はじめに
データベーススペシャリスト試験(DB)は、2026 年度の実施をもって現行制度としては最後になります。2027 年度からは試験区分の体系そのものが再編されるためです。
そして 2026 年度の DB は、これまでと同じ試験ではありません。CBT 方式に移行し、実施時期も秋から後期へ動きました。世に出ている合格体験記や勉強法記事は、ほぼすべてが「10 月受験・紙の試験」を前提に書かれています。日程も、当日の進み方も、教材の前提も変わるので、そのまま真似すると計画がずれます。
この記事では、IPA の公式発表から確定している事実を整理して、2027 年 3 月末の受験日から逆算したスケジュールに落とします。数字はすべて IPA のページで確認したもので、出典は記事末尾にまとめました。
なお私が DB に合格したのは旧制度、つまり紙の試験です。CBT の受験体験は持っていないので、公表されている事実と、そこからの推測は段落を分けて書きます。
制度がどう変わっても出題範囲そのものは変わらないので、正規化・ER 図・インデックス・トランザクションといった中核テーマについては、図と実際の動きでデータベースを学べる学習サイトを無料・登録不要で公開しています。テーマ別のリンクは記事末尾にまとめました。
1. まず日程。山場は 2 月ではなく 3 月末
「秋期から 2 月頃に移動」という書き方をよく見かけますが、正確ではありません。DB の記述式である科目 B は、3 月後半です。
| 期間 | |
|---|---|
| 申込受付 | 2027 年 1 月 27 日(水)〜 2 月 27 日(土) |
| 科目 A-1・A-2 | 2027 年 2 月 20 日(土)〜 3 月 2 日(火) |
| 科目 B-1・B-2 | 2027 年 3 月 16 日(火)〜 3 月 28 日(日) |
| 合格発表 | 2027 年 6 月頃を予定 |
| 受験手数料 | 7,500 円 |
DB は後期のみの実施です。同じ後期にはプロジェクトマネージャ、エンベデッドシステムスペシャリスト、システム監査技術者が並びます。ネットワークスペシャリストやシステムアーキテクトは前期(2026 年 10〜11 月)なので、そちらとは併願できません。
計画に直接効くのは次の 3 点です。
- 科目 A と科目 B が別日程で、間が約 2 週間空きます。「試験日」が 1 日ではありません
- 申込時に科目 A 群と科目 B 群を同時に予約します。B だけ後から決めることはできません
- 申込締切(2 月 27 日)は、科目 A の受験期間の途中に来ます
もうひとつ、CBT 固有の制約があります。前期・後期それぞれで申込みは 1 回のみで、複数の試験区分には申し込めません。後期に DB を選んだら、同じ後期に応用情報を受けることはできない、ということです。
2. 名称が変わった(午前 I → 科目 A-1)
2026 年度から呼び方が変わりました。検索するときにも効いてくるので、対応を押さえておきます。
| 旧 | 新(2026 年度〜) |
|---|---|
| 午前 I | 科目 A-1 |
| 午前 II | 科目 A-2 |
| 午後 I | 科目 B-1 |
| 午後 II | 科目 B-2 |
名前は変わりましたが、中身は変わりません。IPA は「各試験区分で問う知識・技能の範囲そのものに変更はありません。また、出題形式(多肢選択式・記述式・論述式)、出題数及び試験時間も同様に変更はありません」と明記しています。
DB の構成は次のとおりです。
| 科目 | 時間 | 形式 | 出題数 / 解答数 |
|---|---|---|---|
| 科目 A-1 | 50 分 | 多肢選択式(四肢択一) | 30 / 30 |
| 科目 A-2 | 40 分 | 多肢選択式(四肢択一) | 25 / 25 |
| 科目 B-1 | 90 分 | 記述式 | 3 問中 2 問 |
| 科目 B-2 | 120 分 | 記述式 | 2 問中 1 問 |
記述式は維持されます。CBT 化で選択式になるのでは、という話を見かけますが、そうはなりません。
3. 変わる前提 その1 ── 記述式をキーボードで打つ
CBT なので、解答はパソコンに入力します。IPA は移行を発表したプレスリリースで、キーボード入力になることの利点として「文章の途中への語句の挿入や削除が容易となり、書き直し等の手間がペーパー方式に比べて大幅に軽減されます」と説明しています。
