本の情報
タイトル
深く考える力
著者
田坂 広志
内容
「深く考える」とは、自分の中にいる「賢明なもう一人の自分」と対話すること。
もう一人の自分は鋭い直観力と膨大な記憶力を持っており、想像を超えた賢さを発揮する。
もう一人の自分と対話する手法を記載した第一部、著者がもう一人の自分と対話しながらつづったエッセイをまとめた第二部、著者がこれまでに出会った格言とその格言から始まった思考を書評としてまとめた第三部からなる。
印象に残った点
「賢明なもう一人の自分」の考え方
「賢明なもう一人の自分」は誰の中にも存在する。
だが、その存在に気が付き、対話する方法を知っているかによって、その能力を引き出せるかが変わってしまう。
「賢明なもう一人の自分」が発揮されないのには、2つの理由がある。
- 「賢明なもう一人の自分」の存在を信じていないこと
- 「賢明なもう一人の自分」の力を借りる技法を知らないこと
1.は、人が「自分は直観力がない」「記憶力が悪い」というような自己限定をしてしまうことに起因する。人は自己限定をしてしまうと、本来持っているはずの能力を発揮できなくなってしまう。
2.は、以下の5つの技法を身につけることで「賢明なもう一人の自分」と対話できるようになる。
- 自分の考えを文章に表す
→文章に考えを表して読み返すと、もう一人の自分から新たな視点が与えられる。 - 異質のアイデアを敢えて結びつける
→「対極の言葉を結びつける」といったことをすると、「止揚」の考え方に基づいてもう一人の自分を刺激することができる。 - 自分自身に問いを投げかける
→自分に問いかけると、すぐには答えが浮かばなくてもやがてもう一人の自分が答えを教えてくれる瞬間がある。 - 答えが出ないときは、問いを忘れる
→答えを知りたいという思いが強すぎると、もう一人の自分の力が働かなくなることがあるため。ノーベル賞を取ったアイデアも一度問題から離れた際に浮かんだというケースが多い。 - 自分自身を追い詰める
→直観をひらめかせるために、退路を断って自らを追い詰める技法がある。
所感
- 「賢明なもう一人の自分」の考え方
「対話相手を頭の中で用意して、自分の思考を検証する」という思考法は見たことがありましたが、この「賢明なもう一人の自分」はそれとは異なるもの という印象を受けました。
→自分の奥底にある記憶やアイデアを引き出す力を養うこと、さらに言えばそういった力が自分にあることを強く信じることが重要 といったことが述べられていると感じました。
一般的な思考 / 考えに関する本とは目指すところが違っている本 という印象でしたが、一方で目指すところにたどり着く手段は近いところもありました。
→「自分の考えを文章に表す」は言語化の本でも見かけた内容で、そういった本でも文章にすることで新たなアイデアや意見が浮かぶ といった記述がありました。また、「異質のアイデアを敢えて結びつける」もアナロジー思考と呼ばれるものに近いと感じました。
まとめ
著者独自の思考法について触れられている本でした。
その一方で、本の中で語られる例には自分が経験したことがあるものもあり、説得力を感じる内容でもありました。
すぐに「もう一人の自分」との対話を身につけるのは難しい印象ですが、その存在を意識しながら思考に取り組みたいと思います。