こんにちは。4月・5月にかけて外部企業の新卒エンジニア研修の講師を担当していました。
研修中、ある受講生の指導で少し対応に迷うことがありました。
その子は根が素直で真面目なのですが、講師から指摘を受けた際の反応が、どうしても「ふてくされている」ように見えたり、「言い訳」っぽく聞こえてしまったりする特性がありました。
このままだと現場配属された後に本人が損をしてしまいます。とはいえ、頭ごなしに注意しても根本的な解決にはなりません。
そこで、AIを使って「なぜそう見えてしまうのか」の心理的な仮説を洗い出し、それをベースに本人へヒアリングを行ったところ、スムーズに本音を引き出して行動改善につなげることができたので、そのプロセスを共有します。
1. AIを使って「客観的な仮説」を洗い出す
まずはAIに、「素直な受講生が、指摘に対して言い訳やふてくされた態度に見えてしまうときの心理背景には何があるか?」を相談しました。講師側の主観だけで決めつけず、対話のための選択肢を増やすことが目的です。
AIからは、以下のような「悪気のない心理」の仮説が返ってきました。
- プロセス説明の空回り: 「なぜそのミスが起きたか」の背景を正確に説明しようとした結果、聞き手には自己防衛(言い訳)に聞こえている可能性。
- フリーズ(防衛本能): 指摘された瞬間にテンパってしまい、表情が固まって不満げ(ふてくされている)に見えている可能性。
- 納得のための思考時間: 言われたことを頭の中で咀嚼しようとして沈黙している時間が、無愛想に見えている可能性。
これらの仮説を踏まえた上で、本人との面談に臨みました。
2. 仮説をベースにヒアリングを実施
面談では「なんでそんな態度をとるの?」と追及するのではなく、AIが出してくれた仮説をそのまま選択肢として提示してみました。
講師:
「〇〇さんが素直に聞いてくれているのは分かっているんだけど、指摘したときに少し言い訳っぽく聞こえたり、フリーズして不満そうに見えたりすることがあって勿体ないなと感じてる。
もしかして、『ミスした原因を正確に説明しなきゃ』って焦っちゃったりしてる? それとも、頭の中で整理しようとして固まっちゃう感じかな?」
すると、本人は納得した様子で、**「まさにそれです。言い訳をするつもりはなくて、どうしてそうなったかの経緯をちゃんと説明しなきゃと思って喋っていました。あと、テンパると顔が固まってしまいます」**と、自分の状態をスムーズに話してくれました。
AIが事前にくれた仮説があったからこそ、本人が「自分の状態はこれだ」と言語化しやすくなり、心理的ハードルが下がった状態で本音を打ち明けてくれたのだと思います。
3. 今後のアクションプラン
本人の本音が分かったため、以下の2点を通じた具体的な「コミュニケーションの型」を提案しました。
- 指摘されたら、背景を説明する前にまず「はい、分かりました」と一言だけ返す(一呼吸置くルール化)。
- 「態度が悪い」という人格の否定ではなく、「その返し方だとビジネスの場では損をしてしまう」という事実として伝える。
結果、本人は持ち前の素直さで受け入れてくれ、その後の研修では「はい、まずはやってみます!」と、非常にスムーズなコミュニケーションが取れるようになりました。
まとめ
今回の件で感じたのは、AIは指導の「答え」を直接出してくれる道具ではなく、人間同士のコミュニケーションの「補助線」として非常に有効だということです。
AIに客観的な仮説を出してもらうことで、講師側も感情的にならず、冷静に相手の視点に立ったヒアリングができました。
これから現場で新人のメンターやOJTを担当するエンジニアの方も多いと思います。もし「後輩のあの態度、どういうつもりなんだろう」と対応に悩む場面があれば、ぜひAIに「どんな心理の可能性がある?」と聞いてみてください。対話を進める上での良いヒントになるはずです。