ここから先は推測です。入力欄の具体的な仕様(文字数制限の表示、図表を参照しながらの入力のしやすさ、コピー&ペーストの可否)は、この記事の執筆時点では公開されていません。実際の操作感は分かりません。
ただ、確実に言えることが 1 つあります。DB の科目 B は、表定義や関係スキーマを書かせる問題が多く出ます。紙であれば、問題冊子の図に線を引き、余白に矢印を書き込みながら考えられました。画面ではそれができません。手を動かす場所が、配布されるメモ用紙に移ります。
過去問演習を紙だけでやっていると、この差は当日まで気づけません。「図に書き込みながら考える」癖がある人ほど、メモ用紙に何をどう写すかを事前に決めておいたほうがよさそうです。
4. 変わる前提 その2 ── 科目 B 群は 3 時間 40 分の連続戦
IPA は「科目 B-1 試験終了後、休憩(10 分)をはさんで科目 B-2 試験を実施する予定です」としています。科目 A も同じ構成です。
DB の場合、こうなります。
| 構成 | 拘束時間 | |
|---|---|---|
| 科目 A 群 | A-1 50 分 → 休憩 10 分 → A-2 40 分 | 100 分 |
| 科目 B 群 | B-1 90 分 → 休憩 10 分 → B-2 120 分 | 220 分 |
科目 B 群は、10 分の休憩をはさんで記述式を 3 時間半以上こなすことになります。B-1 で 2 問を解ききった直後に、ほぼ間を置かず B-2 の長文に入ります。
過去問を解くときに、B-1 と B-2 を別々の日にやっている人は多いと思います。私もそうでした。少なくとも直前期には、この並びのまま通しでやる回を作っておかないと、時間配分の感覚が本番と合いません。
5. 変わる前提 その3 ── 試験問題が非公開になる
これが対策に一番影響します。IPA は CBT 移行にあたって「試験問題は非公開とします。また、第三者に開示(漏洩)することを禁じます」としています。あわせて、メモ用紙と筆記用具は会場で配布されたものを使い、自分で用意したものは持ち込めず、配布されたものは試験終了後に回収されます。
DB の対策は長く「過去問と解答例を回す」が王道でした。IPA が問題と解答例を公開していたからこそ成り立っていた方法です。この前提が変わります。
事実として言えるのはここまでです。以下は推測を含みます。
情報セキュリティマネジメント試験や基本情報技術者試験では、CBT 移行後も IPA が実際に出題した問題の一部を公開する運用が取られています。高度区分でも同じ扱いになる可能性はありますが、DB について公開されるかどうかは、現時点では分かりません。
いずれにせよ、受験生が確実に使える教材は、令和 7 年度までの紙の過去問です。数は十分にありますが、これから増える保証はありません。「直近の過去問から遡って解く」という組み立てをしている人は、使える範囲が有限であることを前提に配分を決めたほうが安全です。
6. 科目 A-1 免除(旧・午前 I 免除)はどうなるか
免除の条件自体は変わっていません。次のいずれかを満たせば申請できます。
- 応用情報技術者試験に合格
- 高度試験または情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
- 高度試験または情報処理安全確保支援士試験の科目 A-1(令和 7 年度試験までは午前 I)で基準点以上
有効期間について、IPA は「条件を満たしてから、2 年後の同時期試験まで、何度でも一部免除を申請することが可能です」としており、注釈で「条件を満たす成績をとってから 2 年間に実施する試験」と定義しています。
注意したいのは、CBT の前期・後期という新しい実施形態で、この「2 年後の同時期」を具体的にどう数えるのかが公式ページに書かれていないことです。年度の区切りと期の区切りが絡むため、期限が近い人は自己判断せず、申込前に IPA へ確認することをおすすめします。
新制度への持ち越しについては、IPA は「現行試験制度で免除要件を満たした場合、一定期間、プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)、情報処理安全確保支援士試験の一部科目を免除することを検討しています」と書いています。検討段階であり、確定した制度ではありません。持ち越せる前提で計画を立てるのは避けたほうがよいと思います。
7. 2027 年度以降はどうなるのか
現行制度は 2026 年度で終了し、2027 年度から次の 8 区分に再編される予定です。
