroPico, ファームウェアの書き込みについては、
IoT演習第2回、マイクロコントローラ
等を参考にしてください。

5.2 ソースプログラムのコピー

MicroPico が利用できるVSCodeがインストールされたPCを用意し、VSCodeの上でこのソースプログラムをmain.pyと名前をつけて保存します。

5.3 ソースプログラムの修正

このソースプログラムの先頭近くにある以下の行は、3. の実行環境で動くように書いています。これを、実際に実行する環境に合わせて書き換えます。ここでinit_pageは、3. の図の Wiki Page URLです。init_pageは、3.の図のPageです。

init_url="http://192.168.8.237/pukiwiki/pico_wiki/"
init_page="bme280-01"
ssid="GL-SFT1200-8f4"
password="goodlife"

5.4 Pico Wの接続

USBケーブルでPC(VSCodeとその拡張機能としてMicroPico が利用できるもの)と、Pico Wを接続します。接続が成功したら、VSCodeの下の行に、接続されていなかった時の、Pico Disconnectedの表示が、Pico Connected に変わります。

micropico_install_13.png

5.5 Wiki ページの作成

順番が前後しますが、「6. Wikiページのスクリプト」に示す手順に従って、Pico Botが実行するスクリプトが書かれたWikiページを作成します。

5.6 テスト

5.3 が終わった時点で、編集したmain.py が選ばれている状態になっていると思います。この状態で、画面の下に表示されている、Run ボタンをクリックすると、main.py のPico Botのプログラムが実行されます。実行の経過がMicroPythonのREPのターミナルに表示されます。また、Wikiページに実行結果が書き込まれます。これらを見て、Pico Botの不具合があれば、それを修正します。なお、メモリー不足のエラーが発生した場合、一度、Pico Wを接続するUSBケーブルをPico Wから外し、もう一度接続するとメモリー不足のエラーが解消する場合があります。

pico_python_06.png

5.7 Pico Wへ upload

VSCode の上のメニューの[View]>[Command Palette]>を選び、そこで表示されるプロンプトで、MicroPico:Upload current file to Pico (選択肢が補完されて表示されるので、それを選択)を入力し、実行します。

5.8 起動時の自動実行の設定

VSCode の上のメニューの[View]>[Command Palette]>を選び、そこで表示されるプロンプトで、MicroPico:Run current file on Pico (選択肢が補完されて表示されるので、それを選択)を入力し、実行します。

5.9 Pico Bot の起動

Pico WのUSBケーブルを抜き差しすることで、書き込んだPico Botのプログラムの実行が行われますが、その前に、次の6. Wikiページのスクリプトを用意しておきます。

6. Wikiページのスクリプト

「5.3 ソースプログラムの修正」で行った、URLにあるWikiページに、Pico Botが読み書きするためのスクリプトなどを記述します。3. の環境で動作させる場合、次の図のように記述します。

wiki-01.png

Pico Botが読み込むスクリプトと実行結果等は、PukiWiki のページの、(最初の)書式なしテキスト(pre defined)の領域で、薄い青色の背景で表されています。ソースエディタで、行の左端に半角の空白を入れることでこの領域を記述します。

以下をコピペして書き換えても良いです。

 object_page http://192.168.8.237/pukiwiki/pico_wiki/?bme280-01 or   http://192.168.8.237/pukiwiki/pico_wiki/?bme280-01
 device yamaRasPiDp9_1 or yamaRasPiDp9_2 start after no write for 10 min.
 command: set read_interval=300000
 command: set exec_interval=0
 command: set report_length=20
 command: py test
 py: #
 py: from machine import Pin, I2C
 py: import time
 py: i2c= I2C(0, sda=Pin(0), scl=Pin(1), freq = 40000)
 py: bme=BME280(i2c=i2c)
 py: v=bme.values[0]
 py: line="device=temp, Date="+self.Pico_Time.get_now()+", v="+v
 py: self.write_line(line)
 py: self.send_result()
 command: end test
 command: run test
 result:
 current_device="yama_pico_0000_0000_0000_0001". Date=2024/04/03 06:35:50

上の記述の中で、

object_page <URI-1> or <URI-2>  

は、Pico Botが読み込むページ(このページ)のURI(URI-1)と、このページが障害発生などで使えない時の代替ページのURI(URI-2)を表しています。代替ページがない場合、同じURIを書きます。

device <device-1> or <device-2> start after no write for 10 min.

