FDEがコンサル業界に変革をもたらすかもしれない理由
FDEという単語をあちこちで聞くようになりました。FDEが何かはこれまでにも投稿をしてきているのでここでは省きます。個人的には、日本での本当の意味でのFDEは難しいのではと思っていました。とくに一番の難関だと思っているのはFDEの肝である成果報酬です。日本ではSIやコンサルがなかなか成果報酬には踏み切っていません。その理由は以前のブログでも書きました。
ですが、やはり成果報酬型に変えていかないといけないのでは、というのはいろいろなところでくすぶっているようです。理由はやはりAIであり、AI駆動開発です。AIによってこれまでの人月での報酬制度というのが成り立たなくなる、AI駆動開発によってこれまでの生産性に基づく人月での見積りというのが崩壊すると予想されています。簡単にいえば、AIでこれまでよりもはるかに少ない人月で作れてしまうので、全然儲からなくなるという危機感です。またユーザ企業が内製化できるようになれば、そもそも外部に頼むことがなくなります。
そのような将来を考えると、成果報酬型というのが生き残る策として出てきます。
成果報酬をはばむもの
コンサルというのは基本的には何らかの成果・アウトプットを出すのが仕事なので、成果報酬でもよいはずです。ですが実際にはそうなっていません。背景として、特に日本においてはコンサルが大勢のスタッフを抱えたピラミッド構造になっていて、「人月」で稼働させることをやってきたからです。コンサル業界では、「セールス・プリセールス」ができる人と、「デリバリー」をやる人、というのが分かれています。人によっては両方やる人もいるのですが、主要な役割がどちらかというのは決まっていることがほとんどです。そしてセールスをやるのは、ある程度ランクが上の人で、デリバリーだとスタッフが入ります。
コンサル会社というのは昨今のコンサル人気もあって若手を多く雇っています。若手は必ずしもコンサルができるほどの業務経験や技術蓄積があるわけではないので、プロジェクトでタスクをこなしながらコンサルとしての作法を覚えていきます。
コンサルではセールスやプリセールスのほうが高評価になりがちです。デリバリーはプロジェクトにもよりますが、できて当たり前、問題を起こしたり炎上したらマイナス評価がつきます。
案件は、取った時点で人月での報酬が確定します。あとはちゃんと検収をあげてくれるように、デリバリーしてね、という世界です。当たり前ですが、ビジネスはお金を稼ぐ人がえらいです。なのでプリセールスではパートナーが出てきて素晴らしいプレゼンをします。ですがプロジェクトが始まるとパートナーはもう出てこず、デリバリーのための人たちが出てきて、顧客からすると不満を感じるという話は耳にします。
これが成果報酬になったらどうなるでしょう?まず、これまでのプリセールス重視から、デリバリー重視へ変化することが求められます。これまでのようにプリセールスが案件を取ってきても、報酬はまったく確定していません。報酬はデリバリーチームが実際に成果を出して初めて得られるのです。またその成果によって報酬が上下します。デリバリーはこれまでの「失敗しなければよい」ではなく「成果を出す」ことが求められます。これは大きな違いです。
ですが、このような変化に対応するのは、実際には簡単ではないと考えます。理由として大きく3つあります。
セールスの仕方が変わる
コンサルにしてもSIにしても、これまでの人月モデルは”アウトプット”を定義してその対価をもらいます。セールスの過程では課題感、やらなければいけないことをスコープとして定義し、それに対してこのような"アウトプット"を"いくらで"出しますという提案をし、了承をもらえれば契約が成立します。形態によってはアウトプットの定義はあいまいで、"この人材を提供する"という実質的には人材派遣のモデルであることもあります(派遣とは指揮命令系統が違うのですが)。問題なのは、定義するのは”アウトプット”であり、”成果(アウトカム)”ではないということです。
この発想の転換ができるかはとても重要です。これまでのセールスのやり方、フレームワークといったものが通用しなくなる世界です。もちろん課題へのアプローチなどは共通しており変わらないと思われます。ですが実現へのアプローチをどう構成し、どう持っていけばよいのかが大きく変わると思います。
どうやって見積もるかがわからない
人月モデルでは見積りが一番大事なプロセスになるといっても過言ではありません。世の中には見積もるための技法がいろいろあります。どれを使うにしても、アウトプットを定め、何らかの手法でアウトプットを作るための工数を算出し、必要なスキルセットから単価が算出され、その掛け算で費用が出てくる、というのが基本的な考え方です。管理する側は、見積りの確からしさとリスクを管理します。見積もった費用が報酬として入ってくるので、その範囲でデリバリーができるかが事業としての見るポイントになるのです。
では成果報酬モデルの場合、どうやって見積もればよいでしょう?成果報酬の見積りというのは大きく2つの要素があります。1つ目は成果報酬の設計です。成果をどう測定し、どうやって報酬を計算するのかという設計です。もう1つは要員をどう充てるかという見積りです。これらについてのノウハウやフレームを持っている企業はなかなかないと思います。管理するほうも何を見たらよいかわかりません。人を投入しても最初は報酬が入ってこないので、成果がいつどれくらい出せるかという見通しが重要になるとは思います。いわゆる投資と捉えるのでしょうから、投資会社や商社的な考え方が必要になるのかなと思います。
デリバリーの意識改革が必要
従来のコンサルが成果報酬モデルにためらってしまうのは、
- これまでの人月モデルがデリバリーに対して「決められたスコープをその通りにやる」ことを求めていたからではないか?
- そのマインドで成果報酬の責任を負わされたらたまらない、というのが背景にあるのでは?
- さらにいえば、プリセールス重視でやってきたパートナー陣は、デリバリーで成果を出しに行くというマネジメントに根本的な不安があるのではないか?
ということです。すると、もしFDEが成果報酬モデルへの変革を強いるとしたら、コンサル業界にとってはこれまでのビジネスモデル、育成モデル、を根本からひっくり返すことになるのではないか、と思えます。
まとめ
いろいろ考えてくると、成果報酬は大きな変革です。実際になかなか成果報酬が広まる気配はまだ感じられません。ですがAIの進化はあまりにも早く、近いうちに成果報酬が普通になる時代が来るかもしれません。その時には従来のビジネスの仕方、セールス、管理、人材育成のやり方がすべて変わります。逆に変わらないと生き残れない時代がきます。それに向けてどう準備するか、組織としても、個人としても、考えていく必要があると思います。
