生成AIが広く使われるようになり、私たちとAIとの関係は大きく変わり始めています。
これまでは、AIに質問をして答えをもらったり、文章やプログラムを作ってもらったりする使い方が中心でした。
しかし今後は、AIは単に答えを返す道具ではなく、実際の作業を進める存在になっていくと考えられます。
AIの使い方は「質問」から「仕事の依頼」へ
現在よくあるAIの使い方は、次のようなものです。
- 文章を要約してもらう
- メールの下書きを作ってもらう
- プログラムを書いてもらう
- エラーの原因を説明してもらう
- アイデアを出してもらう
これらは、基本的には一つの質問に対して一つの答えを返してもらう使い方です。
今後は、もっと大きな単位で仕事を依頼する使い方が増えていくでしょう。
例えば、次のような依頼です。
- 販売データを取得して在庫を確認する
- 複数のファイルを比較して更新用データを作る
- 必要な情報を調べて報告書にまとめる
- メールを確認して返信が必要なものを選ぶ
- 旅行の候補を調べて予定表を作る
人間が一つずつアプリを操作するのではなく、目的を伝えるとAIが複数の作業を順番に処理するようになります。
このようなAIは、一般的に「AIエージェント」と呼ばれています。
音声による操作が増えていく
これからは、キーボードだけでなく、音声でAIに指示する機会が増えると考えられます。
例えば、パソコンやスマートフォンに向かって、次のように話します。
昨日の売上データを確認して、在庫切れの商品だけ表示して
このプログラムのエラーを見ながら、修正方法を説明して
来月の旅行について、前回の続きから考えて
AIが画面、ファイル、カメラ、音声などを同時に扱えるようになれば、人間は細かな操作を覚えなくても、会話によってコンピューターを動かせるようになります。
ただし、音声だけですべてを操作するわけではありません。
ファイル名、金額、プログラム、表計算など、正確さが必要な場面では文字や画面も重要です。
今後は、音声、文字、画像、画面操作を組み合わせた使い方が一般的になるでしょう。
アプリを自分で操作する機会が減る
現在、業務でデータを処理する場合、人間が次のような操作を行っています。
- ブラウザーを開く
- サービスにログインする
- ファイルをダウンロードする
- プログラムを実行する
- 結果を確認する
- 加工したファイルをアップロードする
今後は、これらの操作をAIが代行するようになります。
人間は、
今日のデータ更新を実行して、異常がある部分だけ報告して
と指示するだけになります。
そのため、特定のソフトの操作方法をすべて覚えることよりも、仕事の目的やルールを説明できることのほうが重要になります。
プログラミングは「書く仕事」から「設計する仕事」へ
AIによってプログラマーが完全に不要になるとは考えにくいですが、仕事内容は変化していくでしょう。
これまでは、人間がプログラムを一行ずつ書くことが一般的でした。
今後は、AIに対して次のように仕様を伝える形が増えます。
CSVファイルを読み込み、商品コードで照合する。
価格に差があれば更新用ファイルを作成する。
途中で停止した場合は未処理のデータを残す。
AIがコードを作り、人間が内容を確認してテストします。
そのため、これから重要になるのは、単にプログラムを暗記して書く能力だけではありません。
- 何を自動化するのか考える力
- 処理を小さく分ける力
- 入力と出力を決める力
- エラーが起きる条件を考える力
- AIが作ったコードを確認する力
- 結果が正しいか判断する力
AIにコードを書かせる場合でも、まったく読めない状態で使うのは危険です。
すべてを自分で書ける必要はなくても、処理内容を理解し、間違いに気づける程度の知識は必要になります。
仕事は職業単位ではなく作業単位で変わる
AIによって、ある職業が突然すべてなくなるというよりも、仕事に含まれる一部の作業から自動化されていく可能性が高いです。
例えば、インターネット販売に関する仕事では、次のような作業がAIに向いています。
AIに任せやすい作業
- 商品説明の下書き
- 商品カテゴリの候補作成
- 画像の補正
- 複数ファイルの比較
- 在庫差の検出
- 価格差の検出
- 定型メールの作成
- 売上データの要約
- 更新用データの作成
一方で、次のような作業には人間の判断が残ります。
人間が担当する作業
- 仕入れる商品の最終判断
- 取引先との交渉
- 利益とリスクの判断
- クレームへの対応
- 例外的な問題への対応
- AIの処理結果の確認