は、このページはの Pico Botが読み書きしますが、それが障害などで動かなくなった場合(結果を書かなくなった場合)、10分後に、のPico Botが読み書きを開始することを表します。しかしながら、現在、この機能は動いていません。

command: set read_interval=300000

は、Pico Botがこのページを読む間隔を5分(300000msec)にすることを表します。

command: set exec_interval=0

は、Pico Botがこのページを読んだ直後、一回、記述されたスクリプトを実行することを表します。0でない場合は、ページを読んだ後、ここに記述された間隔(単位はmsec)でスクリプトを繰り返し実行することを表します。

command: set report_length=20

は、resurt: の行より後に書かれた実行結果の行数の最大を20行にすることを表します。

command: py test

command: end test

は、
この間にある、py: で始まる行が MicroPythonのプログラムで、そのプログラムに、test という名前をつけていることを表しています。

command: run test 

は、test という名前がついたプログラムを実行することを表しています。

result:

は、この行の後ろの行から、結果が書き込まれることを表します。

current_device="<device>". Date=<date-time>

は、このページに最後に書き込んだPico Botのidがで、その時間がであることを表しています。

MicroPython のプログラムの部分について、

 py: from machine import Pin, I2C
 py: import time

は、Raspberry Pi Pico のMicroPythonの標準モジュール, machine のなかの、Pin クラスとI2Cクラスを利用することと、標準クラス time を利用することを表しています。

 py: i2c= I2C(0, sda=Pin(0), scl=Pin(1), freq = 40000)

は、変数i2cにI2Cクラスのインスタンスを生成し、代入することを表しています。ここで、コンストラクタI2Cの最初の引数 0 は、Pico の0番目のi2cインターフェースを利用することを表しています。
i2c通信のsda信号は0番ピンを利用し、i2c通信のscl信号は1番ピンを利用しています。freqはi2cインターフェースの最大周波数を表しています。

 py: bme=BME280(i2c=i2c)

は、温度・湿度・気圧センサ、BME280のインスタンスを生成し、前の行で作成したi2cをi2cインターフェースとして利用するよう初期化して、変数bmeに代入することを表しています。

 py: v=bme.values[0]

は、BME280で計測した温度(values[0])の値(文字列)を取り出して、変数vに代入しています。

 py: line="device=temp, Date="+self.Pico_Time.get_now()+", v="+v

は、変数 line に、実行結果を表す行、"device=temp, Date=, v=<温度>"を代入しています。

 py: self.write_line(line)

は、変数lineの値(実行結果を表す行)をWikiの実行結果の列を表すバッファに追加しています。

 py: self.send_result()

は、バッファをWikiページに書き込みます。

8. 実行結果の例

Wikiページの"result:"の行の後から実行結果が書き加えられます。6. の例では"set report length="の行で、最大行数が20となっているので、最大20行の結果が書き加えられます。20行を超え当た部分は前の方にある古いデータから削除されます。

 device=temp, Date=2024/04/03 05:00:43, v=21.2C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:05:43, v=21.3C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:10:43, v=21.2C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:15:43, v=21.09C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:20:44, v=20.98C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:25:43, v=21.08C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:30:43, v=21.1C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:35:43, v=21.12C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:40:43, v=21.05C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:45:43, v=21.07C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:50:43, v=21.04C
 device=temp, Date=2024/04/03 05:55:44, v=20.94C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:00:43, v=20.88C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:05:44, v=21.8C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:10:44, v=21.76C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:15:44, v=21.75C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:20:44, v=21.97C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:25:44, v=22.1C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:30:44, v=22.19C
 device=temp, Date=2024/04/03 06:35:44, v=22.26C

各行の実行結果は、Pythonのプログラムの以下の部分で書き加えられています。

 py: v=bme.values[0]
 py: line="device=temp, Date="+self.Pico_Time.get_now()+", v="+v
 py: self.write_line(line)
 py: self.send_result()

8. JavaScript でグラフ描画

Pico Botの実行結果である温度の変化をグラフで表示するためのJava Scriptを用意しています。6.のPukiWikiのページのスクリーンショットの、スクリプトの記述の前に書かれたURIのリンクが示すページ、http://192.168.8.237/pukiwiki/pico_wiki/sensors-graph-01.html に、以下のソースのhtmlページを置くと、このリンクをクリックすることで、以下のようなグラフが表示されます。

graph-01.png

ソース

9. 終わりに

Pico Botで温度を計測し、それをWikiページに書き込むことができたことについて紹介しました。現在、PukiWikiのページに記述するMicroPythonのプログラムが使用するモジュールは、あらかじめ、Pico Bot のソースプログラムに組み込んでいますが、Thony のMicroPython用に登録されたライブラリを検索し、マイコンボードのファイルシステムに組み込む機能のようなものが VSCodeのMicroPicoで使うことができれば、それを使いたいと思っています。

9. 謝辞

以下のページを含む様々なページを参考にさせていただきました。感謝します。

2
3
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
2
3