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「未開の地」で気づいた、自分の中の思い込み

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プログラマーとして働く中で、最も大きな転機となった経験について書きたいと思います。それは、大学2年の夏に参加したベトナムでのインターンシップでした。

「解決策」を持って現地へ

当時の私には、日本での経験から培われた「確信」がありました。ベトナムの交通渋滞を解決するために、システム改善と効率的な交通網の整備を提案しようと。そう、私の中には既に「答え」があったのです。

今思えば、それは私の中の無意識の思い込み―アンコンシャスバイアスでした。「先進国である日本の方が、解決策を見出しやすい」という思い込み。「未開の地」という偏見。

現実は違った

現地調査を進める中で、私の「わかっているつもり」は徐々に崩れていきました。
地域住民との対話を重ねるうちに見えてきたのは、渋滞よりもはるかに切実な問題でした。排気ガスによる健康被害。それは、彼らの日常生活に直接的な影響を及ぼしていたのです。

同様の調査は日本国内でもできたはずです。でも、あえてベトナムという、経済発展の段階が異なる国に足を運んだからこそ、自分の思い込みから解放されることができました。

言葉の壁が教えてくれたこと

言語が通じにくい環境は、むしろ私にとって幸運でした。

言葉が通じないからこそ、より丁寧に、より深く相手の話に耳を傾けました。非言語コミュニケーションを駆使し、真摯に理解しようとする姿勢が、新しい発見につながっていったのです。

日本では当たり前すぎて気づけない社会課題や、その解決に向けたアプローチの多様性。それは、「未開の地」と思い込んでいた場所で、私の固定観念を覆してくれた貴重な学びとなりました。

「なりたい」の呪縛から解放されて

実は、当時の私には「問題解決のスペシャリストになりたい」という思いがありました。しかし、その「なりたい」という思いが、かえって本質的な課題を見えづらくしていたのかもしれません。

「なりたい」に囚われると、自分の中の「正解」を探してしまう。でも、本当に必要なのは「知りたい」「理解したい」という素直な気持ちでした。

今、モノづくりに活きていること

この経験は、現在の私のモノづくりの根幹となっています。

作る前に、まず知ること。
理解する前に、まず疑うこと。
そして何より、自分の中の無意識の思い込みに気づくこと。

それは時として遠回りに見えるかもしれません。でも、その過程こそが、本質的な価値を生み出す土台になるのだと信じています。

おわりに

私たちの中には、気づかないうちに多くのアンコンシャスバイアスが潜んでいます。それに気づき、克服していくことは簡単ではありません。

でも、「なりたい」という思いに囚われず、まずは目の前の「知りたい」「理解したい」という気持ちに素直に向き合うこと。それが、バイアスから解放される第一歩なのかもしれません。

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