- IT パスポート試験(内容変更)
- 情報セキュリティマネジメント試験
- 基本情報技術者試験
- データマネジメント試験(仮称・新設)
- プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称・新設)のマネジメント領域
- 同 データ・AI 領域
- 同 システム領域
- 情報処理安全確保支援士試験(一部変更)
開始時期は、2027 年度春頃に基礎レベル、2027 年度夏頃から秋頃に新設試験、とされています。
ここで注意点があります。IPA は現行の応用情報技術者試験と高度試験を「大括り化して再編する」と説明していますが、現行の DB が新体系のどの区分に対応するのか、という対応表は公表していません。「DB はデータ・AI 領域に統合される」といった解説を見かけますが、それは各媒体の解釈であって IPA の公式見解ではありません。
新試験のシラバス案とサンプル問題は「2026 年度夏頃を目途に一通り公表」とされており、順次公開が進んでいます。ただしこの記事の執筆時点では、シラバス案が出ているのはプロフェッショナルデジタルスキル試験のマネジメント領域とシステム領域、サンプル問題が出ているのはデータマネジメント試験のみです。データ・AI 領域はどちらも準備中です。
つまり、DB の受験を考えている人にとって一番知りたい部分が、まだ出ていません。「新制度で何が問われるか分からないうちに、現行制度の最後の回が来る」という状況です。この点も、2026 年度に受けきる判断材料になると思います。
8. 3 月末から逆算する
ここまでの事実を、スケジュールに落とします。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026 年 9〜11 月 | 科目 A-2 の知識固めと、科目 B の記述の型づくり |
| 2026 年 12 月〜2027 年 1 月 | 過去問演習(令和 7 年度まで)。B-1 と B-2 を通しでやる回を混ぜる |
| 2027 年 1 月 27 日 | 申込開始。会場と日時を早めに押さえる |
| 2027 年 2 月 20 日〜3 月 2 日 | 科目 A 受験 |
| 2027 年 3 月上旬 | 科目 B に専念できる約 2 週間 |
| 2027 年 3 月 16 日〜3 月 28 日 | 科目 B 受験 |
この並びで一番効くのは、科目 A を終えてから科目 B までの 2 週間です。紙の試験では 1 日で全科目を終える必要があり、午前対策と午後対策を並行して仕上げる必要がありました。CBT では、科目 A を先に片付けてから、記述式だけに 2 週間使えます。
日程が分かれたことは負担が増えたようにも見えますが、この点はむしろ有利に働きます。逆に言えば、科目 A を早めの日程で予約しておくほど、この 2 週間を長く取れます。CBT は会場ごとの予約枠から選ぶ形なので、申込開始直後に押さえるかどうかで、直前期の使い方が変わります。
9. DB で問われる中身は変わらない
制度の話が続きましたが、出題範囲は変更されていません。やることは従来どおりです。DB の中核はこのあたりです。
- 関数従属性と正規化。第 3 正規形までを、定義から説明できるところまで
- 概念データモデルと ER 図。多対多の解消、弱エンティティ、カーディナリティ
- SQL。特に結合、集約、副問合せ
- トランザクションと同時実行制御。分離レベルと、防げる異常の対応
- インデックスと物理設計。B-tree の構造、複合インデックスの列順
このうち、図と実際の動きで確認したほうが早いものについては、私が運営している学習サイトに解説を置いています。無料・登録不要です。
SQL
おわりに
まとめると、2026 年度の DB で押さえるべき変更点は次の 5 つです。
- 実施は後期。科目 B は 2027 年 3 月 16 日〜28 日で、山場は 3 月末
- 科目 A と科目 B は別日程。申込時に両方を同時予約する
- 記述式は維持。ただし解答はキーボード入力
- 科目 B 群は休憩 10 分をはさんで 3 時間 40 分の連続戦
- 試験問題は非公開。使える過去問は令和 7 年度までのもの
出題範囲は変わらないので、勉強の中身を作り直す必要はありません。変える必要があるのは、日程の組み方と、演習のやり方のほうです。
制度の切り替わりは一度きりです。既存の情報が一斉に古くなるタイミングでもあるので、日程と申込条件だけは、必ず IPA の公式ページで最新を確認してください。