- 最終的な責任を持つこと
AIが仕事をすべて奪うというより、人間とAIの担当範囲が変化していくと考えたほうがよいでしょう。
「AIを使える人」の意味が変わる
現在は、AIに上手な質問を書ける人が注目されています。
しかし将来的には、質問文の書き方だけでは大きな差にならなくなる可能性があります。
AIを使うこと自体が、パソコンやインターネットを使うことと同じように、一般的な能力になるからです。
今後、価値が高くなるのは次のような人です。
- AIに仕事の目的を説明できる
- 必要なデータを用意できる
- 作業ルールを決められる
- AIに任せる範囲を決められる
- 結果を検証できる
- 問題が起きたときに判断できる
AIを単なる検索道具として使うのではなく、作業をする部下やチームのように管理する能力が重要になります。
人間がAIを使うだけではない
AIが便利になる一方で、注意しなければならないこともあります。
AIは利用者の好み、行動履歴、購入傾向、仕事の進め方などを学習していきます。
その結果、一人ひとりに合った提案ができるようになります。
しかし、企業がAIを使って人間の行動を誘導する可能性もあります。
例えば、次のようなことです。
- 見せる情報を選ぶ
- 特定の商品を勧める
- 購入を促す
- 長時間サービスを利用させる
- 特定の考え方へ誘導する
つまり、人間がAIを使うだけではなく、AIを運営する企業が、AIを通して人間に働きかける場面も増えていきます。
そのため、AIの回答をすべて正しいと思わず、次の点を確認する必要があります。
- その情報は誰が提供しているのか
- 広告や販売目的が含まれていないか
- 個人情報がどのように使われるのか
- AIが何を根拠に提案しているのか
- 別の選択肢が隠されていないか
会社はAIを導入するだけでは効率化できない
会社が社員にAIを使わせるだけでは、十分な効果が出ない場合があります。
AIを導入しても、古い仕事の手順をそのまま残していれば、作業が複雑になるだけかもしれません。
AIを有効に使うためには、次のような準備が必要です。
- どの作業をAIに任せるか決める
- 業務データを整理する
- 作業手順を見直す
- 誤処理が起きた場合の対応を決める
- 人間による確認工程を残す
- AIが行った処理を記録する
- 情報漏えいを防ぐルールを作る
AIの導入とは、単に新しいソフトを入れることではありません。
仕事の流れそのものを作り直すことが重要です。
今後数年間で起きそうな変化
今後1年から2年
AIがメール、文書、ブラウザー、表計算、プログラムなどをまとめて扱えるようになります。
ただし、重要な操作の前には人間の確認を求める、半自動の仕組みが中心になるでしょう。
今後3年から5年
毎日繰り返している定型業務の多くを、AIエージェントが担当するようになると考えられます。
人間は、作業の実行者ではなく、指示、承認、監督、例外処理を担当するようになります。
さらに先の未来
推測ですが、一人ひとりが専属のAIを持つようになる可能性があります。
そのAIは、過去の会話や仕事の進め方を覚え、仕事、学習、買い物、旅行、生活管理などを横断して支援します。
ただし、長期間の記憶を持つAIには、個人情報の管理や誤判断時の責任など、大きな課題があります。
これから身につけるべきこと
これからの時代に備えるために、すべてのプログラミング言語やAI技術を深く学ぶ必要はありません。
まずは、自分の仕事や生活の中で、次のことを整理するのが大切です。
- 繰り返している作業は何か
- 判断が必要な部分はどこか
- AIに任せられる部分はどこか
- 最後に人間が確認すべき部分はどこか
- 間違った場合にどんな問題が起きるか
プログラミングを学ぶ場合も、すべてのコードを暗記するより、AIが作った処理を理解して確認できる状態を目指すほうが実用的です。
特に、ファイルの加工、データ比較、定型処理、情報収集などは、AIとプログラムを組み合わせることで大きく効率化できます。
まとめ
これからAIは、質問に答えるだけの道具から、実際に作業を進める存在へ変化していきます。
人間の役割も、細かな操作を行うことから、目的を決め、AIに指示し、結果を確認することへ移っていくでしょう。
重要なのは、AIより速く作業することでも、AIより多くの知識を覚えることでもありません。
AIに何を任せるのか。
どこから人間が判断するのか。
結果が正しいかをどのように確認するのか。
これらを考えられる人が、今後のAI時代に強くなるのだと思います。