ごあいさつ
株式会社Kaienでシステムに所属しております田島と申します。
弊社は、障害がある方などを対象に、就労移行支援や自立訓練を展開している事業会社です。
私は以前人事担当として主にエンジニアの採用や育成に携わっておりました関係で、今日は技術の話というより “働き方の設計” について、日々の取り組みを記していきたいと思います。
何らかのご参考になれば幸いです。
負債?
エンジニアの世界には「技術的負債」という言葉があります。
まずは動くのを先行し短期的メリットをとろう。後から利息が増えるのはわかってますよ、でもわかっているけど、あれ、動いているけどなんか気付いたら作ってくれた人いないし、触るのが怖い……みたいなやつです。
とはいえ生成AIでリバースエンジニアリングやリファクタリングが大分やりやすくなったので、意図的に借りるのであればそれは戦略にもなります。
「ご利用は計画的」にですね。
自分の中ではそれと同じくらい厄介なものとして 、タスクが脳内に積もって気付けば処理しきれなくなっている状態、例えるならば「積み残し負債」 という言葉がしっくりきています。
矢継ぎ早に届く毎日の作業依頼、仕様変更、不具合対応、間接業務のルーティンワーク。
これらの『忘れないように覚えておいてあとでやろう』が積み重なり・膨れ・残され、「あれどうなりましたー?」からの焦りで、常に(タスク忘れないように、漏らさないように、覚えていなきゃ)に囚わている状態。
コードやアーキテクチャより先に、人の気持ちが削れていくと、結局ぜんぶが遅くなる。
しかも遅くなり方が全然「見えない」ので、気づいた頃には取り返しがつかない負のスパイラル、『積み残し負債』です。
積み残し負債って、なにが「負債」なのか
自分が考える積み残し負債の状態は、たとえばこういう状態です。
- 割り込みが多くて、いつも頭がスイッチングしっぱなし
- 「これ誰に聞けばいいんだっけ?」が毎回発生する
- 仕様が曖昧なまま進み、後から“気持ちの揉め事”に発展する
- 優先度が自分の中で不明で、不安ランプが常時点灯している
これ、コードで言えば「テストがない」「コードがスパゲッティ」「責務曖昧」みたいなものと同じで、日々ちょっとずつ返済しておかないと気付いた頃にはあっという間に”負債”となってしまいます。
「積み残し負債」は“真面目さ”だけでは減らない
そうなんです、根性や気合いで何とかしようとすると、むしろ増えていってしまいます。それに気付くのが後になるのでどうしても”負債”になりがち。
- 頑張って抱え込む
- 休まずに走る
- 「とりあえずなんとかします」
この3つは、短期的には進んでいるように見えて、長期的には確実に詰まります。
もちろん、チーム全体でのキャパシティ管理は大前提ですが、その中で自分を守るための防御策(セルフガード)として、個人の根性や気合いではなく、仕組みで返済する ほうがいいと思っています。それは個人単体でも、チーム全体でも。
そこで今日は私が「個人単体」での対処として行っている原則を紹介します。
毎日仕事終わりには、仕事のタスクは脳に残さない。その名も”頭からっぽ作戦”です。(ひねりがない作戦名)
返済のためにやっている「小さな設計」
1) “見えないタスク”は極力ゼロに近づける
心理的負債の大半は、「見えてないものがある」不安から来ます。
なので、完璧じゃなくていいからまず見えるようにします。GTDの原則ですね。
- 数分で終わる作業なら即やる
- それ以上かかるならタスク化する
- 期限が曖昧なら「仮の期限」を置く
- 「ASAP」「重要」「委譲検討」等、重要度を分ける
タスク化は管理のためというより、不安の外部化です。脳のメインメモリを1MBでも空けるために、外部ストレージ(ツール)へ書き出します。
2) 終業時には頭をからっぽにする
せっかく1)で頭から抜き出したのですがから、今度はそれを整理します。
自分は毎日終業前15分を目安に、下記をやるようにしています。
- 今日やった作業の進捗を簡単に記録する
- 明日やることを「期限」と「重要度」からピックアップする
- このタイミングで「気になること」があれば、本当にこのままタスク化するか捨てるかを決める
こうしておくと、翌朝出社した時には 「今日何をやるか」が明確になっている 状態ができあがります。
そして翌日の始業時に、改めて今日のタスクを精査します。
- 優先度は正しいか
- 粒度は適切か(一つのタスクが肥大していないか)
- 前提や制約が足りないタスクはないか
「昨日どこまでやったっけ?」「今日何やるんだっけ?」がゼロになるので、朝の立ち上がりが驚くほど早くなります。
このルーティンで「今日は頭からっぽにしていても、明日の朝にはまたインストールできるから大丈夫」という環境を作ります。
3) 依頼や指示、フィードバックは、一旦自分の“文章”に起こす
3つ目は、依頼や指示を受けてそれらをタスク化する時に、自分の中の”気持ちの揉め事”を挟ませないように、その事実だけに注力するようにします。
特に口頭でのやりとりは、あとでどうしても「言った/言ってない」「解釈が違う」「とても強く言われた」などの不要な感情が動きがちになります。
自分はこのコストが本当に高いと思っていて、自分のタスクになる場合には、なるべく文章に起こしてタスク化します。
たとえば、下の5つ。
- 目的
- 前提
- 期待する挙動
- 例外
- 誰が最終判断するのか
これが揃うだけでも着手するのを躊躇するような積み残し負債に直結するような感情と切り離し、事実に注力でき、負債は目に見えて減っていきます。
自分の中での議論が“人格”や”感情”ではなく、“文章”という事実に向くからです。
負債が減ると、生産性ってあがっていきませんか?
不思議なんですが、頭の中から未来の覚えておかなくてもいいタスクのこと(負債)が減ると作業の生産性があがっていきます。
理由は単純で、負債がある状態だと「落ち着いて考える時間」が取れないからです。
頭の中にずっと別のタスクのことが残っていると、ふとしたときに(そういえばあのタスク…どうしたらいいんだっけ)と関係ないのに過ったりすることありますよね。
逆に、「頭をからっぽにしていても、仕組みでタスク忘れはないから安心だ」という環境をつくり、
落ち着いて目の前のタスクに着手できる状態があれば、自然と生産性も品質は上がっていくと実感しています。
さいごに
負債は、放置すると利息が高い。でも、返済できる単位は意外と小さいんですよね。
タスクを見える化する、それらを常に循環させる、感情のバイアスをとり除く。
当たり前のことのようですが、これだけでも十分効いてくると思います。
自分のプロジェクトチームでも、こういう“小さな設計”を積み上げながら、長く働ける環境をちゃんと作っていきたいと思います。