日本におけるFDEパターン
日本でもFDEがキーワードとして語られるようになってきています。FDEは以前のポストで述べたように、AIプロダクトをもっている企業が顧客の前線に張り付き、プロダクトをどう顧客に適用させるか、そのギャップを埋めてプロダクトに反映させるという役割です。ただし日本国内でみると、それとは違う文脈で語られているケースが少なくありません。
SES的な文脈でのFDE
顧客先に常駐するエンジニアというと、日本国内であれば一番多いのはSES(System Engineering Service)です。SESとは簡単にいってしまうと、エンジニア派遣なのですが、準委任なのでクライアントからの直接指示ではなくあらかじめ定められた範囲のタスクを常駐してこなすのが仕事です。SES的な文脈でのFDEというのは、SESがAI知識をもち、AI活用のタスクもできるようにするというタイプのことです。ただSESは通常タスクのアウトソースとして動いているため、FDEの本来の目的である顧客課題の解決というのはやっていない領域です。個人の能力というより、SESがいきなり課題解決に動くという働き方をしていないので、FDEができるかは疑問です。「FDE的な」ことができる能力を持っている方はいると思いますが。
コンサルがFDEになるケース
コンサルは従来から顧客の課題にフォーカスして解決策を出すのが仕事です。よってコンサルはFDE的な仕事をこれまでもやっていると言えます。ただ常駐は必ずしもしておらず、ヒアリングやアンケートで課題を抽出するようなやり方が多いと思います。そこをより常駐寄りにし、簡単なPOCやモックであればAI駆動でさっと作ってしまうというのはありえる手です。ただし本家FDEとの違いとしては、コンサルは基本的にはプロダクトは持っていません。なので要件を反映させるプロダクトがないので、あくまでソリューションの組み合わせやカスタムで提供するという形になります。これは顧客から見るとそれほど変わらないのですが、プロバイダ側からすると、従来のカスタムSIと変わらないモデルです。
海外プロダクトのカスタムSIをFDEといってしまうケース
日本では海外のソフトウェアプロダクトを顧客仕様でカスタマイズすることが多くあり、それがFDEだと言ってしまえばいえる面があります。SAP、Salesforce、ServiceNow、Workday、などは日本国内で多くのSI企業が業務に合わせたカスタマイズをしている領域です。プロダクトに反映しないかというとリクエストをあげて反映してもらうこともあります。これからはOpenAIやAnthropicを使ってカスタムするというFDEが多くなると予想されています。
SaaSベンダがFDEを提供するケース
日本でもAIを活用したSaaSベンダがいますので、そこがFDEを提供するケースはありえます。実際に本場のFDEのようなサービスを提供するベンダも出てくると思います。SaaSというのは人事だったり会計だったり特定業務に特化していることが多いので、そこからどれだけ企業価値を高める課題につなげられるかがポイントになるでしょう。
考察:FDEが日本で機能するためには
FDEの人材モデル的な側面であれば、どのようなパターンであるにしてもFDEという職種が普及し、顧客から受け入れられることが重要です。顧客にとってみれば、優秀な人材が常駐して、AIを活用して課題を解決してくれればハッピーであると言えますし、十分に受け入れられると考えられます。
ただそれだけだと、提供側がビジネスとして成立するのかが気になります。高い貴重な人材を顧客に派遣しているだけであれば、そのビジネスは持続性がありません。問題は、FDEを提供する側がどうビジネスモデルを組み立てるかです。SESやカスタムSIの看板を付け替えるだけでよいのか?という話です。
そこでいくつか提供側も含めて機能しそうなパターンを考えてみます。
日本で機能しそうなFDEの現実解
コンサル+ちょっとした実装
コンサルがより現場に入り課題を把握。それを簡単なプラットフォームやAI駆動開発で実装して見せていくというパターンです。プロダクトというよりはアセットやソリューションとして一定程度整理したものをもっていき、カスタマイズで対応する、というあたりがよくあるイメージです。これまでと同じく比較的に高単価なコンサルが人月で稼働し、人月で報酬をもらうというビジネスモデルです。
コンサルがベースなのでプロダクトは持たないか、もしくはなにがしかパートナーシップを結んで国内外のプロダクトを持っていくケースはあるでしょう。
組織変革コンサル系FDE
先ほどのが現場に入るパターンだったのに対して、より経営側に入っていくパターンです。AIを組織として活用していくためには、組織自体が変わっていかないといけません。そうしないとAIを活用しても、単に業務が少し楽になっただけになってしまいます。そこを組織変革として伴走していくよというコンサルがよくやっていたパターンをAIに適用するというものです。これは上流系のコンサルがまさにいま目指している方向性だと思います。通常であれば人月モデルですが、もし野心的なところは成果報酬をやりだすのでは思っています。人月にしても成果報酬にしても、高単価な人材になるのが基本です。
AIモデルベンダーのパートナーFDE
海外でもこのパターンが出てきていますが、OpenAI/Anthropic/Googleなど強力なAIモデルを持っているベンダーとのアライアンスを結び、それらを活用したFDEをしかけていくやり方です。日本では多くのSI企業がハイパースケーラのパートナーとなってクラウドSIをしていますが、これのAI版です。なじみのあるモデルですし、FDEといってもカスタムSIなのが実態になるでしょう。
まとめ
日本の現状からどうFDEが現実的にありえるのか、提供側が持続的なビジネスたりえるのかを考えてみました。FDEがバズワードではなく本当の意味で普及していくのか、引き続き動向をウォッチしていきつつ、我々自身もどうビジネスをしていくかを考えなければと思います。